第34話 ウィンディの運命分岐点その5 開眼と悪夢

「感謝するぜ二人共」

 エスペルが私達二人の頭を撫でてくれる。起きたらまた犯されて、アーニスと二人同時に抱かれたりもした。アーニスの凄いプロポーションの体を見てるとちょっと落ち込みそうになるけど、エスペルが私の体に飽きてる訳じゃなさそうなのでホッとする。

 …と言うか、アーニスよりも私の体の方が好きだよね?ちっちゃい方が好きなのかな?…それはそれでどうなんだろう?もしもこれから成長して背とか胸とかも大きくなって、エスペルの好みから外れちゃったらと思うと怖いかも。


「上手くなったな二人共」

 エスペルに褒められる。今はアーニスと一緒にお掃除して綺麗にしてあげているところだ。エスペルはこれ好きなんだよね。アーニスと競う様に舌で唇で頑張ってみる。胸もお尻も体力も勝てないから、せめて、こういうのだけでも…


「弱い奴も役に立つんだな。お前ら連れて来て良かったぜー」

 はっきりそう言われても私は特に何も感じない。そりゃエスペルと比べられても困るもの。私ただの村娘だよ?でも同じ冒険者のアーニスは思う所があるみたい。

「んんっ…そう言われると、複雑だ…」

 私と一緒にエスペルの物に舌を這わせていたアーニスがぼやいてる。エスペルを目指すのは流石に無理があるけど、私もちょっとは戦える様にはなりたいかも。


「ウィンディもありがとう。足手まといって大事だって気付かせてくれて」

 ああ、そう、そういう感じ?

「う…ん…役に立てたなら…役に立てたの、かな?私、要らなくない?必要?…んむっ」

 エスペルが皮肉とかでなく普通に感謝してるのは解るけど、どうしてそう思ってるのかが解らなくて不安になる。足手まといって要らないって事じゃないの?


 ところでいつもより頑張ってるせいで顎が疲れてきた。アーニスに負けたくない…とは違うけど、なんだかいつもより力が入ってしまう。

「ああ、お前が居てくれて良かった」

 私とは違う価値基準で生きてるから、やっぱり考えてる事がよく解らない。でもエスペルがそれで良いなら良いや。

「そう…なら良かった…ちゅっ」

 エスペルの物の先端にキスをする。人の気も知らないで好き勝手に私の中で暴れて…でも、なんだか今日はいつもより可愛らしく愛しく思えてしまう。

 

 口を目一杯開いてお掃除してると、エスペルが嬉しそうに優しく頭を撫でてくれる。私もなんだか嬉しくなってしまう。

「よしよし」

 エスペルは私とアーニス二人の頭を撫で回す。ずっと撫でられてると、まるで犬になった様な気分になってくるよ。尻尾が生えていたらぶんぶん振ってそう。嫌じゃないけどさ。


「ん?いつの間にか目治ってるな」

 エスペルの呟きを聴いて見上げてみると、確かに顔の傷が治っていた。血は乾いてカピカピになってる。

 ちょっと考え込んでからエスペルが変な事を言い出した。


「ふむ、そっか。別に二人じゃなくてもいいか。後で違う女で試そ―――おうふ」 

 女の子二人にこういう事をさせといてする発言ではないと思うの。思わず歯を立てちゃった。隣を見るとアーニスと目が合う。アーニスも同じくガブリといっている。そうだよね。頭に来るよね?アイコンタクトで同意し合う私達。


「ふーん。おもしろいな」

 エスペルは正に飼い犬にアレを噛まれた気分だろうが特に気分を害していない。面白そうに私達を見下ろしている。


「俺より強い女犯してみてーな」

 やっぱりエスペルはエスペルだった。私達の決死の反抗など、文字通り歯牙にもかけていない。

 私達二人の頭をわしゃわしゃと撫でながら笑うエスペルを上目遣いに睨んでも、彼は更に愉快そうに笑うだけだった。

 こういうのをなんて言うんだっけ?

