第9話 姉妹どん

「あぐっ!?」

「ごぼっ!?」

「へぎっ!?」

 俺は一瞬で間合いを詰めてリーダー他数人に腹パンする。

 勿論死なない様に手加減した。全員吹っ飛び壁にぶつかりバウンドする。

 あ、失敗。

 一人腹破って内臓まで拳が到達しちゃったよ。まぁ次から気をつけよっか。

「え?は?え?」

 状況が解らずにキョロキョロするベトレイヤの肩にポンと手を置く。


「あー良かった。拐われた妹は居ないんだね?悪党に拐われてたら乱暴されてるだろうし。今の俺にそっちのアフターケアは難しいしさ」

 俺は呆気に取られるベトレイヤを無視して隣の部屋へ向かう事にする。

 ベトレイヤは動けなくなっている。一瞬で仲間達が血の海に沈んだからだ。うん、血の海だね。やっぱりもう何人か死んだかも?まぁどの道殺すから別にいっか。

「魔法って便利だよねぇ」

 俺がすれ違いざまに意味深に囁く。

「ま、魔法使いっ!?」

 ベトレイヤの膝がガクガクと震え出す。魔法使いは生きた決戦兵器。三流の魔法使いは呪文詠唱や魔法陣を介さないと戦えない。

 二流で儀式省略の術式を編み上げ高速戦闘が出来る様になる。

 一流は無詠唱、もしくはトリガーとなる魔法名を以て行使する…だったかな?

 フロイラインの受け売りだよね。フロイラインは騎士であり魔法使いでもある。戦闘特化の火力馬鹿だ。


「い、いつもの…姿は、油断させる…ため?」

 ガタガタ震え出すベトレイヤ。

 

(いやいやむしろあっちのが本性だよ。それに今のは魔法じゃないよ。単なる腕力だよ)

「何だっ!?どうしたっ!?」

 隣の部屋から男達が現れる。あ、コイツら顔知ってるよ。俺だけじゃなく、ルピアやアスパーシャ、エマやパティを馬鹿にしたよね。


「なんっ、このガキ―――」


 先頭の男が何か言う前に俺の拳がそいつの顎を砕く。勢い余って下顎を陥没させ首の骨もへし折り背後へと貫通する。あ、千切れた。

 そいつの頭の上半分がくるくると宙を舞う。血飛沫と脳漿が飛び散る。汚いなぁ。


 こいつらはもしものために控えていた戦力だよね。俺は残りの奴等の足をへし折る事にする。そうか、足を狙えば良かったんだ。

 俺は足の甲を一つ一つ文字通り踏み潰す。片足じゃ不安だから両足イッときますか。


「ぎゃあああああああっ!?」

「痛ぇよぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 大の大人が泣き叫びながら転げ回っている。あまり時間をかけるのは良くないね。コイツらは放置する。

 俺は割れた窓をさらに壊して突き破り、壁を伝って屋根の上に登り立つ。高い場所から周囲の気配を探る。


「居た」

 見張りが何人か居る。

 逃がすと面倒臭い。

 瓦を手に取り次々投擲する。


ギュンッ!ボキャッ!


 うーん、ボール遊びとかあんましてこなかったからな。狙いがイマイチ。

 頭に当たった奴は即死。

 腹を貫いた奴も助からない。腕や足が千切れたのも出血量的に無理かな?あーもう面倒臭いなぁ。


「えいえい」


 俺はさらに追加で瓦を投げ付けて見張り役を全滅させる。頭狙いだぜ。

 うん、これで安心だね。

「あ、女の子も居た」

 最後の一人にトドメを刺そうとして気付く。

 まだ俺とそんなに違わないくらいの女の子が泣いて這いずっている。

 腹から内臓が飛び出しており、もう助からないんだぜ。


「まぁいっか。男女平等イェアー」

 俺はせめてもの慈悲で一撃で仕留めようとする。あ、二撃目か。

 笑顔で送ってあげようと、優しい気持ちで安らかな心で、思いっきり瓦を振りかぶる。


「シュヴェスタッ!逃げてぇっ!」


 窓枠から身を乗り出し叫ぶベトレイヤ。お、逃げてないな。逃がさないけど。


「お願いっ!謝るからっ!なんでもするからっ!お願いっ!妹をっ!シュヴェスタは助けてっ!」

 震えて怯え涙を流しながらベトレイヤが懇願して来る。俺はそんな彼女の姿に―――


「妹居たんかい」


 そう素で突っ込んだ。



☆☆☆☆☆



ボリッボリッボリッ


「ねぇねぇ。やり過ぎだと思ってる?自分達は別に殺そうとまではしてないからやり過ぎだとか思ってる?まぁ最初は噂流すだけだったもんね」


ゴキッゴキッゴキッ


「でもお前らのせいで俺は周りの人間からなめられてる。そこは君達の勝ちだよねオメデトウ。負けた負けた。だからさ、ここでなめられるとずっとなめられる。ルピアにもロメロンにも迷惑がかかる。そんな面倒臭くて嫌な事は嫌だ。面倒臭くなるから目立たなくしてたのにどうしてくれるのさ」


