第8話 初詣

クリスマスが済んで…


楓は思い出した…



―――そういえば、前は初詣に行ったのが最初のデートだったんだ…


―――初めてのデートじゃなくなったけど、行くしかない!



「剣、冬休みどこか行こうよ」


「うーん、行きたいけど冬休みの前半はクラブがあるからなー」


「じゃさ、初詣はどう?」


「うん、その頃ならクラブも絶対休みだし…いいんじゃない?」


「どこに行こうか?」


「島にある神社に行こうよ」


「いいね。じゃ、そこにしよう」



元旦…剣と楓は、いつものパン屋さんで待ち合わせて…



「剣、おはよう。あっ明けましておめでとう。今年もよろしくお願いします」


「明けましておめでとう。こちらこそ、よろしく!」



電車に乗って…それから、船に乗り換えて…



―――昔って何を話したんだろう?


―――全然、覚えてないや。



船では、外に出て海の風を感じた…


寒かったけど…剣といれば寒さもぶっ飛ぶさ!



船を降りて…神社までは距離がある。



人も多い…


なんか恥ずかしいなぁ…



でも、楓はこうして、また剣と来れることが嬉しかった。


期限付きだけど、もう一度剣に会えて…


そして、こうして剣といられることが


すごく嬉しかった。



神社で参拝して…そのまま歩いて抜けて…


砂浜を歩いて…


砂浜をみながら座って話をした。



「楓、この後予定あるの?」


「親がさ、親戚の家に行くから、後で電車で来いっていうんだよね」


「そうか…でも昼ごはんくらい食べれる?」


「うん、大丈夫。夕方に親戚の家に着けばいいんじゃないかな」


「じゃ、何処かでご飯食べて帰ろう」


「うん。楽しみ」



確か…前の時は、昼ごはんも食べずに帰ったんだよ…



またも、違う展開…



楓と剣は、商店街で昼ご飯を食べようとしたけど…


どこも観光地価格で高い…


お小遣いが少ない私達にとっては辛い金額だった…



「なんか、高い所ばかりだね」


「そうだね…戻ってから何処かで食べようか」


「そうだね。そうしよう」



この時代は、コンビニも無いからな…


家の近くに戻っても正月で、どこも閉まってるし…


この時代には、モールもない…


生きづらい時代だね…



駅に戻ったら…


駅にある、売店のような店があった。


あーこの時代には、こういうのが、あったなぁ。



「楓、ここで何か買って食べるか」


「うん、そうしよう。」



二人は、おにぎりと飲み物を買った。



そして、それを持って駅のホームで食べた。



「なんか、ごめんな…こんなご飯で…」


「いいよ。剣と一緒ならどんなご飯も美味しいから!」


「いつか…お金を稼ぐようになったら、美味しいもの食べような」


「うん、楽しみにしてるね」



楓は、死ぬ前の人生で、飲みに行った時にいつも剣がお金を出してくれていたことを思いだした…



―――ちゃんと、奢ってもらったよ。





でも、今回は期限付きだから…


それは見れないんだって思って悲しくなった…


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