第17話 秘密の約束

 ああっ……今日を経験しちゃうと、学校でメイド服を着たくないなぁって思う。

 江洲以外の前ではって意味だけど。


 でも、江洲が言ってるのは、そーゆー事じゃなくて、学校でメイド服になって、下着は着けないでって事だよね。

 あたしが思ってる事と江洲の思ってる事は、同じはずって思ってるんだ。


 プイっと顔をそむけて

「さ、サービスする気はないから……」


 素っ気なく言ったけど、伝わったかな?

 『江洲以外の人には』って意味。


「……うん。枝務さん可愛いからね。サービスしなくてもさ、普通にメイド服を着てるだけで注目の的だろうし」


 ううっ、あたしには分かる。分かってしまう。

『可愛い』とか普通に言わないような男子が、こうしてシレって言ってくる意味を。

 マゾの枝務真鈴はって意味を。

 サービスするのはあたしじゃなくて、江洲がサービスしてくれるって意味を。


 イヤでも行間から読み取れてしまう。

「い、言われなくても……分かってるよ。あたし可愛いって事くらい……」

「うん。そうだよね」

 江洲の太腿にあたしの雫がツーっと零れるのを感じる。

 どうしよう……。


「あっ……江洲。その動画さ、あたしに送ってよ」

 さりげなくアド交換の口実を。


 不思議と江洲がこれをネタに脅すとか、そんな事はしないって確信してるから。

 だから、いいよ。

 撮影禁止だけど内緒にしておいてあげるから。


 本アドを教えて、そっと立ち上がって、江洲の太腿のシミを見て。

 また腰に両手を当てて仁王立ちして。


「零さずに飲んでよっ。ぎょ、行儀悪いんだからっ」

 ドリンクを零した態にして、上から目線で言うけど、顔は真っ赤で目は潤んでいると分かる。

 だって、恥ずかしいもん。


「ご、ごめん。今度からちゃんと飲むから。だらしなくポタポタ落として、ホント行儀が悪いよね」


 ああぁんっ。

 だらしなくポタポタ零して、ごめんなさぁい。

 はしたなくてごめんなさい。

 真鈴はエッチなマゾメイドなんですぅ……。


「そ、そうだよっ……ホントに、もうっ……」

 クスと笑った江洲が穏やかな顔に戻って、椅子から立ち上がって

「じゃあ、また明日、学校で」


 分かってる。

 分かってるよ。

 クラスメイトの男子なんだから。


 特におかしな事は言ってないって。

 でも、でもっ……『明日も学校で』に続きがあるって分かるから。

 ドキドキしちゃう。


「うん。明日は学校で」

 あぁんっっ……、ばか、ばか。

 あたしは期待してるって感じじゃん。

 何よ……「明日は」って。


 部屋から出ていく江洲を見送って、一人でテーブルの上にある

 食べ物やドリンクをトレイに載せて、テーブルの上を綺麗にしてっと。


 この部屋から出る時も要注意なんだよねぇ。

 衣服を整えて、ドアミラーでチェック。

 顔はまだ赤いけど、大丈夫かな。


 ドアが開いてキッチンカウンターにトレイを素早く戻して、

「急用が出来たので、早退しまーす」

 タイムカードをカシャリと押して、更衣室に。


  急いで制服に着替えるけど、あっ……パンツ無いままじゃん。

  帰りに買おうって、そのままドアを開けたら、風が舞い込んできて、スカートがふわり。


 「いやぁぁんっ」


 甘い声をだしちゃった。

 誰も見てないよね。

 ノーパンのあたしのソコ。


 周囲を見渡して、スカートを抑えて。

 誰も見てないって事を確認して、ふぅ……と安堵の息。


 この感覚も久しぶりっていうか……。

 普段はパンツ見られても平気だから。


 一人でスリルを味合うのもいいけど、パートナーっていうか、江洲となら……。

 あれ?あたしは何を考えてんだろう――。

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