ベアナックル!無責任勇者のヤリ逃げクエスト
猫屋犬彦
第1話 ど田舎村の少年エスペル
「エスペルー」
川辺で佇んでいると名前を呼ばれたので振り返る。そこには幼馴染の女の子が居た。
「ホーミィ」
「どこにいってたの?しんぱいしたんだよー?」
目に涙を溜めているホーミィ。なんて可愛いんだろう。
「ホーミィ、目をつむって」
「なーにー?」
ホーミィは不思議そうにしながらも素直に従う。そんな彼女の頭に、隠してた物を被せてあげる。
「もういいよ」
そう言うと目を開けるホーミィ。
「え?あたまに…なにかある?」
まだ不思議そうにしているホーミィの手を引き川辺に近付く。
川面を覗き込んだホーミィは、自身の頭に花冠が乗っかっているのを見つける。
「わぁっ、ありがとうっ!エスペルだいすきっ!ちゅっ」
ホーミィが抱きついてきてほっぺにチュゥしてくれる。彼女の柔らかい唇の感触が愛おしい。
「ぼくもホーミィがだいすきさっ!」
二人手を繋ぎながら家路を歩く。
「エスペル。しょーらいけっこんしよーね」
「うんっ!やくそくだよっ!」
二人で顔を真っ赤にしながら繋いだ手をさらにギュッと強く握る。
そうして彼女を村長の家まで送り、自分の家へと向かう。
病気がちな母のために明日はまた手伝いだ。冬支度の為の薪割りをする。他の村人の分も薪を割り、それを配る事で食べ物を分けて貰っている。
まだ子供なので薪割りくらいしか出来ないが、もう少し大きくなったら狩りにでも行こう。兎や鳥を仕留めれば母に肉を食べさせてあげられる。
だがそれも微々たるものだ。お金が欲しい。稼ぎたい。薬を買いたい。
「早く稼げるようになって、母さんを楽にしてあげるんだ。ホーミィとも、ちゃんと結婚するんだっ!」
この時のエスペル少年は確かに希望に満ち溢れていた。大きくなればお金を稼げるし、母の病気もきっと良くなる。可愛くて大好きな幼馴染の女の子とも結婚出来る。
…そう思っていた時期も、ありました。
☆☆☆☆☆
「私に近寄らないで下さるかしら?臭うので…」
俺を見るホーミィの目線は侮蔑が籠もっている。
「へいへーい」
俺は嫌な奴に会ってしまったなと思いつつ道を開ける。
時が経ち、結婚の約束までした仲良しな幼馴染二人は、身分を弁えた関係になりましたとさ、とほほ。
(まぁ仕方無ぇか)
ホーミィはあれからさらに美しく成長し、このカドイナ村だけじゃなく近隣の村々では敵う者の居ない美少女に成長していた。
素養はあったが、村長の娘ってのが大きいかな?畑仕事で手荒れが酷いって事も無いし。贅沢とまではいかないだろうが、毎日栄養のある物をしっかり食べて、暖かい布団でぐっすりと眠れる。故に肌艶も良くて健康的。髪の毛も豊かでサラサラだ。
そして何より胸と尻がしっかりと成長してる。
「今度私、とある高貴なお方との縁談が決まりましたの」
歩き去ろうとした俺に珍しく話しかけてくるホーミィ。
「そうかい」
「うふふ。知りたいですか?」
振り返るとほくほく顔のホーミィが居る。訊いてもいないし聴きたくもないのに勝手に喋ってくる幼馴染。
なんでも、こないだ町で出会って一目惚れされたらしい。近隣の村長達の会議がクーユフ町で行われた時だな。
そのクーユフ町の町長は近隣の村々を治めるお貴族様でもある。その時、各村長達は付き添いとして実の娘や村一番の美少女を連れて集まったんだと。
会議は建前で、次男坊の嫁探しのための召集だったらしい。それで居並ぶ美少女達の中から我等がホーミィちゃんが選ばれたんだとよ。良かったね。
「ヨカッタネ〜オメデトウ」
俺が半笑いしながらカタコトで祝うと、ホーミィ様はご機嫌になる。
「あら、ありがとう」
ホーミィはご機嫌のまま去って行く。
(このアマ。犯したろか?)