グチュッグチュッグチュッ


「ん?まだこの状況が不満?だってお前ら俺をハメようとしたじゃん。まぁ俺はベトレイヤを目一杯ハメたけど。ああ、別に君達が一線を越えた訳ではないよ?醜聞を広めようとするのも別に俺にとっての地雷じゃない。ルピアやロメロンに迷惑はかかるって言ったけど、あの二人はそんな事で俺を放りだしたりしないさ。それに俺の醜聞を広めるより、ルピアとロメロンの悪口の方がムカついたかな?こんな俺でも他人のために苛つける事に驚いた。新発見だよ」


モギュッモギュッモギュッ


「じゃぁ、それが理由―――な訳ないじゃん。頭悪いなぁ、まだ解らない?君達がわざわざ死地に飛び込んだんじゃないか。俺を相手にこんな人数で挑むなんてどうかしてる。市内で俺を小馬鹿にして遊んでれば良かったのにね。流石に不特定多数の人間が周囲に居たら殺し難いもの。解る?君達が死ぬ理由。周囲の目が完全に無い場所で、俺と相対したからさ。だから殺されても文句は言わないでね。恨むなら雇い主にしてね」


ギュチッギュチッギュチッ


「あれ?泣いてるの?痛いの?悲しいの?どっちなの?お前達のせいで命を絶った者も居るだろう?破滅して路頭に迷い、首をくくったり、娼館に身を売ったりした者も居るだろう?さっきのアジトで殺してこんな風に始末した者も居るだろう?ああ、ああ。勘違いすんなよ?責めてる訳じゃぁない。順番が回って来ただけだろ?なんていうか、人の心なんか俺達にはもうないんだぜって面してたよね。それなら折角だから楽しもうよ。人の情緒って奴を。最期なんだし」


ゴクン…ベロッ…


 俺をハメてた連中は皆仲良くモンスターに食べて貰いました。命乞いしてた様なしてなかった様な。リーダーは最期まで俺を睨み付けながら事切れた。カッコいいよね。


「こ、こんなに…モンスター、呼び寄せて…どう、するのよ…」

 ベトレイヤはシュヴェスタの体を抱いて震えている。シュヴェスタの腹にはベトレイヤの上着が巻かれている。まだ息はあるが内臓はみ出てるし秒読みだよね。

 ちなみに今は山の中。旧市街から直接モンスターが出る山に出れちゃうんだ。そりゃ市民寄り付ねーよ。


「グルルルルル」

「フシューッフシューッ」

「ハッハッハッハッハッハッ!」


 男達を生死問わず貪り食ったモンスターが食欲の矛先を変えて俺達三人を取り囲む。狼っぽいモンスターだよね。ただ目玉は顔にたくさん付いててギョロギョロと周囲を警戒してる。

 イビルアイウルフだっけな?違ったかな?目を合わせても別に変な効果ないし。確か格下の生物は目を見ると萎縮して動かなくなるんだっけ?じゃぁ俺だと解らないか。

 

「ガアアアアアウッ!」


 イビルアイウルフの群れが俺達に飛び掛かって来る。動けない男達の次は、怪我をして死にそうなシュヴェスタから狙って行く。

「ひぃっ!」

 ベトレイヤは妹に覆い被さる。ああ、美しき姉妹愛。悪の道に進んでも身内は守る悪党の美学か。

 泣けるねぇ。


ボチュッ!


