第11話 夢の中から逃げ出した
教室の扉を開けて顔をヒョコっと出す。
私ったら、手が震えて扉がガタガタ——って、うるさくしちゃった。
——お願いだから震えないでよぉ〜!! ——って、私自身を戒めたのなんて人生初めての経験だったんだよ。
廊下だけど……いつも通りの廊下。あの赤い靄は居ない。
そのまま大した変化を感じることなく一階に降りて……結局、学校の入り口、正面玄関まできた。
確認のために物陰からヒョコっと顔を出す。
ここでようやく、事態を把握したんだ。
入り口のガラス扉は、まるで大きな斧で力任せに横凪にしたかの様に、酷く壊されていた。おそらく、私が驚いた騒音はこれのせい。
でね、そこには不思議な光景が広がっていた。その時の扉の一部だと思われるガラスの破片は、宙に浮いて留まっていた。そこだけ、壊れたタイミングでシャッターを切った写真のように、時間を停止したみたいだった。でも、ここは夢の中——そんな異常現象でも、ここでは当たり前。一時、あそこから外に出られるかなって考えてみたけど、アレじゃ無理そう。身体中ズタズタになっちゃうよ。
『——ッパキ!』
「——ッ!?」
突然、音がした。
たぶん床に散らばったガラス片を踏んだ音。下駄箱が邪魔でよく確認出来なかったんだけど……
アイツだ……
あの赤い靄だ……!
アイツが、校舎に入って来ちゃったんだ——!!
視界からは以前とその姿を捉えていなかったけど、あの軒を連ねた下駄箱の向こうにはアイツが……あの靄が居るんだって自ずと気づいてしまった。
『——ッパキ!』
「——ッ!?」
また1つ音がした!?
——歩いてるんだあの靄は——こっちに来ようとしている!?
私は、廊下の角から覗くのをやめて必死に両手で口を抑えてた。「歩いてる」って分かった時、思わず声が出そうになったの。そんなのありえないのに——
私は私の口を手で覆った。指と指が重なりあい、鼓動に合わせて震えてる事がわかる。
ドクン——ドクン——って……
それほどまでに、私の身体は異常に恐怖を味わっていたんだって……これは後に、夢から逃げ出した時に気づいたこと。
『——ッパキ!』
3度目のガラスの音——その瞬間、私は逃げ出した。物音を出さないように〜〜なんて……まったく考えもせず、バタバタ逃げ出した。
おそらく、あの靄は私が近くに居たと気づいたんじゃないかな。絶対にバレた。
勝手口まで駆ける道中——
『——ッカン!』
今度は、ガラスとは違う甲高い音を私の耳は拾ったと思う?
なんで疑問系なのかは察しって! 私怖くて、この夢から早く逃げ出したいって思ってたんだから……それ以外の事に考えを裂いてる余裕なんてなかったの。
で、気づいたら……
私は、いつもの自室のベットで天井を仰いでいた。
この時、身体は硬直して、鼓動は早く身体は暑かった。まるで全力疾走をした後のよう。冷や汗なのか、ほてった身体が原因なのか、なんだかわからない汗までかいて、服の下がグッチョリ気持ち悪かったことを覚えてる。
私……胸の前でまるで神様に祈りを捧げるみたいにして手を組んで、必死に落ち着きを取り戻そうとしてた。
これが……
夢の中で口を手で覆った時の感覚と殆ど同じだったんだ。
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