ホームステイにやってきた金髪碧眼美少女が双子だった
ゆめいげつ
プロローグ
『北米双子姉妹との日常』
冷たい水の中で溺れる夢を見ていた。
手を伸ばしても手を伸ばしても届かない。
どんなに頑張ってもがいても、何もできなかった無力感に襲われていた。
いつか見た、辛くて暗い水の底への景色の中を。
虚ろな瞳で覗きながら、ただただ呼吸が止まっていく夢を見ていて――。
◆
「……ナオツグ~」
「むぐぐぐぐぐぅっっ!?」
――目を覚ました俺は、大きな胸の中で溺れていたんだ。
とんでもなく柔らかくて温かい、母性の塊のような甘い匂いに顔全体が埋まった俺はそこから抜け出すべく必死にもがいていく。
「はぁ……はぁ……っ!」
そんな暴力的母性に満ち溢れた胸から抜け出した俺は、大きく深呼吸をする。
危うく死因が胸の中での窒息死になるところだった。
「ンムニャァ~……」
「フローラ、お前なぁ……」
そしてその俺を窒息させかけた巨乳の持ち主が、下着姿で気持ちよさそうに俺のベッドの上で眠っていた。
彼女の名前は、フローラ。
ふわふわロングな金色の髪が特徴的な、俺の家にホームステイしている美少女だ。
「……ネエサンばっかり、ずるい」
「うおっ!?」
無防備に眠る彼女に見惚れていると、今度は背中越しに柔らかい感触が広がる。
そこで俺は瞬時に、後ろから抱きつかれているのだと理解した。
「……アタシにも構ってよ」
「ふ、フレイア!?」
寂しそうな声が耳元で囁かれる。
この甘い声の持ち主は、フレイア。
今は抱きつかれているので見えないけど、サラサラロングな金色の髪が特徴的な、俺の家にホームステイしている美少女だ。
「ナオツグ~……ほわっつ?」
そんな俺の驚く声で目を覚ましたのか、目の前で眠っていたフローラがゆっくりと目を開いていく。
寝起きだからか舌足らずな英語で首を傾げなら、綺麗な碧眼の目蓋を手で擦っていた。
「……レ、レイア~!?」
そして、目の前で寝そべる俺に背後から抱きついていた 実の妹に気づいたフローラが、目を見開いて勢いよく上半身を起き上がらせる。
それによって大きな胸がこれでもかと揺れたのを、見逃さなかった。
ちなみにレイアとは、その呼び方から察する通り俺の後ろで抱きついているフレイアの愛称である。
「な、ナオツグから離れてよぉ~!」
「イヤよ。寝る前はネエサンがナオツグを独占してたんだから、今度はアタシの番」
「き、今日はワタシって言ったも~ん……!」
ゆっさゆっさ!
ベッドで寝ている俺の上で、フローラがフレイアを引きはがそうとして、それはもう凄い揺れている。
そんな子供のように駄々をこねる 実の姉に引っ張られたフレイアも、上半身だけを起こした。
「残念ね、ネエサン。もう日付は回ってるわ」
「か、カナダじゃまだ……今日だもん!」
……そして、性格と髪以外はほとんど瓜二つな 双子姉妹に挟まれた俺は、身動きが取れなかった。
当然だろう。下着姿の巨乳姉妹が向き合いながら頭上にいるんだぞ?
動ける筈がないだろうが。
「ナオツグも、オネエチャンの方が良いよね~……?」
涙目で俺を見つめてくるのが、フローラ・
双子姉妹の姉である。
「ナオツグは、ネエサンばかり甘やかすの……?」
ジト目で俺を見つめてくるのが、フレイア・
双子姉妹の妹である。
「いや、二人ともさ……」
そんな下着姿の二人に上から詰め寄られた俺は、力強くぎゅっと目を閉じて。
「ま、まずは服を着てくれーっ!!」
情けなく、そう叫ぶしかなかった。
◆
フローラとフレイア。
彼女たち双子姉妹が俺の家にホームステイにやって来て、約三ヶ月目の夜である。
まさかこんな事になるなんて誰が想像できただろうか。
それこそ、こんな美人双子姉妹と一緒のベッドで眠る甘い日々なんて――。
――当時の俺は、考えもしていなかったんだ。
そうそれは、高校一年生の春休み。三月末の、ある晴れた日まで遡っていく。
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