第21話 家出王女の冒険その9 決着と決別

 エスペルはいつの間にかカルティスを犯していた。

「あれ?そっちの貧乳はともかく、こっちの巨乳は神職だろ?両方中古じゃん。まぁ俺は差別とかしないけどね」

「ふぐぅっ…うぅ―――」

 エスペルが嘲笑い、カルティスの泣き声が聴こえる。

 回復支援に特化してるカルティスには抗う術は無い。

「嫌だぁっ!なんで…私が…こんな目に…だから、嫌だって、言ったのに…」

 なんか言ってる。

 台詞からしてエスペル襲撃に反対していたのかも知れない。エスペルの戦闘能力を考えれば当然だろう。私だって同じ立場なら絶対にゴメンだ。

 

 最初の奇襲が成功したのはエスペルが寝惚けてたのと、ダメージを受けないと本能で確信していたからだろう。

 もしもエスペルに通る攻撃であれば彼ならば無意識でも避けていたはずだ。

 あまりにも無謀な作戦だった。今カルティスはその代価を支払っているのだ。

 屈辱と恐怖と後悔で涙を流してる元仲間を見ても、私は何も思わない。むしろ、エスペルに犯されてる事に少し苛つく。エスペルがあの二人のどちらかを気に入り、私を捨てる可能性だってゼロじゃないのだから。

(私も大分変わったなぁ)


「…して、殺して…」

 ルーザは縮こまって泣いている。何故泣いているの?エスペルを焼き殺そうとしたくせに、彼に犯して貰えるだけで済んでるのに。

「うっううっうーーー」

 カルティスが泣きながら耐えている。こちらもよく泣けるものだ。エスペルがその気なら一瞬でカルティスの肉体を解体出来る。それをしない優しさを―――


「二人も結婚してるし、カルティスには子供まで居るからね」

 ピエールがべらべら喋り続ける。これが邪眼か。恐ろしい能力ね。まぁ成る程確かに。私ももしも、違う男に犯されたなら抵抗するわね。


「ひっ!?や、やめてピエールっ!言わないでっ!」

 ピエールの余計な発言に一気に青褪め、我に返るカルティス。

「ふーん。子供、居るんだ?可愛い?女の子?」

 エスペルがそんなカルティスを見て微笑んでいる。凄く楽しそうな無邪気な笑顔だ。

「だ、だめ、お願い、します…か、家族には、手を出さないで―――」

 カルティスの怯え方が違う種類のものに変わる。あの反応は女の子かな?

 私の奪還に失敗した以上、カルティスの家族も終わりだと思うけど、エスペルに目を付けられたら確実に詰む。

 例えば温情が出たとしても、カルティス達は死亡扱いでさらに過酷な任務に投入。

 家族とは二度と会えないが子供は無事に過ごせるだろう。しかしエスペルが制裁の範囲を家族にまで広げれば確実に破壊される。

 エスペルに幼女趣味があるか解らないけど、カルティスやピエールの娘ぐらい簡単に拐えるだろうし。状況によってはフォーゲイルが差し出してくる展開も有り得る。

「ん〜〜〜どうしよっかな〜?」

 エスペルが楽しそうに笑ってる。むむむ。私の事、あんな風に楽しそうに最近は抱いてくれないのにな。

 エスペルはどうも、自分に対して拒絶感や嫌悪感を抱く女を無理矢理犯すのが好きらしい。

 そんな風にされ続けて惚れてしまった私の情緒はどうしてくれるんだろう?

「ジーーーーッ」

「………まぁ、家族探し出すとか面倒臭いからしないよ?」

 私がジーッと見つめてると、エスペルは鬼畜凌辱ムーブを早めに切り上げてくれた。

 あまり愛着が湧かれてお持ち帰りされても困る。程々にして欲しい。


 エスペルはややバツが悪そうに私とルーザ、カルティス三人に向けた様な言い訳を始める。

「いや、こんなん立ちションみてーなもんだって言ったろ?ほら、命は助けてやったんだしさぁ」

 また言ってる。

 全裸で腰に手を当て、まだ元気一杯な物で天を突くエスペル。そこでふと、何かに気付いた様にハッとしている。

「…立ちションで思い出したけど、俺そういやトイレしようと思って起きたんだったわ。変な邪魔入ったから忘れてたけど」

 そう言ってエスペルはカルティスとルーザの顔に向けて、当初の目的を果たす。


「うああっ…」

「あううっ…」

 身動きの取れない二人は避ける事も出来ずに顔にその熱い飛沫を受けている。

「ふぅ、スッキリ。これで手打ちって事で」

 身も心も汚して心を折る。拷問、制裁としては完璧なんだろうけど…

「むぅ…」

 …少し妬いてしまう。エスペルは楽しいしあの二人は苦しいしで効率的なのは間違いないが、とてもモヤモヤする。


「いいわ。もう、こっちを早く終わらせてお仕置き…ご褒美?してもらおっと」

「君も変わったね。夢見る乙女の処女なんてゴメンだったけど、最初から今くらいの女だったら抱いてやっても良かったよ。君が居たからカーガズンやブマーガも娼館に行けなかったしさ」