護衛も連れずぷらぷら歩いてるのは、自分がこの村で最高権力者であり、誰も逆らえないと信じ切ってるからだ。
(バカだな。今の俺ならすぐに押し倒せる。守るもんも何も無いんだぜ?)
ま、やらないけどね。
こんな女のために犯罪者になる気は起きないぜ。
「はぁ…」
仕事帰りだったのが災いした。こんな嫌な気分で帰宅するハメになるとはね。
とこぞの貴族のボンボンに、結婚の約束までした幼馴染を寝取られる。
(こんな惨めな話、あるかよ?)
俺は失意のどん底…まではいかないが、多少は落ち込みながら自宅に辿り着く。
村長の屋敷と比べたら掘っ立て小屋みたいなもんだろうぜ。
「ただいま。…まぁ、本当のどん底はもう体験したしね」
俺は誰も居ない家の中で独りごちる。
母さんは死んでる。
流行り病でポックリ逝った。
父親はそもそも居ないし知らない。死ぬ間際にも母は何も語らなかった。
母が死んだ時は絶望したし嘆き哀しんだ。ただもっと気落ちする事はあったよね。
その頃、丁度父親に何か言われたのかな?ホーミィの態度が素っ気無くなっていった。母さんとも楽しそうにお喋りしてた事もあったのに、葬式にも来なかったしな。
燃やした遺骨遺灰は共同墓地の中に撒いた。
「はぁ、明日も仕事だ。もう寝よう」
畑も持たない俺は日雇いの力仕事しか出来なかった。幸い体は頑丈で力はあったからな。
俺はせめて良い夢を見れる様に願って目を閉じた。
☆☆☆☆☆
いよいよ幼馴染が連れ去られる時がやって来た。
まぁ俺の物じゃないから別に連れ去られるも何も無いけどな。
「幸せになってなー」
「おめでとうー」
これが親に無理矢理売り飛ばされるみたいな感じなら助けるついでに奪って駆け落ちとか出来るけど、ホーミィはノリノリだもんなぁ。
村人達も大喜びだ。この辺の村々を束ねるクーユフ町の長の家に嫁げるんだ。次男坊だけど。
俺の付け入る隙なんか無い。
「ありがとう、皆さん。私、幸せになります」
花嫁衣裳のホーミィが涙ぐんでいる。泣きたいのは俺なんですけどねぇ。
「ああ、ホーミィは必ず僕が幸せにするよ」
ホーミィの結婚相手である貴族のボンボンはキラキラしていた。
顔は良い、あと肌と髪が良いな。勿論服も良い。
やはり良い物たらふく食えてる奴は羨ましいぜチクショー。
「でも大丈夫かい?山道はモンスターも出るし…」
村人の一人が心配する。
ホーミィの輿入れは馬車が何台かだな。確かに馬車に対して護衛の数が少ないかも?
