第29話 甘えん坊

「意地悪?そっか……枝務さんって意地悪な事を言われると、香りが強くなるんだね」


 そんな言葉を言われると、もう、顔が熱くて熱くて。

 太腿の動きも止まんなくて、モゾモゾ動く度にトプって蜜が溢れてクチュって音が聞こえるから。


 江洲の言葉攻めに、堪らなく興奮して……。

『枝務さんって実はマゾでしょ?』

 って、言われている言葉にキュンと下腹部の疼きが強くなって。


 潤ませた瞳で江洲の顔を見てしまう。


「あぁっ……だから…言わないでって……んぅっ…いじめないでよぉ……」


 甘い声でこんな言葉が勝手にでちゃう。

 乳首もジンジンとして、身体の全てが江洲の言葉が反応しちゃってる。


「枝務さんって、こういう時に……いじめるって言葉を使うんだね」


 ゾクっと背筋に電流が流れる感覚。

『枝務さんってマゾだよね』って、やっぱり言ってる感じが凄く興奮しちゃう。

 無意識に発したあたしの言葉は、『いぢめないで』だったのだと改めて言われて、それがあたし自身の被虐性を認識させてくる。


 そういうところを拾って言葉攻めしてくるあたりもすごく刺さるから。

 あたしの吐き出す息が浅くなって、熱をもって……。


「んんぅっ……真鈴をいぢめないでぇ……」


 甘ったるい言葉で、もっと苛めてって言ってるようなおねだりが止まらない。

 もう意識してしまうと、『いぢめないで』がクセになっちゃう。

 もっと、言いたいって思っちゃう。


 だって、誰も知らないあたしの奥底だから。

 こんな言葉を言えるのって江洲だけだし。

 言える人だから、言える時に言いたいって思う。


 江洲もきっと、分かってて言ってるんだと思うし。


「学校では言えないもんね。真鈴を苛めないでなんて」


 ほら、やっぱり。

 ここで『学校で』って言ってくる所も、意地悪なんだから。

 『真鈴を苛めないで』って言葉まで言われたら、ゾクゾクしっぱなしだよ。

 脳みそが蕩けちゃってるあたしは、コクンって頷いて。


「あんまり言い過ぎると、学校でもつい言っちゃわない?」


 こんなクセを付けた本人が言うなーって思うけど、被虐心を煽られて、開放させられた今のあたしは、実は悦んでる事も分かってる。


「ガッコでも江洲の前でしか言わないもん」


 あぁぁぁん、もう、言わさないでよぅ。

 言わされて嬉しいのは内緒になってないけど、それでも内緒なんだから。


 江洲の前では言っちゃうのは確実だろうけどさ。

 江洲がみんな居る所で、意地悪してくるのかな?

 実はそこに関しては、あたしは楽観的なんだよね。

 江洲の事を信頼してるっていうかさ。


 嬉しそうな顔をしている江洲は憎たらしいけど、それがまた刺さるから困る。


「んぅっ…ばかぁ……真鈴をいぢめてくれるの江洲だけじゃん……」


 自分から追加の学校で苛めてねのおねだりが、すっごい恥ずかしい。

 けど、言えて嬉しい。

 興奮しちゃう。


『いぢめてくれる』って何なの?って自分でも思うけど、いぢめて欲しいんだもん。

 期待してしまう。

『いぢめないで』って江洲に言いたいんだもん。

 甘えたいんだもん。


 そう……あたしは江州に思いっきり甘えてるんだぁって思う。

 イチャイチャしているカップルが『キスしてー』とか言ってるのと変わらない感覚だと思う。

 それが、あたしと江洲とでは『意地悪して』『苛めて』ってだけなんだよ。

 恥ずかしいけどさ――。

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