第19話 家出王女の冒険その7 「エスペルっ!吸っちゃ駄目ぇっ!」

「愛してるわ。エスペル…」


 私が親愛なる御主人様へ愛の祈りを捧げていると、不機嫌そうな女の声が聞こえて来た。

「ったくっ!アンタがヴェーツェをふるからっ!変な男に引っかかるのよっ!」


 女魔法使いルーザが姿を現す。レンジを遠距離から中距離へ。私に攻撃されるリスクを承知で前に出て来たな。あのままだと私を捉えられないものね。

「仕方無いだろうっ!?僕だって好きでふった訳じゃない…」

 ピエールは歯切れが悪い。私をふったのは自分の意思じゃないですって?だから何?女がいつまでも自分を想い続けてるなんて思わない事ね。


「いいから退いてよ。ちゃんと全員殺してエスペル助けるから」

 私はそう吐き捨て、一気呵成に攻め立てる。

「くそっ!ブマーガっ!」

「任せろピエールっ!」

 武道家ブマーガがピエールとスイッチし前衛に出て来る。ブマーガの両手に装備した籠手が、私の剣を捌いていく。


「ちっ…」

「ぬぅ…」

 ピエールといいブマーガといい、技術面では私よりも優れている。才能の差とは思いたくないな。努力とも言いたくない。経験だ。足りないのは経験値。

 実際今も切り結びながら一歩一歩私が進み、一歩一歩ブマーガが後退している。激しい剣と拳の応酬に他の奴等も手を出しあぐねている。

 コイツを、コイツらを喰って私はエスペルの元に帰るんだ。


「お前らを殺して私の糧にしてやる」

 籠手ごと斬り飛ばすつもりで放った必殺の斬撃をブマーガは受けずに躱す。勘の良い奴。

「強いぞっ!以前とは本当に別人だっ!」

「邪眼で潜在能力を引き出されてるのかっ!?」

 失礼な物言いね。


「エスペルへの愛の力よっ!」

「このバカっ!寝言は寝てから言いなさいっ!『火炎矢』フレイムアローっ!」

 私が吠えるとルーザが『火炎放射』フレイムスロワーの下位互換魔法を唱えてくる。威力が低く致死攻撃ではないが、今の私が当たれば吹き飛び火傷し気絶するだろう。その分速度重視の魔法。名の通り矢の如き速度だが…

「遅い」

 愛に目覚めた私に当たるはずがない。


「避けたっ!?」

 私が難無く躱すとルーザの驚愕の声が響く。

「人間の動きじゃないぞっ!?ルーザの魔法を避けるのか―――」 

 一休みしたピエールが剣を構え直している。

(ちっ―――相変わらず連携は上手い…)

 前衛は無理せずスイッチし、後衛も牽制と援護をしつつ必殺の一手を狙う。パーティーとしての完成度は高い。作戦も何も無く出会った敵を殴り殺すだけのエスペルよりかは遥かに冒険者している。正にベテラン。

 だけどそれだけだ。エスペルのが凄い。エスペルのがカッコイイもん!


「コレを傷つけずに捕らえるのか」

 カーガズンが盾を構えつつぼやいている。私の動きにはついて来れないのだろう。先程から攻撃には加わらずルーザやカルティスの前に立っている。守りに入ったな。こうなった重戦士は手強い。


「なかなかに骨だぞ?」

 ブマーガも呼吸を整えている。コイツは早めに倒したい。戦闘能力ならパーティーで随一だ。あまり長引くと私の動きに対応される。それと何度か見たがブマーガには武器破壊技がある。私でなく剣を狙われるのも避けたい。

