第5話 個室へ~ノーパンノーブラで~ 


 不安と期待とが混ざり合って、せめぎ合って。

 そんな状況で更衣室のドアを開けて、少しスカートの裾を気にしつつ、先輩メイドの前に姿を現す。


 あたしの姿を見て安堵する先輩が、何か理解したかのような口調で言葉を発する。


「あっ、そっか。まりんちゃん。個室サービスは初めてだもんね。指名だよって突然、言われたら驚くよね」


 勘違いしてくれた先輩の言葉にのっかかり、『ホントそれ。』と言うようにコクコク頷いて見せると、肩をポンポンと笑顔で叩かれた。


「いつも通りで大丈夫だよ。料理はできてるからね。持っていって入室して」


 キッチンの方に視線を向けて、トレイの上にセットされているドリンクや食べ物も、専用コースだから予め決まっている品々。

 それは、1時間ってタイムリミットがあるからって聞いた覚えがある。


 料理を運ぶために、何度も何度も部屋を出入りしてたら、

『45分しか過ごせなかった』とか、クレームがあったりで確かに困るもんね。


 例え同性だとしても、こんなギリ丈のスカートの中がノーパンだとバレるワケにはいかない。

 紐パンDAYなのに、紐パンすら履いてませんって、ただのヘンタイっていうか痴女だし。


 小さい歩幅でちょこちょこと歩いてると、まだ緊張していると思われたのかな。

 先輩メイドが、リラックスという風に肩を上下させて私の顔を見ながら

「まりんちゃんって、そんな風には全然、見えないのにね。軽く数回『お尻を叩かれる』だけだから大丈夫よ。」


 クスクスと笑ってくる先輩の言葉が、どれ程あたしを動揺させたのか、分からないでしょう?

 先輩の言葉は『まりんちゃんって、お尻を叩かれる事が好きなように見えないけど、感じちゃう子だったんだ』

 って、言ってるみたいに聞こえるじゃん。


 実際に、お尻を叩かれたいと思っていて、しかも今からノーパンで叩かれるのに、『そんな風に見えないって』言われちゃうと、普段は確かにSっぽいって言われているから、余計に『まりんちゃんって、Mっ子ちゃんだったのね』みたいなのは、言葉攻めされている気がして、ヤバイんだって。


 同性からの悪気のない言葉攻めに羞恥を煽られ、胸元の突起が更に浮いてきた。


「あっ……えと、だ、大丈夫です。ホントに……」


 屈むとノーパンのお尻が丸見えになるので、目礼してトレイを両手で持ち、そのまま専用通路を通って個室のメイド用の入り口に立つ。

 

 自動にドアが開き、初めて見る部屋の内装を観察する余裕なんてなかった。

 椅子に座っているのが、あろうことか、クラスメイトの江洲出夢だったから。


 ポイント貯まるまで、この店に通っていたのか。

 しかも、指名相手が私って……。


 足を1歩、部屋の中に踏み入れると、自動ドアが閉まる音が聞こえる。

 その背後のドア一面が鏡になっている事なんて気付くはずないって――。

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