「…貴方本当にピエール?いえフォールズだったかしら」

「その家の名も意味が無いけどね。妾の子だし」

「あ、そう」

 邪眼の力と…後は徹底的に負けた圧倒的敗北感が心を折ったのだろう。ピエールは饒舌に過ぎる。

 この尋問の目的は、私の知らない大事な情報を喋らせると言うより、ロメロンから教えて貰ったヒントと、私がずっと感じてた違和感の答え合わせに過ぎないはずだったんだけど。

 なんか要らない情報もいっぱいくれたわね。そしてピエールの言葉は止まらない。


「君からの好意?受け取れるはずないだろう。僕達は君の護衛任務を突然下されたせいで、本来なら定期的に会えるはずの家族とも会えなくなった。気軽に手紙の遣り取りすら出来なくなったんだ。娘から顔を忘れられたらどうしてくれるんだ。君が僕に好意を抱いてると察した時の苛立ちが解るかい?解らないだろうね、温室育ちの王女様じゃ。あの出会いの時まで遡って、君がゴロツキ共に輪姦され殺される未来を選択したいよ本当に」

「や、やめろ…もう喋るな、ピエール」

 カーガズンが止めるが、邪眼の力で心の蓋を引き剥がされたピエールは止まらない。

 うーん、以前の私だったら怒りに震えてた…かな?

 むしろ有り難いかも?

 もうエスペルに気持ちは行っているけど、実は愛してたんだ、身分違い故に拒絶したんだと言われても困るしね。


「おーいヴェーツェ。で、こいつら殺すの?どーすんの?」

 出す物出してスッキリした顔をしたエスペルがやって来る。

「予備の下着あったでしょ?取り敢えずそれ着たら?」

「ん?そーする」

 頷いたエスペルはトコトコ歩いていき再びカルティスを犯し始める。ええー?

「もういいから早く帰りましょうよ?」

「んー。いやぁ、折角だからもう一発ずつ」

「ええー?」

 ま、まずい。本当に早く帰ろう。

 ルピアとかベトレイヤとかならともかく、カルティスやルーザと一緒に抱かれるのは、ちょっと本当に嫌だ。

「…ごめ、なさい…ごめ―――」

 虚ろな表情でカルティスが謝る相手は夫か子供か。

「おーい、こっち向けよ」

「ひやぁ…」

 エスペルがカルティスの唇を奪う。

 夫と子も居る人妻の尊厳を、楽しく凌辱し踏み躙っている。

 あーもうっ!ピエール達のせいでエスペルが変な遊び覚えちゃったじゃないっ!



☆☆☆☆☆



 でも結局、エスペルは優しい。

 ピエール達を殺さなかった。

 エスペルはどうでもいいと言いつつ、あの後周辺のモンスターを皆殺しにしていた。男だけならむしろモンスターをけしかけてたかも。

 抱いたから情が湧いたのかしら?女に甘いんだから。

 ベトレイヤやシュヴェスタも絶対最初は殺す気だったはずよ。犯してるうちに愛着が湧いたんだわ。

 愛情ではなく愛着。きっと私の事もね…。

 あーでも…カルティスやルーザが、手元に置くほどお気に入りにならなくて本当に良かったわ。


 私達は山を下りて冒険者ギルドへ向かう。

 その前に下着姿のエスペルに適当な服を買ってあげたけど。

「えぇ…ピエールさん達が?それは、なんというか…」

 私がピエール達に襲われた事の陳述書を提出すると、レチュリアが困った顔で受理してくれた。

 これは勿論私達側からの視点なので、ピエール達へも事情聴取が必要になる。

 だが彼等はもう戻って来ないだろう。

 フォーゲイルに報告に戻ったか。もしくは家族を連れて夜逃げしに行ったか。 

 だがバリュー市周辺にはもう居ないはずだ。

 ワンチャンモンスターに襲われてるかもね。

 後々、エスペルの子を身籠ったカルティスやルーザが現れるよりかは、死んでくれてる方が有り難い。


「では、ここにサインを…」

 レチュリアが書類にサインを求めて来る。

 その時…

「ど、どうしました!?大丈夫ですか?」

 突然慌てた様な声を出すレチュリア。

「なんでも、ないわ…」

 私が泣いていたからだ。

 頬を伝う涙の正体は解らなかった。

 最初から裏切られていたとはいえ、彼等は仲間だった。それ故だろうか。

 心の中に空いたポッカリした穴。

 その穴を埋める様に―――


「エスペルっ!エスペルぅっ!」

 私は宿に帰り、エスペルを激しく求める。

 最早こちらから襲いかかり犯す様に、エスペルと身体を重ねる。

「なんだよ?甘えん坊だな」

 ギルドから泣きながら帰って来た私を優しく抱き締めてくれるエスペル。

「ん…うん…エスペル好き…愛してる―――」

「ああ…」

 俺もだよとは言ってくれないのよね?


 それでもその日は、事後処理の奉仕は命じられなかった。

 エスペルは長い時間キスをしてくれ、私が泣き止むまで優しく抱き締めてくれていた。

 性奴隷や肉便器でなく、初めて女として抱いて貰えた気がした。

 翌朝起きた時、彼の胸の中で私は幸せを感じていた。

 

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