 さて、誰から倒す?ここはやはり…


「回復役からね。カルティスから殺すわ」

「な、名指しなんだけどーーーっ!」

 カルティスが引き攣った顔で悲鳴を上げている。私はカルティスをどうやって殺すかシュミレーションをする。多少は被弾してもいいから突貫しようそうしよう。

 私がジリジリと目標までの距離を測っていると、ピエールの深い溜め息が聞こえてきた。


「はぁ…仕方無い。カルティスの回復魔法に頼ろう。多少の怪我はもう仕方無い。このままでは僕達のが危ない。なんとしても無力化する」

 ピエールの中の私の脅威度が上がったらしい。別に関係無いし。絶対殺す。

 

「ちょっと!?私は四肢欠損や内臓欠損は無理よっ!?大怪我させないでっ!」

 カルティスは女僧侶ではあるが信仰心が足らずそこまでの回復魔法は使えない。しかし強化や浄化等、他の支援魔法による貢献度は高い。


(―――四肢欠損内臓欠損を回復出来るエスペルは信仰心も篤いのね)

 私は頭の片隅で場違いな事を考える。いや、あのエスペルが神に祈ってるところなど見た事は無いし想像も出来ない。むしろ神に愛されている様に見える。

(神と言っても、悪神邪神の類いでしょうね)

 あとは破壊神、魔神、そう言った神々から愛されてると言われた方が納得がいく。


「ならば傷痕が残って構わんっ!ルーザっ!奥の手だっ!僕とブマーガで隙を作るっ!必ず当てろっ!」

 ピエールの顔が見た事が無いくらいの冷たい無表情になる。ルーザの奥の手?まだ何か隠してるの?


「行くぞヴェーツェっ!目を覚まさせてやるっ!」

 走り込んで来るピエールと斬り結ぶ。さらにブマーガが後方から回り込んでくる。

「洒落臭いっ!」

 私はピエールを弾き飛ばしブマーガにも斬撃を見舞う。ルーザから嫌な気配を感じる。魔法の発動の予感。例の奥の手か。

(炎っ!?風っ!?どっち―――)

 どっちでもなかった。


『泥濘』マイアっ!」

 ルーザの声が響く。

「なっ!?」

 私の足元の土が一瞬で泥濘と化す。しまった。引っ掛かった。ピエールやブマーガも一緒に沈んでいる。


「くっ!?こんな小細工でっ!!!」

 土は泥濘み上手く踏み締められない。足を強く踏み出す程に沈み行く。

(早く脱出を―――)

 その時、雄叫びが上がる。

「うおおおおおおおおおっ!」

 思う様に動けなくなった私にカーガズンが突っ込んで来る。

 剣の腕は上がっていたし、腕力体力も上がっていたとは思うが、重戦士の質量には敵わない。

 剣での応酬ならともかく、シンプルな力比べでは無理だ。


ドゴッ!


「!?」

 カーガズンのシールドチャージで私はぶっ飛ばされる。

(―――よしっ!そこまでじゃないっ!)

 私は全身が軋むのを感じたが痛みは少なかった。そこまでは良かった。

(何より泥濘から脱出できたっ!このまま―――)

 私は反撃の狼煙を上げるつもりだった。しかし…


ズダンッ!


「がはっ!?」

 私は勢いも殺せず受け身も取れず、大木に叩き付けられたのだった。

 狙ったのかたまたまなのか、私はそこで意識外からのダメージを受けた。

 肺から空気が絞り出され、呼吸が止まる。

(ま、ずい―――)


「今だっ!取り押さえろっ!」

 ピエールの声が聞こえる。組み伏せられるのが解る。ブマーガのサブミッション。腕の関節を極められ身動きが取れなくなる。

「痛っ!?は、離せぇっ!」

 剣が蹴り飛ばされる。


「カルティス、眠らせろ」

「…興奮してる相手にはあんま効果無いわよ?」

「仕方無い。気絶させるか」


ゴッ


 頭を殴られた。

「ぐっ…」

 一瞬だけ意識が遠退いた。

 口の中に土が入る。

 どろりとした物も口に入る。血の味だ。

 頭から血が出てるのだろう。

「…上手く意識を奪えないな」

 意識はまだある。まだ大丈夫。

「今ならいけるんじゃないか?」

「解ったわよ」

 頭の上で会話が聴こえる。

 くそっ!

