亡国物語

華野 香

第1話 リフナ王国

 大陸の西側に位置する島国、リフナ。


 大きな3つの島と多くの小島からなる王国である。


 3つの島は一直線に並んでおり、その名称は大陸側から順にクナシ礁、セントラル・パーク、リモイス島である。


 王国の中枢、国民が王城と呼ぶそれはセントラル・パークの丁度真ん中に位置し、そこに国王たちが住んでいる。


 天然資源には恵まれなかったものの、貿易の中継地点として栄えてきた。


 どの街も活気で溢れ、そこら中で笑い声や話し声が絶えない。


 比較的冷涼な気候であるこの国は避暑地としても人気が高く、特に首都・フローストの西にある都市、ミサは別荘地としても有名である。


 クナシ礁東に位置するオミアーは、古くから大陸との懸け橋を担っており、大陸各国の名産、文化、民族などが入り混じった町として名高い。


 内政も安定しており、外交関係も悪い国は存在しない。


 国王の評判も・・・


「優しい人だよ?いつでも国民のことを第一に考えてくれてるし。こんなに国民に尽くしてくれる王様なんて居ないと思うよ」


「リフナの王様?悪い噂は聞かないよね?きっといい人なんだろうな」


 上がリフナ人の、下がリフナから遠く離れた国の人の発言である。


 このように、批判するような声は多くは聞こえてこない。


「民が苦しい生活をしていたとして、自分だけ贅沢はしてられないだろう?そういうことだよ」


 顎髭を擦りながら、国王は笑う。


 どこにでもある、普通で平和な国。


 だった。


 それは、現国王の即位記念日に起こった。


 セントラル・パークで式典を行っていたため、王宮関係者、衛兵、住民の多くがそこに集まっていた。

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