今朝方あの貴族のボンボンは馬車一台でやって来た。今増えてるのはカドイナ村の馬車である。中身は結納品と嫁入り道具かな?後は献上品とか。
そして護衛は馬四頭分の騎士四人。来た時の馬車一台分だな。残念ながらうちの村からは護衛に出せるような戦士は居ない。ボンボンの護衛達で馬車全てをカバーするしかないのだろう。
「皆よ。心配は要らぬ。ナキリーン殿は武勇にも優れているのだ」
義理の息子を自慢する様に村長が笑う。彼とホーミィだけがクーユフ町に行く様だ。そういえば村長はホーミィは強い男と結婚させたいとか言ってたな。
「ふふふ。ゴブリンみたいな雑魚やオークみたいな豚が襲って来ても僕が倒してやるとも」
ナキリーンが白い歯をキラリと光らせて笑う。歯並びも良いなアイツ。
「もしもドラゴンが襲って来てもっ!君の事は命に替えても守り抜くさっ!ホーミィっ!」
「ああっ!素敵よナキリーン様っ!」
ナキリーンは腰にある綺羅びやかな剣をガチャリと鳴らす。
「おおおおおお〜〜〜…」
感嘆の声を上げる村人一同。
俺に武器の良し悪しなんて解らんけど、金が掛かってそうな装飾だなぁとは思う。
「…さて、仕事すっかぁ…。いつまで見てても仕方無いからなぁ…」
俺は今日も肉体労働に精を出す事にする。喝采を上げる村人達と、それに応える若き恋人達。それらの光景を振り切る様にして歩き出す。自然、足は早足となった。
耳を塞ぐのは堪えた。そこまで俺は傷付いていない。平気なんだ、俺は。
☆☆☆☆☆
「ほら、気持ち良いかぁ?」
俺は村長宅の厩舎に居る馬達の世話をしてやっていた。輿入れ用の馬車でほとんど連れて行かれたけど、村長宅にはまだ馬が何頭か居た。居残りさせられた馬達は仲間が居なくて寂しいのか不安そうだ。
「お前は確か一番足が速かったな。けど今回はパワーが必要だから置いてかれたんだな。よしよし、仲間達はホーミィを嫁がせたら帰って来るって…」
…言ってて虚しくなるなコレ。置いてかれて寂し気な馬と同調する。こいつは足は速いがパワーは足りない。馬車馬と言うか、乗馬用だな。
馬と傷の舐め合いをしてる俺に話しかけてくる人影がある。
「エスペルさん。ご飯ありますからね。その、残り物ですけど…」
村長宅で住み込みで働いてるメイドのシェリーがこっそりやって来た様だ。
「ありがとうシェリー。いつも悪いな」
「い、いえいえっ!エスペルさんには、いつも助けて貰ってますから…」
はにかんだ様に笑うシェリー。彼女は小柄で非力なので、良く力仕事を手伝ってあげたりしていた。
(シェリーもいいな、可愛いし。優しいし)
ホーミィみたいな華やかさはないが、素朴な感じがして好感が持てる。胸や尻も控えめだけど、まだ幼いから将来に期待である。何より俺に優しい。
てゆーか当たり強いのホーミィだけなんだよな?村長だって俺にこうやって仕事くれるしよ。
…なんであんなに嫌われたんじゃろか?まぁもうどーでもいっか。
「こっちこそ助かってるよシェリー。んじゃ、早く仕事終わらせますかっ!」
俺は張り切って馬糞を捨てて、飼い葉や水を与える。ホーミィが嫁いだ事への傷心を、シェリーと食べるご飯タイムで癒そうと決心する。
そんな、時だった。
「モンスターだぁあああああっ!」
一人の騎士が叫びながら駆け込んで来た。あの鎧、見覚えがある。クーユフ町のナキリーンの連れてた護衛…え?どういう事?モンスター?
「ナキリーン様の馬車がモンスターに襲われたっ!誰かっ!戦える者は居ないかっ!輿入れの馬車隊が襲われたっ!頼むっ!相手はゴブリンとオークだが…数が、数が多いんだっ!助太刀してくれっ!このままでは―――っ!」
乗っている馬と共に崩れ落ちる騎士。山道を相当に飛ばしてきたのだろう。クーユフ町でなくカドイナ村に来たって事は、襲撃地点はこちらに近いんだろう。判断は悪くない。
ただ…
「モ、モンスターだって…!?」
「そんなの…」
「ワシらじゃぁどうにも…」
村長宅の使用人達は顔を見合わせている。
そう、この村に戦える者は、居ない。
若い者、体力のある者は居る。だが武器を持った護衛騎士が助けを求めて逃げ出してくる様な相手と戦える様な人材は居ない。
「………」
当然、俺も行かないさ。
だってそうだろ?
あの女は俺を捨てたんだぜ?
