第55話 街道キャラバン
「湖、見えてるのに全然たどり着かないにゃ……」
「めちゃめちゃ大きいんだろうな」
ハイドラ湖にあるシグレという街を目標にカマドを出発したオレとクロム、そしてチユの三人。
途中、ちょ~っと魔物(?)に襲われるアクシデントなどもあったが、それからは順調に街道を進んでいた。
……順調ではあるんだけど、そもそもハイドラ湖まではかなり距離があるので歩いても歩いても湖にたどり着かず、まるで蜃気楼を見ているようだった。
「そろそろ日が暮れそうだな……野宿の準備をした方が良いかもしれない」
「そうだにゃあ……あれ? ホムラ、あそこに馬車がたくさん停まってるにゃ」
「本当だ。商業ギルドの連中か?」
湖へ向かう街道脇に数台の大きな幌馬車が停まっていた。
馬車の近くに設置された焚き火で料理を作っている人や、露店で魔道具などを売っている商人らしき人たちがいるのも確認できる。
「……あれは、街道キャラバン」
「キャラバン?」
「……商業ギルドのクラン」
チユの説明によると、『街道キャラバン』は商業ギルドのクランのひとつで、街と街を繋ぐ街道で商売や宿を営む商人たちの集まりらしい。
かなりの商人を抱える大手のクランで、全国各地の街道をほぼ網羅しているんだとか。
ちなみにダンジョン内部やその周辺には『ダンジョン旅団』というまた別の大手クランが幅を利かせているとのこと。
「やっぱチユは先輩冒険者なだけあって色々と詳しいな」
「……ちー、役に立った?」
「めちゃめちゃ役に立ってるよ」
「ホムラ、クロは? クロは役に立ってるにゃ?」
「クロムも……」
…………。
「ジャンプ力とかすごいし、木登りも上手いよな」
「そんな小学生みたいな褒め方じゃ喜ばないにゃ!」
―― ――
「おお、結構賑わってるな」
せっかくなので街道キャラバンに寄ってみることにしたオレたちは、馬車の周りに展開している色々なお店を見て回る。
「らっしゃいらっしゃい! ハイドラ湖で獲れた新鮮な魚の干物だよ~!」
「新鮮なのに干物なのか」
「……この辺は、まだハイドラ湖から遠いから。生魚は難しい」
「なるほどな」
一応、遠くの海や湖で獲れた魚を魔法などで凍らせたり、生け簀用の水槽を積んだ馬車を使って別の街へ運んだりすることもあるらしいが、どうしても値段が高くなってしまう為、干物や塩漬けなんかの日持ちするような加工をして売っている店が多い。
「ハイドラトラウトの干物、くーださいにゃ!」
「まいど! ネコの嬢ちゃん、可愛いからサービスだ!」
「ありがとにゃ~!」
クロムがいつの間にか屋台で魚の干物を買っていた。
やっぱ元が猫だし、今もネコネコ族だしで魚が好きなんだろうか。
「いっぱいおまけして貰っちゃったにゃ!」
「……お魚、いっぱい」
「むしろおまけの方が多くねえか? オレ、買い物しておまけなんて貰ったことねえぞ」
いや、一回あるな……毒消し用のポーションを買いにいったら店主の魔女みたいなお姉さんに『お代はいらないから、ちょ~っとお姉さんとイイコトしましょ』って言われたことが。
もちろん普通に金を払って急いで立ち去った。
「ホムラ、どうかにゃ? クロ、役に立ってるかにゃ?」
「ああ、めちゃめちゃ役に立ってるよ」
「えっへへ~!」
「ぐへへへへ……お嬢ちゃん、可愛いね~。ハーフエルフかな? お菓子あげるからおじさんと一緒にあっちの宿馬車で食べよっか」
「……クロム、ホムラ。ちーも、おまけもらった」
「そいつは違うにゃ!!」
「おいオッサンなにしてんだ!!」
街の外には危険がいっぱい!
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