立ちんぼで拾ったのは元クラスメイトでした

桜井正宗

立ちんぼ

第1話 立ちんぼにいた倉片さん

 夜の街に立っていた、アイドル級美少女の容姿かおに見覚えがあった。あの特徴的とくちょうてきな巨乳、右目の泣きボクロも間違いない。


 俺の隣の席だった倉片くらかたさんだ。

 彼女と目が合ってたがいに固まった。石化してしまった。


「―――――え」

「うそ…………」


 どうして、そこに倉片さんが立っているのかワケが分からなかった。ここは、彼女のような女の子がいるような場所では……ないこともないかもしれないが、それにしたって高校を卒業したばかりだぞ。


「倉片さんだよね」

「……そっちこそ、キョウくん」


 驚きのあまり、目をパチクリさせる倉片さん。俺もそんな愕然がくぜんとした表情をしていたと思う。


「立ちんぼ、だよね」

「う、うん……」

「なんで? お金に困ってるの?」

「し、仕方ないじゃん。お金欲しいんだもん!」

「マジか。倉片さんならヨーチューブとかの微エロで稼げるでしょうに」


 そんな甘くないよ、と倉片さんは深いため息を吐く。それもそうだな。動画投稿の世界でポンポン稼げていたのなら、こんなところにはいないか。


「……で。まさか、わたしをお求めで?」

「そうだな。今、ぱっと目に入った女の子は君くらいだ」

「そ、そう。わたし、初めてでよく分からないんだよね」


 はじめてだったのかよ。客第一号が俺なのか。そりゃ幸運ラッキーだけど、妙な感じだ。

 一応、元クラスメイト。しかも、好きだった相手。告白できず卒業しちゃったけど、まさかこんな形で再会することになろうとはな。


 金の力で好きな人とヤれる日が来るとは思わなんだ。


「買ってもいいんだよな?」

「そ、そりゃね! 二万円ね」

「結構高いな」

「え……なら、一万円」

「いきなり安いな!? 半減かよ。深夜スーパーの割引じゃあるまいし」


 気前良すぎだろう、倉片さん。なんだか、幸先が心配すぎてな。てか、こんなことになっているなら俺がやしなってもいいんだがな。……つっても、俺も金に余裕があるわけではない。むしろヤバい。

 借金返済に追われている日々なのだが、しかし今日くらいは女の子と幸せな時間を過ごしたいと考えていた。なんせ誕生日だから。


「相場分かんないし」

「今言った金額が相場だよ」

「なるほど! じゃ、一万円ね」


 ノリ良いな~。まあ、高校時代からそうだったけどね。

 俺は一万円を支払うことに決めた。

 倉片さんほどの美少女をこんな格安でお持ち帰りできるのなら、破格はかくすぎるほどだ。バーゲンセールすぎるだろう。こんな大手通販サイトもビックリのビッグセールは、もう二度と開催しないだろうな。

 今後はどんどん値上げてくるだろうし。


 そんなわけで、倉片さんを連れてラブホへ入った。入ってしまった。

 すげえ、マジでついて来てくれた。感動だ。


 倉片さんは緊張しているのかロボットのようにガチガチだった。という俺も、今にも心臓が超新星爆発スーパーノヴァしそうだ。


 エレベーターに乗り、指定の部屋へ。

 ついに到着して部屋の中へ。


 早々、倉片さんに一万円札を握らせ――壁ドンした。


「……さっそく」

「え! もう!? は、早くないかな……」

我慢がまんできない」

「い、言っておくけど、わたし処女はじめてだからね……!」

「……ナンダッテ」

「優しくしてください……」


 切実せつじつそうに懇願こんがんする倉片さん。おい、マジかよ。そんな可愛い顔して未経験はじめてかよっ!

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