 動けっ!

 動けっ!

 腕が折れても構わないっ!動―――


『睡眠』スリープ


 …くっ…

 意識がまた、遠退いていく…

 駄目…

 嫌、エスペル―――

「たすけて――――――」


「おいおい、人の便器壊さないでくれるかー?」


 その声に一気に意識が覚醒する。

「エスペルっ!エスペルっ!エスペルっ!」

 私が泣き叫ぶ。

「嘘だろっ!アレで焼け死んでないのかっ!?」

 ピエール達が慌てふためくのが解る。

「くそっ!僕が首を落としておくべきだったかっ!」

 私はまだ地面に顔を抑えつけられておりエスペルの姿を見られない。しかし…


「ぐはっ!?」

「ぎゃっ!?」

 ピエール達の悲鳴が聴こえ、次の瞬間に私は抱きかかえられていた。

「エスペ―――んむっ」

 キスをされた。

 彼の舌と唇を通して、優しく暖かい気持ちになる。しばらくして唇を離されると、私の怪我や疲労は綺麗さっぱり無くなっていた。

 口移しの回復魔法。他者への無関心が過ぎるエスペルは、身体的接触を深くしないと回復魔法を使えない。

「あと俺の服知らね?なんか真っ裸なんだけど」

「エスペルっ!よかったエスペルっ!」

 私がエスペルに抱きついてキスをしまくると、エスペルはやや鬱陶しそうに顔を背ける。可愛い。

 私の見る限りエスペルに怪我は無い。火傷一つ無い。


「嘘でしょっ!何度も念入りに燃やしてたのにっ!!!」

 ルーザが体を震わせ恐怖している。そうか。私をピエール達が拘束してる時、ルーザがエスペルにさらに追加で炎の魔法で攻撃していたのね。許せない。


「?何こいつら?…追い剥ぎかぁ?」

 エスペルはピエール達の事を覚えていないらしい。

「まぁいいやぁ」

 まだ少し眠そうに目をシパシパしてる。

「俺の物に手を出して生きて帰れると思うなよ?」

 その言葉を聞いて私は幸福感に満たされる。私はエスペルの所有物。私に手を出したピエール達を、エスペルがやっつけてくれるんだ。



☆☆☆☆☆



「ルーザっ!」

 ピエールが叫ぶ。

『土檻』アースケージっ!」

 土が隆起し私達を取り囲む。ルーザは地水火風の四大元素をバランス良く操る優秀な魔法使いだ。水場が近ければもっと手強い攻撃をしてきたかも知れない。

 隆起した土は私達を完全に閉じ込め、生き埋めにする。呼吸を奪って窒息させ、意識を奪うつもりだろう。


ボゴッ!


 当然の様に拳で土塊を破壊し脱出するエスペル。

「口に土入った」

 ぺっぺっしてるエスペル可愛い。

「俺が時間を稼ぐっ!皆は一旦退ぶごぉぉぉおっ!?」

 シールドチャージして来たカーガズンの盾を蹴るエスペル。鋼の盾は足の形に凹み、カーガズンは後方にぶっ飛ばされる。大木にぶつかりそのまま崩れ落ちるカーガズン。

 狙ってやってくれたのか、私がやられた事をやり返してくれるエスペル素敵。


「この様な時に不謹慎ではあるが…」

 武道家ブマーガが一人、エスペルの前に歩み出る。

 その顔と瞳には闘志が漲っていた。

「武道家として、手合わせ願いたい」

「え?えーと…」

 エスペルが少し困っている。

「はぁあああっ!」

 ブマーガの猛攻が始まった。

 ブマーガの手刀が顔面に、蹴りが側頭部に、拳が脇腹に突き刺さる。どれも一撃で致命傷になる程の威力を秘めている。だが…


「くっ…!?」

 ブマーガが下がる。籠手やブーツが不様に歪んでいる。エスペルを殴って蹴ったのだ。そうなって当然だ。

「なんなんだよ?」

 エスペルは眉根を寄せて無造作に近寄る。

「ぬおおおっ!?」

 腹を括ったのか攻勢に出るブマーガだが、エスペルの拳が腹に突き刺さる。

「がはっ…」

 血を吐いて倒れるブマーガ。肋が折れて内臓も傷ついたのかも知れない。でも…

(生きてる?手加減してる?)