 鬼畜…エスペルは変態さんで鬼畜だった。



☆☆☆☆☆



 それからしばらくはそんな日々が流れた。

 村に居るとエスペルが会いに来てくれて、お部屋の中だったりお外に連れ出されたり、彼の気分次第で好きな場所で犯される。

 アーニスと一緒に犯される時は、なんだかいつもより力が入る。やっぱり負けたくないのかも。エスペルなんて好きじゃないのに。そうだよ。違うもん。私はもっと、私だけを大切にしてくれて、優しい人が、好きなはず、なのに………


「さて、またモンスターでも殺して来る。クエストでなんかあれば一石二鳥やし」


 朦朧とする意識の中、エスペルの声が聴こえる。

 今はフェルンの町の高級宿に居る。エスペルに連れ出されアーニスと三人でしていたからだ。

 私とアーニスに何回出しても全然元気なエスペルに呆れ果てる。どうやら私達以外にも仲良くしてる女の子が居るみたいだけど…納得せざるを得ない。彼を私達二人だけで満足させられる自信はもう無い。


 まだ変な対抗意識もあるけど、なるべくアーニスと協力してエスペルの相手をしている。アーニスは私よりも体力は勿論あるけど、それでもエスペルの相手は完全に務まっていない。

 こういうのなんて言うんだっけ?

 性豪?絶倫?エスペルは変態さんな鬼畜で性豪な絶倫だよ。私じゃ無理だよ。なんで私を選んだの?


「人体を細かく破壊する勉強したいんだけど、なかなか難しいよね」

 …なんだか怖い事を言ってるエスペル。理不尽に犯されてる現状を嘆きたいけど、たまに見せる冷酷なエスペルの一面が私にもしもの未来を想起させ、背筋を凍らせる。

 出逢ったあの時、エスペルが私に興味を抱かなければ私は水蛇に食べられていただろう。もしくはあの時、エスペルが女に飢えておらず、人体への知的好奇心が高まっていたら、生きたまま解体されていたかも知れない。


「ま、モンスター相手でも十分練習になるしな」


 衣擦れの音がする。エスペルが服を着ている。私の隣に寝ていたアーニスが体を起こして、エスペルのエスペルにキスをしてるのが解る。


「ちゅっ」

 アーニスの唇から粘り気のある糸が引かれてる。それを見ると私のお腹の奥がキュンッてなるの。

 …あれ?おかしいな?私今、目を瞑ってるはずなのに…?…なんで見えてるの?

「クエストに連れてけとは言わないのか?」

 エスペルの問い掛けにアーニスも流石にぐったりして応えてる。

「…無茶を、言うな…」

 それはそうだよね。


 アーニスはもぞもぞしながらシーツで胸元を隠してる。うう…凄く色っぽい。私が同じ仕草をしても、貧相な体を隠そうとしてるだけに見えるだろう。

 だってほら見てよ?肋も浮いてるし、胸だって横に流れて膨らみが消えてる。谷間って何それ美味しいの?ああ、哀しい。うあ、良く見たら私薄目?半目開けててちょっとキモい。涎も垂らしてるし、今顔をじっくり見られたら恥ずか死ぬ。とりあえず泣きそう。目に涙が溜まってくのが見え…る?


(…あれ?私、なんで私を見えているの?)


「うう…動けぬ…」

 アーニスが悔しそうにしてる。私と違って現役で実力もある冒険者だからね。体に力が入らないのがもどかしいのだろう。


 私もエスペルのお陰で一日中セックスしたり美味しくて栄養のある食べ物を食べてるから、正直以前よりかは健康になったし体力もついてきた。

 でもエスペルの相手には全然足りないよ。


「まぁなー。抱きまくってるからな」

 そう言うエスペルは物足りなそうだ。

 気分がノってて激しい時のエスペルに抱かれると、私なんか一、二回でもうギブアップだし。アーニスもずっとは無理みたい。でもちゃんと休憩はさせて貰えてる。いくら回復魔法があっても、あれじゃ死んじゃうもの。


「バリュー市では七人の女で回してたからな。他にも娼婦とか買ってたし」

 やっぱりそうなんだ?七人のローテーションで回してたエスペルの相手を二人でやるのは無茶だよ、もぉっ!


「エスペルの性欲と精力は化け物だな」

 アーニスも呆れてるよ。

「アーニス自身のせいでもあるぜ?ウィンディ以外は全部自分で引き受けるって言ったし」

 うん。アーニスは自らエスペルに抱かれに行ってる。

「当然だろう。私はエスペルの子種が欲しいんた。他の女にやる分は一滴も無い。」

 強い。いいなぁ。私もハッキリとそう言えたら良いのに………

「男として嬉しい様な気分と、種馬になった気分を同時に味わえるな」

 そう言うくせにエスペルがムクムクと元気になってきた。本当に底無しさんだ。

「…だが、そうだな。夫の戦い方も見てみたい。やはりついて行くとしよう」

 夫…エスペルが夫?ならアーニスは妻?なら私は?…何なのかな?

