赤色フリージア

山本ル腐る

プロローグ

《二年A組 御谷柳馬


 ぼくの夢は、好きな人と色んなことをすることです。

 ぼくは、まだ好きだと思っている人はいませんが、好きだなあと思う特徴はあります。

 その特徴の言うのは、「小学生くらいの女の子」です。

同学年の女子よりも、ぼくは小学生くらいの女の子の方が、み力的に感じます。

 ぼくは、そんなの人といっしょに映画を見たり、ご飯を食べたり、いっしょに寝たりしたいです。

えっちなこともいっぱいしたいです。》


「あー、うん、ダメだなぁ…これだと」


僕はそう言った後、宿題に出された原稿用紙に書き連ねていた文を消しゴムで消した。

宿題の内容は「将来の夢」。

小学生の宿題か、とクラスの何人かはツッコんだけど、面倒な授業と比べればまだ楽か、とすぐに落ち着いた。

将来の夢、と言ったって、特にこれといった目標とか、やりたいことなんてない。

お金持ちになりたいとか、社長になりたいとか、中には大統領になるとかふざけたことを言っている奴もいるけど、花屋になりたいとか、某電子メーカーの社員になりたいとか、結構真面目に書いてる人もいる。

僕は、特にそういったものがなかった。

花婿になりたいとか、いいところに就職したいとか、そんなものはなかった。

考えに考えた結果、頭にでてきたテーマで書いてみた。

書き終わってから気づいたが、こんな内容を担任に見られれば、僕の印象は悪くなってしまう。

でも、原稿用紙に書き連ねた言葉は全部本音だし、全部本気。


「とりあえず…適当に長生きしたいとでも書いとこっかな」


どうせ本音かどうかよりも、将来についてどれほど考えているかを見るためのものなのだし。

本音を書くよりも、見栄えのいいテーマで書いた方がいい。

僕は消しゴムで消したせいで所々黒っぽく、少しクシャッとした原稿用紙にまた書き始めた。


「僕の夢は長生き──」

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