 私は不思議に思う。エスペルが手心を加える理由なんて…

「お前ら見た事あるな?ヴェーツェの仲間か。あー、そういう…」

 面倒臭そうにするエスペル。


「そうだ。ヴェーツェを返して貰おうか」

 ピエールは毅然とした態度でエスペルに応対する。左右には僧侶カルティスと魔法使いルーザ。

「嫌だね。コイツ俺の専用肉便器だし」

 へらへらと笑って小馬鹿にするように応対するエスペル素敵。


「この外道がっ!まだ若い娘を邪眼で思う通りに操り弄ぶ鬼畜めっ!例え冒険者として優秀でもっ!人間としてお前を認めんっ!」

『強化』ブーストっ!」

 カルティスがピエールにバフをかける。

『毒霧』ポイズンミストっ!」


「む」

 ルーザが『毒霧』ポイズンミストを放ち周囲に紫色の霧が立ち込める。視界が覆われ敵が見えなくなる。煙幕代わりか。

「エスペルっ!吸っちゃ駄目ぇっ!」

 私は慌てて口元を覆う。そしてその毒霧を突き抜けピエールが特攻を仕掛けて来る。身体強化されたピエールの刺突は狙い違わずにエスペルの首元へと吸い込まれる。


ガキィンッ!


「!?」

「狙いは悪くない」


 ピエールの剣先が砕けていた。アレは無銘だがそれなりの業物だったはず。


「力が足りないよねぇ」

 エスペルがくつくつと笑う。

「くそっ!!」

 ピエールが毒霧に飛び込む。今気付いたがマスクの様な物をしていた。これも事前に練っていた作戦の一つなのだろう。確かに冒険者としての連携、作戦、チームワークは私とエスペルより遥かに高い。だがそれでも――――


「ヒュオオオオオオオオオオオッ!」

 エスペルには届かない。


「なっ!?」

「嘘ッ!!」

「えっ?」

 エスペルはなんと、『毒霧』ポイズンミストを吸い込み始めた。紫色の毒の霧が全てエスペルの口に吸い込まれていく。


「げっぷ。ゲロマズ〜」

 エスペルは私をお姫様抱っこしたままスタスタと歩く。


「逃げろっ!カルティスっ!ルーザっ!フォーゲイルへ…」

「ぷぅっ!」

「ぐあっ!?」

 女二人を逃がそうとしていたピエールの顔にエスペルが毒霧を吹きかける。顔色を悪くしドサリと倒れるピエール。


「ひっ!嫌っ―――んっ」

 さらに素早く移動したエスペルがカルティスの唇を奪う。毒の口付けをされたカルティスが崩折れる。え?ちょっと…


「や、やめろぉっ!あっ―――」

 さらにさらにルーザを捕まえたエスペルは強引にルーザの唇を奪い毒を経口摂取で服毒させる。…今の別にキスする必要性無いんじゃ…


 私がちょっぴりモヤモヤしてるうちに、エスペルはカーガズンやブマーガを蹴り転がしながら運んで来る。両腕は私で塞がってるからね。

「ぷーっ」

「ぬおおっ…」

「ぐああっ…」

 男二人にも毒霧を吹きかけるエスペル。全員思いっきり『毒霧』ポイズンミストを吸い込んでしまったため、皆体を少し痙攣させている。だが意識は失っていない。エスペルが加減したのだろう。