 ふらふらしながら立ち上がるアーニスを、エスペルが体を拭いてあげたりビキニアーマーを着せてあげたりしてる。勿論その時におっぱいやお尻を揉んだりしてセクハラしてる。やっぱりエスペルはエッチだなぁ。


 私が見守る室内で、私を置いて二人が出て行く。

 二人が出て行った後、私の意識はまた混濁し始める。

 一人きりは嫌。でも、アーニスみたいにエスペルについて行けない。

 ああ、どうし、よう…

 このままじゃ…

 いつか、本当に…

 置いて、行かれる…



☆☆☆☆☆



「エスペル?」

 ある日の事だった。いつも通りふらりとやって来たエスペルにお部屋で犯される。

 終わった後にエスペルに抱かれて眠っていたら、ふと目が覚めた。


 …エスペルが…

(―――魘されている?)

 なんだろう?初めての事だった。


 いつも、誰が来ても負けない。敵なんか居ないって顔をしてるエスペルが顔を顰めて歯を食いしばっている。


 妊娠させて来た女の子達に追い詰められてる夢だろうか?

 前に居た場所でもたくさん女の子を手元に囲っていたらしいからね。

 でも、そう言う感じでもない。


「エスペル?どうしたの?」


 明らかに魘され方が変わった。

「…痛っ…」

 無意識なのだろう。私を抱き締める腕の力が増していく。息が苦しくなり骨も軋む。

 今のエスペルからは強い恐怖を感じる。

「エ、エスペル…苦しぃ―――」

 私がエスペルの頭を抱き締める。


「へ、平気だから…ね?」

 私の体は軋み、額には脂汗が浮かぶ。

「――――はぁっ!?はぁっ!?はぁっ!?」

 エスペルの息遣いが荒くなる。こんな風になるエスペルは初めて見たよ。


「―――だれだ?」

 エスペルがボソリと呟く。寝言かな?

「私はウィンディ。私はここだよ、エスペル」

 寝言に応えてしまう。

 エスペルの体が冷たい。冷や汗をかいている。

「―――違和感はずっとあった」

 また何か喋ってる。これは何か自問自答の様に聞こえる。

「きゃっ」

 エスペルは突然立ち上がり虚空を睨んでる。


「あの女…誰だ?」


 そうボソリと呟き、動かなくなる。私は戸惑いつつも全身の冷や汗を拭いてあげようと布を手に取り…奪い取られた。

 エスペルは自分で拭いてしまう。やってあげようと思ったのに。

「…エスペル」

 恐る恐る話しかけるとエスペルが見下ろして来る。いつもより余裕は無さそうだったけど、瞳には理性の色が見えてホッとした。


「あっ」

 エスペルが私に伸し掛かって来た。八つ当たりの様に乱暴に犯されるのかと思って身構えてしまう。しかし違った。エスペルは私の胸に必死に縋り付いて来たのだ。余裕は無さそうだが、乱暴に犯しには来ない。ただ甘えて来るだけだ。


(あ………なにか変…)

 性的快感とはまた違う快感が私の背筋をぞくぞくとさせる。気持ち良い。

 エスペルの体は震え、恐怖に慄いている。エスペルがこんなに怯える相手なんて居るの?まさか魔王のお嫁さんとか娘に手を出したりしてないよね?エスペルならやりかねないかも。


「怖くないよ?よしよし…」

 私はエスペルをぎゅっと抱き締め頭を撫でてやる。背中を擦ってぽんぽんと優しく叩く。すると緊張して固くなったエスペルの体から力が抜けていく。


 うあ、気持ち良い。あの強くて傲岸不遜なエスペルが、私を頼って縋り付いて来てる。


 私が頭を撫でて背中を擦り続けてると、エスペルが段々と落ち着いて来る。安心していいよ。ここがあなたの居場所だよ。私の胸の中が、世界で一番安全だよ?


「あん。美味しい?好きにしていいよ?」

 エスペルが私の胸を吸って来た。でもなんだろう?エッチな気分とはまた違う充足感がある。気持ち良い。赤ちゃん?…そうだね、エスペルはまるで幼子の様に私の胸に甘えて来る。うふふ。おっきな赤ちゃんだね。


 可愛い…と思ってしまう。

「あなたは、なんなの?」

 何故こんなにも私の心をかき乱すの?

 

 私より圧倒的な力を持つはずのエスペルがか弱く小さな存在に思えてしまう。

 愛しく感じ、守ってあげたくなってしまう。

 ああ、この男が私を狂わせる。

 なんて憎たらしいのだろう。

「エスペル」

 私が額にキスをしてあげると、さらに私の胸に顔を埋めて来る。

「ふふっ」

 なんか可愛い。

 私は甘えて来るエスペルの頭を撫でながら目を瞑り、共に微睡みの中に墜ちて行ったのだった。

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