第20話 以心伝心

「女の子の香りも甘くて好き……だけど?」

 見計らったように言ってくる江洲の言葉攻めに、あたしは蕩けてダメになる。

 恥ずかしい。

 やっぱり聞こえてたんだ。

 あたしはもう普段通りに振る舞えない――。


 あたしから江洲の腕に腕を絡めて、潤んだ瞳で江洲の顔を見上げて、小さく首を振って、恥じらい全開モード。

 もっと苛めてモードが発動しちゃった。


「あぁっ、あんっ……言わないでぇ……」

 甘える声で、言い方で。

 そして、もっと意地悪に言ってってみたいな顔をして……。


 送られた動画をさらって観たけど、あたしってあんな顔をしてたんだって知ってるし、あんな声を出してたんだって云うのも、身体をくねらせてるのも知ってるから。


 その映像が蘇って、ついさっきまでの個室の感覚も蘇ってきて、今はどんな顔をしてるのか分かっちゃう。

 きっと他の人は知らない顔で、そんな顔をして江洲を見てるんだって思うと……。

 そして、発情している事も知られてるんだって事も……。


 ここが学校じゃなくて良かったと思う。

 江洲の顔を見ただけでコレだもん。

 二人だけの秘密を共有して、何だか共犯って感じ。

 学校とは立場が逆転するなんて、知ったらみんなビックリするよね。


「枝務さんの香りが強くなってるのは気のせい?」

 やぁぁんっ……言っちゃダメぇ。

 そんな意地悪な事を言われたら……真鈴、もう無理です。

 もうっ……江洲のいじわる、いじわるぅ……。

 はずかしくて蕩けちゃうよぉ。


「はぁっ、んぅっ……」

 もう、言葉が出なくなって、えっちぃ吐息だけが口から出て、コクンと小さく頷いて。

『違くない』って仕草で伝えちゃった。

 内腿を擦り合わせる度に、恥ずかしい音がスカートの中から聞こえてきて。

 どれくらい濡らしているのか、教えてるようで、それも恥ずかしくて気持ちが昂って。


「えと、あの……大丈夫?息が荒いけど……」

 口調は焦ってあたふたしているように聞こえるけど、あたしがエッチな声を出している事を、指摘してくるんだもん。

 江洲が学校にいるような感じで話すから余計に今の状況が恥ずかしくて。


『無理』って言うように、横に首を振って。

 もう、あたしは江州におねだりしちゃってる。

 苛めてって。

 それは、個室の時のようになのか、今の学校に居る感じで、なのか自分でも分からないけど、とにかくって。

 

 絡めている腕の力をギュウって入れて、胸元に顔を思いっきり埋めて、小さくお尻を突き出して、軽くお尻を振ってスカートを揺らしてみて。

 学校とは違うあたし。

 学校とは違う江洲。

 ギャップにキュンってなっちゃう。


 カバンで隠しながらスカートの中にそっと手を入れてくる江洲。

 その指がお尻をキュっとつねり上げて。

 ビクビクって身体を跳ねさせるあたし。


 恥ずかしいけど、これだけで何をして欲しいのか伝わって、ちゃんとしてくれて、しかも……


「真鈴のヘンタイ。マゾ」

 あっ、あぁぁんっ、もうっ。

 恥ずかしくて、意地悪で、欲していた言葉を囁いてくるんだもん。

 ちゃんと伝わってる事も、恥ずかしいけど嬉しくなっちゃう。


「ぅんっ……真鈴、ま、マゾなのぉ……んぅぅっ……へんたいなのぉ……あぁん」

 江洲の前だと、歯止めが効かないって分かっちゃった。

 また、認めて、言っちゃった。

 自分で言うのが興奮するの。


 でもね、それって江洲だからだよ。

 素のあたしを知ってて、あたしの好きな事も知ってて、以心伝心のように、心が繋がっている様な感じがするのは江州だけなんだよ――。

 特別なんだよ――。

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