「それでこれ、なんなん?」

 エスペルは鈍い方ではない。とことん面倒臭がりなだけだ。この5人が危険を承知でエスペルを闇討ちし、私を取り戻そうとした真の理由を察しているのだろう。

 もしもただ単に強引に奪われたパーティーメンバーを奪還するだけならもっと違うやりようもあったはずなのだから。


「ありがとう、エスペル。後は私が自分でケジメをつけるわ」

 私はエスペルのお姫様抱っこから名残り惜しげに降りる。また後でしてもらおう。

 そう言えばふと思い出した。フォーゲイルから逃げ出した時からすっかり忘れてしまっていたが…そろそろ私の輿入れの時期だったはずだ。

 あのままバリュー市からフォーゲイルへ向かう商隊の護衛任務に付き、ピエール達との最期のクエストを完遂する。

 そして国へ帰還したら、私は家族や臣下、仲間達に説得され…本来の王女へと戻るのだ。


「でもごめんなさい」

 世の中の平民の少女達が憧れるプリンセス。

 その実態はそんな良い物じゃない。

 親子程年も離れた男の元に嫁ぎ、実家に金と兵力を引っ張る。その後は世継ぎを産む為のただの道具として生きるだけだ。

 ただ、どうせ道具として生きるのなら…


「性奴隷でも肉便器でもいい。女として見られなくても妻としても母としても幸せになれなくてもいい。道具としてでもいい。ただ…欲しいと思われた男の元に居たい。それってそんなに我儘?」

「く…狂ってる…君は、操ら、れているだけ、だ…」

 ピエールがこちらを見上げて何かを言っている。どうでもいいわ。


「…うーん。便所発言は尊厳踏み躙り的なアレで、本当に受け入れられるのもなぁ…まぁヴェーツェの口一番気持ち良いし…」

 エスペルが少し首を捻りながら私を見ている。


 …成る程。

 エスペルが私を選んで、選んだままな理由は思ったより単純明快だった。


「私の口、気持ち良い?」

 チラリとエスペルの顔色を窺う。

「今んとこ一番。あ、皆には内緒ね?」

 エスペルの他の女達…特に本業のアスパーシャには知られたくないかも知れない。ふふふ。

「本当?」

 ずいっと迫る。エスペルは目線を逸らす。

「今んとこねー」

(いえ、技術面だとプロの娼婦には勝てない。多分…私が生娘で何も知らなかったから。一から自分好みに染められたから特別なんだわ)

 ルピアやフリーシアン等は包容力や経験も私より上であろう。だがエスペルは私を選んだ。


(初めてだったのと、後は相性とかかな?)

 嬉しい。毎日結構頑張っていた甲斐があったと言うものだ。先程は勢いで色々言ってしまったが、女としても妻としても母としても幸せになるつもりだ。これから私は成り上がる。そしてそんな野心的な気持ちもきっとエスペルは解ってるだろう。だが表面的に結婚を迫らなければ私を置いて逃げ出したりしないし、逃がさない。


(性奴隷肉便器から、恋人、妻、母にまで成り上がってやる)

 箱入り王女様では決して求められないし得られない幸福であろう。

「エスペル、愛してる」

「んお、おお…」

 私が抱き着くとエスペルは一応応えてくれる。愛してるとは言ってくれないわね。まぁいいわ。そのうち絶対言わせてやる。


「狂ってる…」

 私と彼がラブラブなイチャイチャをしていると、倒れ伏した偽冒険者がボソリと呟いている。

 ああ、偽冒険者は私もか。


「ごめんなさいね、ピエール。私はフォーゲイルの為に生きるのはごめんよ。邪眼で操られているというならそう思い込んでいなさい。ただ―――」

 私の発言をピエールが苦悶の表情で聞き入っている。


「国同士の政治と駆け引きに操られた王女の一生の方が、私は嫌だわ。フォーゲイルに帰ってそう伝えなさい」

 私の言葉を聞いてピエール…恐らくはフォーゲイルの密偵である偽冒険者は項垂れた。

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