第36話 運命の人
「ク、クロムちゃん? ホムラくんが運命の人ってどういうことかな?」
「それは……秘密にゃ」
「ホムラくん?」
「いやオレも知らねえよ……」
そういえばこいつ、何故かオレの前世の名前知ってんだよな……一体どういうことなんだろう。
「おいクロム、お前……」
「……今夜クロの部屋に来てほしいにゃ」
「えっ?」
「さあホムラくん! ハンシンのことをギルドに報告するために早く街へ戻るにゃ!」
「あっちょっと待ちなさいよクロムちゃん! 私の話はまだ……」
こっそり耳打ちしたと思ったら、抱き着いていたオレの右腕から離れて一人で山を下っていくクロム。
さすがネコネコ族、非常に身軽な動きだ。
「もう、なんなのよあの子……ホムラくん、さっき何言われたの?」
「えっ? いや別に、助けた礼を言われただけだが」
「ふーん?」
なんとなくアムラには言わない方が良いと思ってとっさに誤魔化してしまった。
っていうかアムラがめっちゃこっちを覗き込んでくるんだけど。圧すご。
「まあ良いか。クロムちゃんもホムラくんも無事だったし、ヴォルケイムマッシュルームも採れたし」
下山しながらアムラの元々の目的であった食材採取も達成。
アムラが両脇にひとつずつ抱え、背中にも一番大きなヴォルケイムマッシュルームを紐で括って背負っている。
オレも持とうとしたんだけど『魔物が襲ってきた時のために手ぶらでいてほしい』と言われたのでとりあえず戦闘態勢をいつでも取れるようにしている。
それにしてもでかいなこのキノコ。
「なんか、赤ちゃん背負ってるみたいだな……」
「あはは、おっきいでしょ~。ほ~ら、パパでちゅよ~」
「誰がパパか」
たったったったった……
「ホムラを勝手にパパにしないでにゃ!」
「なんで戻ってきたん君」
―― ――
「おーいクロム、来たぞー」
街へ戻り、取り急ぎギルド会館へヴォルケイム火山地帯での魔王軍手下の襲撃と討伐の報告をしてから、アムラの自宅であり、オレとクロムが泊っている温泉宿・四万屋へと戻って来た。
夜になったので言われた通りクロムの部屋を訪れることに。
ちなみに夕飯で今日採ったヴォルケイムマッシュルームのバター焼きを食べたんだけど、肉厚でめちゃめちゃ美味かった。
あれは危険を冒してまで採りに行く価値があるな。
「あっホムラ! どうぞ入ってにゃん!」
「おじゃましまーす……って、随分散らかってるなおい」
「ごちゃっとしてる方が落ち着くにゃん」
クロムの部屋は服や物がそこら中に散らかっていてベッドの上も毛布がぐちゃっとしていた。
ただゴミなどは落ちていないので、本当に雑多な感じが落ち着くのかもしれない。
ネコネコ族の習性なんだろうか?
「それでクロム。山で言ってたオレが運命の人っていうのはどういう……」
「ホムラ~!!」
「うわっ!!」
部屋に入って扉を閉めた途端にクロムが飛びついてきて、そのままドサッとベッドに押し倒される。
「な、なんだよクロム? 急に飛びかかって来るなよ危ないぞ」
「ホムラ、会いたかったにゃ~!! ずっとずっと会いたかったんだにゃ~!!」
感極まったのか、ものすごい力で抱き着いてくるクロム。
な、なんだ? ずっと会いたかったって……オレ、この世界に転生してから地上に出てきたばかりだぞ?
「ク、クロム。ちょっと、どういうことか全然分かんねえんだけど……」
「ホムラ……いや、桃山焔くん!!」
「は、はい?」
クロムに前世でのフルネームを呼ばれる。
そうだ、こいつオレの苗字知ってるんだった……一体どうして……
「桃山焔くん、クロを殺そうとした男から助けてくれてありがとう。クロは、前世でホムラに助けてもらった野良猫にゃ!」
…………。
「えっ!?」
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