 俺が無造作に振るった手がイビルアイウルフの頭をもぎ取る。もぎっとね。


「!?」

 ベトレイヤや他のイビルアイウルフが驚愕で固まる。なんだよ?俺ってそんなに弱そう?まぁそう見えたから馬鹿共やモンスターも近付いてくれたんだろうけど。


「ていてい」


 俺は近くに居た個体から狙って首をもぎ取る。コイツらモンスターってだけあってデカイな。牛サイズだな。

「おおっ?」

 突然体の動きが遅くなる。変な感覚だ。コレが邪視か。

 イビルアイウルフ達は俺を強敵と認識したらしい。完全に逃げ腰だ。だが獲物も諦めるつもりも無いらしい。


「きゃああああああああああああっ!?」


 俺が離れた隙を突いてベトレイヤの腕が食いちぎられる。ありゃりゃ。

 うーん、強いね。バリュー市の周辺に出るモンスターは、カドイナ村やクーユフ町辺りのモンスターより手強いよね。

「はははっ!」

 俺は堪らずに笑い出す。


「手ぇ出すな馬鹿がっ!そいつらは俺の女だっ!」


 気合いを入れたら体が動いたよ。やったー。


「ギャンッ!」

 俺が横っ面を殴り付けるとイビルアイウルフの首が吹き飛ぶ。

「いいねっ!素早いっ!ゴブリンオークと違うなっ!犬っころっ!」

 簡単に拳を当ててる様だがそうじゃない。一応一発殴った時に複数仕留められる様に動いてるのに、反応が早くて一発一匹しか仕留められない。面倒臭いよね。


「む?判断が早い」


 ベトレイヤシュヴェスタ姉妹を守る様に立ち回っていたら、男達の体の残りを咥えて逃走し始めた。

「鏖殺しそびれたな」

 俺は諦めて姉妹の元に行く。


「ひゅーっ、ひゅーっ…化け、物…」

 ベトレイヤが俺を見上げて震えながら呟いている。出血多量で死んじゃうだろコレ。

「ちょっと待っててなー」

 俺はベトレイヤを横にずらし、虫の息のシュヴェスタの衣服を脱がす。

「や、やめ…ろ…」

 力無く妹に手を伸ばす姉の目の前で、シュヴェスタの発展途上の体を味わう。

「お姉ちゃんと違ってまだまだだね…お?初めてかね?」

 血の付いた俺の物を見て俺が笑う。

「う…お姉ちゃ…ん」

 シュヴェスタもベトレイヤに手を伸ばしている。

「こっち見ろよ」

 俺はシュヴェスタの唇を奪う。血を失い過ぎてもう感覚は無いかもな?処女喪失の痛みより内臓損傷のが痛いだろ。

「まぁ待ってなって」

 俺は意識を集中する。

 魔法は使った事が無い。

 ただ見た事はある。

 フロイラインをボコってた時、あいつ自分で回復魔法かけてたからな。

 俺は一度も使った事が無いが、思い出しながら使ってみる。多分出来るだろ。


「体の中から、広がるイメージで―――」

 自己治癒力を高めるとかそう言った類ではなかった。まるで時間が巻き戻るように怪我が無かった事になっていた。アレが回復魔法。

 ならば―――


「行くぞっ!」

「あっ…ああっ…あんっ」

 腸をはみ出させ下半身が破瓜の血なのかなんなのか解らない血で真っ赤になってるシュヴェスタを犯す。

「受け入れろ。死にたくなければ」

 俺がそのまま達すると、シュヴェスタも応える様に俺を求めてくる。


「お?成功かな?」

 体を密着して余韻を楽しんでいると、シュヴェスタの腹の傷が修復を始める。

「自己回復魔法の拡張術式、成功」


 仮定に仮定を重ねた適当理論だが上手くいった。俺には多分、強力な魔力がある。それにより肉体も頑健だ。本来なら回復魔法自体必要としないだろう。

 シュヴェスタと物理的に一つに成る事でシュヴェスタも肉体の一部と認識させてから、回復魔法を自分にかけてみたのだ。

 それにより、余剰効果でシュヴェスタの肉体も修復出来た。

「治って良かったね。死ななくて。俺死姦趣味じゃないし」


「シュヴェスタ…」

 驚きで目を丸くしたベトレイヤが妹を見つめている。シュヴェスタは流石に疲労で気を失った様で目を瞑り浅い呼吸をしている。

 しかしその顔には死相は見当たらない。峠は越えた。

「…良かっ…た」

 ホッとした様子のベトレイヤの衣服を俺が脱がしにかかる。

「な、何を、する…」

 ベトレイヤが俺から逃げようと藻掻く。

「ナニをするんだよ。腕生やしてやるから」

 もう何度も抱いてるはずなのに逃げようとするのはこれ如何に?

 まぁ俺の戦闘と死体処理方法を目の当たりにしたからだろうけど。


「下手くそだって言ってたな?傷ついちゃったぜ?」

「ひっ…やめ、やめて…」

 俺がニヤニヤと笑うとベトレイヤが恐怖で青褪めている。

「図らずも、妹ちゃんのお陰で回復魔法が使える事が解った。俺怪我しないから試しようなかったし。他人に使うの、ちょっとイメージ出来なかったしね」

「いああっ!?」

 ベトレイヤの腕の切断面に指を食い込ませる。神経や血管をグチグチブチブチと弄ぶ。


「脳味噌は治せるか解んないから勘弁してあげるよ」

 俺はベトレイヤの無事な方の腕を掴み―――

「確か妹を助ける代わりに…なんでもするって、言ったよな?」


「あぎゃあああああああああああああああああっ!!!」


 力任せに引き千切った。

 その後は二人の離れてしまった心を元通りにするために肌を重ねたさ。

 達磨女をヤるのは初めてだったけど、原状復帰出来るのが解ってると気楽だよねぇ。

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