「あ、おい、エスペルっ!?」
幼馴染の俺との約束なんて無かった事にして…
「バカっ!お前が行ったって―――」
母さんの葬式にも、墓参りにも来なかった―――
「お前まで死ぬなっ!行くなっ!」
最低女―――
「エスペルさんっ!だめぇっ!行かないでぇっ!」
は?なんで俺が救けになんて―――
『わたしがあぶないとき、かけつけてきてね?エスペルはわたしの、おうじさまだもん』
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
気付けば俺は、村長の馬の中で一番の駿馬に跨り、駆け出していた。
☆☆☆☆☆
「きゃああああああああああっ!」
「ん!?ホーミィかっ!」
幼馴染の悲鳴が聴こえた気がした。悲鳴が聴こえるって事はまだ生きてるって事だな。
耳を澄ますと、馬の嘶き、人の悲鳴、耳障りな鳴き声、肉を潰す湿った音が聴こえる。
「ホーミィィィッ!無事かぁあああああっ!?」
俺は馬を乗り捨てて走る。無茶な走らせ方をした馬はへばっていた。普通に走らせるだけならまだ大丈夫だろうけど、モンスターとの戦闘には無理だ。
訓練された軍馬じゃない。恐怖で暴れて振り落とされる。
「ったくっ!お貴族様はどうしたんだよっ!ゴブリンやオークは倒してくれんじゃねぇのかよっ!?」
俺は走りながらホーミィを探す。嫁入り道具や献上品を載せた馬車が横転しており、ゴブリンやオークが中を漁っていた。
死体も見える。くそっ!
誰がゴブリンは雑魚なんて言った?
誰がオークなんてただの豚だって言った?
ドクンドクンと心臓が脈打つ。
魔王軍…いや、アイツらは単なる野良モンスターで魔王軍でもなんでもねぇ。
だが――――――怖い。
ゴブリン達は護衛騎士や付き人の死体をぐちゃぐちゃに刺している。もうとっくに死んでるって。
オークは殺した馬を齧りながらこっちを見て来る。
また新しい獲物が来た。そんな感じなんだろうな。余裕があるよ畜生っ!
そのまま見ないふりして走る俺。
「ホーミィ…」
そしてすぐに目当ての人物を見つけた。
しかし、俺の体は動かない。立ち止まる。
…何故なら
「!?エスペルッ!救けてっ!お願い救けてぇっ!!!」
今朝なんてまるで無視してたくせに都合良く俺に救けを求めるクソ女。目が一瞬合ったの解ってんだぞ?
「エスペルかっ!頼むっ!私が時間を稼ぐっ!娘だけでもっ!」
色々思う事もあるが、俺に仕事を回してくれる村長さんが叫んでる。厳しいけど優しい人だよ。
「いや無理だろ」
二人は無事だった。三人の護衛騎士や、輿入れの馬車隊についてきてた村人達が頑張ってくれたんだろう。彼等二人は唯一の生存者なのだろう。モンスターに囲まれつつあるが、まだ生存してる。怪我もしていないっぽい。
「無理だって」
何匹?百は居ないよな?居てくれるなよ?
「何してるのっ!早く救けなさいよぉっ!?」
ホーミィと村長の周りには…ゴブリンオークゴブリンオークゴブリンオークゴブリンゴブリンゴブリンオークオークゴブリンゴブリンゴブリンゴブリンオークゴブリンオークオークゴブリンゴブリンゴブリンゴブリンオークゴブリンオークゴブリン………―――
馬車が通れるとはいえそんな大して広くもない山道に、モンスター共が溢れかえっていた。
(なんだコレ?スタンピードってやつか?)
