夏海の物語
影山 みはつ
第1話 夏海
佳代子が「夏海、こっちへ来なさい」と声を掛けた。夏海は「うん。そっちへ行くね。待って居て」と佳代子に返事を返した。佳代子の街は田舎の吉田町で畑が広がって居て、そこでは佳代子の母親の愛莉が畑を耕し、家を守っていた。今年で八十代半ばになる愛莉の肩を佳代子が揉んで手首のマッサージをしている。愛莉は「あぁ、気持ち良いね。マッサージありがとう」と話をしていた。佳代子の母親の愛莉が畑をやって居て野菜を育てている。佳代子が「夏海。今胡瓜がなっているから胡瓜を何本か採って来てくれる?」と声を掛けて頼んだ。夏海は「はーい。胡瓜持って行くね」と話をして、夏海は佳代子に頼まれた胡瓜を家に持って来た。ドサッと篭に入れた胡瓜は、イキイキとして美味しそうな胡瓜だった。佳代子が「胡瓜、採って来てくれたの?ありがとう」と家に入って来て西瓜を袋に入れて家に持って来ていた。夏海が「ただいま」と帰って来ると、瑞穂が「お帰りなさい」と挨拶を返した。夏海は双子で瑞穂と生まれたので同年代だが、少し型破りの開けた性格だ。瑞穂は真面目で冷静に物事を判断しようとする性格だ。夏海は、家の事を守って、瑞穂は自分の我が道を行くタイプであった。佳代子が「夏海、何をしているの?畑の片付けとか、色々草むしりもあるから手伝ってくれない?人手が足りないのよ」と夏海を呼んで畑の手伝いを始めた。カボチャの根っこを引っ張って、草を刈ってカボチャを篭に入れた。その後、草むしりを初めて汗を掻いていた夏海に佳代子が「ほら、麦茶だよ。汗掻いたら水分補給をしないと倒れるからね」と声を掛けて麦茶のペットボトルを渡した。夏海が「ありがとう」と言って麦茶のペットボトルを手に持って飲んだ。夏海は「美味しい。暑い時はこれに限るね」と佳代子に笑顔を見せた。今は夏海や瑞穂も中学二年生の夏を迎えていた。クラスは違うけれど、お互いに興味のある事も異なっていたが夏海は運動が好きで卓球や走る事も大好きだった。畑の仕事も仕切り役で頑張って居た。夏海は、瑞穂が本を読んでいる横に来て「この本楽しいの?私は、あまり好きじゃないかな」と声を掛けると、瑞穂は「楽しいわよ。この恋愛小説なんかワクワクしてドキドキして登場人物がどんな心情で、どんな考え方をしていて話をしているのか手に取るように分かるわ」と夏海に本の事で情熱を持って話をしていた。夏海は「そういうものかぁ。私は小説を読まないし、読んでいる時間が有れば身体を動かして居たいわ」と瑞穂に声を掛けて、その場を離れた。夏海が二階から一階に降りて茶の間からリビングに立つ後姿を見ていた。夏海が佳代子に「お母さん、私やっぱり身体を動かすと気持ちが良いし、好きだなぁ。でも、
妹の瑞穂は本が好きで、本の事になるとすごく熱心になるし、私とはちょっと違うから、話が合わなくて楽しくないなぁ」と夏海は瑞穂と趣味が違う事を感じて嫌だった。夏海の話を聞いて佳代子が「そうね、そりゃ~、双子でも違う所が有るわ。それが人間性の違いって言う物じゃないかしら。違いが有るからこそ支えたり、支えられたり出来ると思うわよ」と話をしていた。夏海は「そうなの。同じだったら同じ話が出来たのになぁ」と少し夏海は自分との違いを瑞穂に感じて寂しかった。夏海が「今日の夕飯何?」と佳代子に夕飯の献立を聞いた。佳代子が「今、野菜室にほうれん草があるから、ほうれん草のバター和えにしましょう」と返事を返した。夏海が「御飯の手伝いをしようか?」とリビングに立って手伝っていると、瑞穂が一階に降りて来て茶の間で日記を書いていた。「瑞穂、御飯がもうすぐ出来るから日記帳片付けてね」と佳代子に言われたので、瑞穂が「はーい。今片付けるね」と言って、日記帳を片付けていた。夕飯を食べ終えて夏海は片付けをして、瑞穂は本を読んでいた。夏海が「本当に本が好きなのね。そんなに本が好きなら、本と結婚すればいいのに」と瑞穂に嫌味を言って来たので、瑞穂は「馬鹿言わないでよ。私が何時、本と結婚するって言ったのよ」と怒って、夏海に本で頭を叩いた。夏海は「何をするのよ。痛い」と頭を撫でながら瑞穂の身体を手で押した。佳代子が「もう、二人して何を張り合って居るの?喧嘩をしたって何の解決にもならないでしょう?」と瑞穂と夏海の仲裁に入った。瑞穂は「夏海なんか知らない。勝手にすればいいのよ」とその場の感情に流されて、佳代子と夏海の居る茶の間から二階へ行ってしまった。夏海は瑞穂と分かり合えないことに腹を立てていた。佳代子が「まぁまぁ、落ち着いて。夏海と瑞穂は同じ時を過ごし、同じ時間を生きて来た双子なのに喧嘩をしたって何も解決しない。でも喧嘩するほど仲が良いって昔から言うけど、瑞穂も瑞穂よね。お互いに違いを認め合って両方の立場になって考えなきゃ駄目よ。それが一番大事な事なのに瑞穂も夏海もいがみ合っていて悲しいなぁ」と言って悲しそうな顔をしていた。
夏海が「分かったよ。私も悪かったよ。瑞穂に謝る」と佳代子に返事を返した。
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