第46話 倉片さんと動画を撮りたい

 少しすると伊勢崎さんも現れ、牧原さんのことを説明した。



「彼女はSNSのDMで交渉してみたの!」

「マジっすか……」



 まさかのSNSナンパかよ。それに応じる牧原さんもスゲェな。

 見た感じ、綺麗なお姉さんって感じだ。AV女優は初めて見た。こんな美人なのに仕事にしているんだよなぁ。

 世の中不思議だなぁと思いつつも、牧原さんは「よろしく」と笑顔で握手を求めてきた。俺は応えた。



「俺はキョウ。よろしくお願いします」

「キョウくんね。もしかして大学生?」

「よく分かりましたね。そうですけど……」

「やっぱりね。見たことあるんだよね!」


 見られていたのかよ、俺。こんな美人から見られていたとか、気づかなかったなぁ。

 照れていると倉片さんがひじで俺の横腹を突いてきた。


「……キョウくん」

「あ、すまんすまん。つい……」


 こんな膨れる倉片さんは初めてかもしれない。てか、いているってことか……!? ウソだろ。信じられん。

 けど嬉しいというか、うん、嬉しい。



「そっちの可愛い子は……」

「あ、わたしは倉片です。よろしくお願いします」

「へ~、めちゃくちゃ可愛いね! もしかして、女優さん?」


「一応、そういうことになっています」

「はえー」



 牧原さんは興味深そうに倉片さんをジロジロ観察していた。牧原さんも十分に可愛いし、美人だけどなぁ。やはり、倉片さんがそっちの世界にいるというのは珍しいのだろうか。

 最近のエロ界隈かいわいは、結構美人そろいな気もするけれど。



 伊勢崎さんによれば、今後は生産性を上げるためにも牧原さんも交えて『動画を撮る!』とのことだった。……マジか。

 相手は俺なのだろうか。

 しかしなぁ……倉片さんがどう思うか。



「…………」



 あぁ、めっちゃ不機嫌そう。

 ですよね~~~…。


 ここは男優も別の人を立てるべきだろうか。悩みどころだな。



 牧原さんは、伊勢崎さんと契約書を巻くこということで別室へ。俺と倉片さんは編集部屋に取り残された。



 ……気まずい空気だ。



「あ、あのさ……倉片さん」

「美人だったね」

「え……」


「牧原さんとヤりたいんでしょ」



 ジトっとした目で見られ、単刀直入に言われて俺は戸惑った。そんなヤりたいとかストレートに!!

 そりゃ、男としてはね……あんな美人を抱きたいと思うよ? でも、正直俺は倉片さん一筋なんだ。裏切れない。



「そんなことはない。俺は倉片さんと動画を撮りたい」

「ほ、ほんと?」

「ああ。俺にも信念ってもんがある」

「よかった。他の人と撮影したら殴ってたかも」


 下手すりゃ殴られていたのかよ、俺。

 でも、セーフ。

 なんとか乗り切れたな。


「牧原さんには悪いけど、男優を探してソイツとヤってもらおう」

「そうだね。男の人も探さないと」


「撮影は俺、倉片さんは指導とか補助でいいんじゃない?」

「いいね、本格的な撮影現場になりそう」



 今までトラブル続きだったが、ようやくAVの会社らしくなってきたかな?

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