あのボンボン騎士の姿は見えない。殺られたのか?そりゃそうだ。こんな数、絶対無理だ。
俺は近くにあった剣を拾う。
「無理だ、逃げよう」
あのボンボン騎士の持ってた剣だった。そうか、死んだか。ざまぁみろ。
「村長さんには恩があるが、命を懸けるほどじゃないしな」
俺は走り出す。俺に気付いたゴブリン達が、血の付いた錆びた刃物を構える。刃毀れが酷いな。打ち直してやろうか?俺、鍛冶も少し齧ってるからな?それで手打ちにしてくれんかね?ああ、無理か。
「何よりホーミィは俺を裏切った」
俺の振るう剣がゴブリンの横っ面に突き刺さる。
「俺を裏切ったんだよっ」
ゴブリンの頭を剣が通り過ぎる。ゴブリンの頭が舞う。たくさん舞う。
「ん?」
どうやらそのまま数体まとめて斬り捨てたらしい。
「あ、コレもしかして魔法の剣とか、かな?」
オークが棍棒と言うか、ただの木の塊を振り下ろしてくる。アレ食らったら痛そうだな。直ぐ側の死体、頭無いのはそれのせいかぁ…
ザクッ
俺の振るう剣が棍棒を持つ腕ごとオークを斬り伏せる。どうやら本当に魔法の剣らしいな。よし、これで逃げよう。もう逃げよう。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない………―――
「うおわああああひゃあああっはぁあああっ!?」
その情けない裏返った絶叫が自分の喉から放たれてる事に俺が気付いた時、俺の持つ剣はすでに折れていた。
「魔法の剣がっ!?」
ヤバイ。死ぬ―――
俺は今度こそ二人を見捨てて逃げる事を決める。
逃げたい。嫌な事から全部逃げ出したい。父親が居ない事から逃げたい。病気がちな母親から逃げたい。そんな母親が死んでホッとしてる自分から逃げたい。貧乏から逃げたい。貧乏だからってバカにされる事とか哀れまれる事から逃げたい。肉体労働から逃げたい。疲れるんだよ、楽して稼ぎたいよ。シェリーの好意が怖くて逃げたい。誰かを好きになるのから逃げたい。ホーミィから逃げたい。知ってるよホーミィっ!本当は俺が、お前を、身分違いだからって諦めるのがもどかしくて泣きそうな顔して俺を詰るお前が怖かった逃げたいっ!
「逃げるんだっ!邪魔すんなぁああああああっ!」
俺が叫びながら邪魔をするモンスターを殴る。俺の素人丸出しの拳がオークの腹に突き刺さり、背骨と内臓を背中から撒き散らす。
あれ?オークって弱い?
そこでふと気付いた。血だらけだった。痛くない?返り血?
「ギュアッ!ギュイイイイッ!」
「ブギィィィィィィィッ!」
なんかデカイゴブリンとデカイオークが吠えてる。なんだアイツ、偉そうだな。武器だけじゃなくて鎧も装備してる。偉そうだ、生意気だ。でも大丈夫、俺には魔法の剣があるんだっ!
俺は魔法の剣を持ってたはずの手でその二匹を殴る。剣がある。俺には魔法の剣があるんだっ!
☆☆☆☆☆
「―――…ペル…エスペルッ!もういいっ!もういいからっ!」
「はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!はぁっ!」
殺す。
俺の逃げるのを邪魔するのは殺す。
「ぁりがとう…ほんとぉに…」
ガタガタ震えてるホーミィの体は柔らかい。
ああ、おっぱいやわらけーな。
「ん?」
ホーミィの体の柔らかさで急に頭がクリアになる。
「ん?」
周りを見ると、血とか凄かった。目の前には、さっきのデカイゴブリンとデカイオークが倒れてる。多分。
ぐっちゃぐっちゃで、原型留めてないけど、多分それだな。うん。
「あ」
ふと思い出した。母さんの最後の言葉…
『エスペル…あなた、は…人と喧嘩しちゃ、だめ、よ?』
それは他人と揉めたら酷い目に遭うとか、他人と上手く折り合いを付けられない奴は孤立するとか、そう言った意味だとずっと思ってた。
けどあの遺言を聞いてから…いや、生前の母からもコンコンと言われ続けてたな。人と喧嘩はしては駄目と。そういやそのせいか俺、友達と殴り合いの喧嘩した事無かったなぁ。
「ごめんなさぃ…ぃままで、ごめん、なさぃ……」
泣きながら俺に縋り付いてくるホーミィの豊満な肉体に特に何も感じず、俺は自身の肉体を見下ろす。掌を閉じたり開いたりしてみる。
「あー………もしかして…」
俺は気付く。
「モンスターって、弱い?」
「いや、違うじゃろ…」
茫然としつつも冷静に突っ込んで来る村長。
俺は目の前のよく解らない状況から、一刻も早く逃げ出したくて仕方無かった。
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