ナオキ
伊藤深
短編小説 ナオキ
福岡のある町に1人の男が住んでおりました。
彼の名はナオキといい彼はとにもかくにも顔立ちは良いのですがお金はなくその日暮らしをしていました。
彼の20中頃を知る人からすれば凄まじい変わり様で中肉で無精髭の40中頃に見える中年男性の様な見た目でした。
彼はその日暮らしのためガマ口の財布の中には小銭と何度も折った札が数枚入っているだけでした。
築50年近く経つ木造戸建てに住んでおり夕飯を買うため最低限の小銭を握りしめ玄関に向かい外へ出ました。
玄関を出て数歩進んだ時でした。
品のある更年の男がナオキに近づき
「ここに君が見たこともないであろう金額のお金が入っている。自分の欲を満たすのではなく、このお金を人の為に使いなさい。然れば君に徳の積める経験ができるであろう」
ナオキは戸惑いました。見ず知らずの男が近づいて来るなり大金を授けることに。
「お金は頂けません。」
ナオキがそう言うと男は食い気味に言いました。
「何故、このお金は貰えないと。」
ナオキは経験したことを男に話しました。
「お金がある時は人は近づいてきて無くなれば離れていく。この経験を何度か味わって分かったのです。お金は人を幸せにもするし不幸にもする事を。私が子供の頃、兄が読み聞かせてくれた本の通りになったからです。」
ナオキの話に男は頭を上下に揺らしながら聞き入ってました。
「そうか。尚更気に入った。このお金は君に授ける。また会える日を楽しみにしているよ。」
アタッシュケースをナオキに渡すと男は去っていきました。
ナオキは困りました。
そもそも今の生活に困っておらず高望みな事をしようとも思っていませんでした。
男に言われた通りにするためケースを持ち街に向かう事にしました
ナオキは知っているのです。
寒さや暑さを防げる駅のホームには生活している人が居ることを。
ホームに着くと事情を説明し札束を配っていきました。
感極まって涙を流しながら受け取る人や意地でも受け取らない人もおり容易くお金は減りませんでした。
翌る日また来る事にしその日は自宅に帰る事にしました。
帰り着くころでした。
自宅の玄関で男が立っているのが見えました。
ナオキはすみません自宅なのですがと言うと男は振り返り
「また会えたね。ところでお金は減ったかね。」
ナオキは言いました。
「また会えたねと言うより会いにきてますよね。僕のストーカーか何かですか。あなたの願い通り使ってますがご覧の通り少し減ったくらいです。」
男は言いました。
「ならば今度は自分の為に使ってみなさい。」
そういうとまたもや男は去っていきました。
ナオキは家に入り考えました。
昔の事を思い出していたのです。
一つだけ心残りがあり携帯を開きナオミという女性に電話しました。
ナオミは電話には出てくれましたが怒りをぶつけて一方的に切りました。
次はナオコという女性に電話しました。
ナオコは快く電話で受け答えしてくれ数時間後落ち合う事になりました。
ナオコはナオキを見るなり驚きました。
別人になっていたからです。
ですがナオコはそこまで気にしておらず久しぶりに会えたこともあり2人は高級店やホテルなどに行き楽しみました。
それからというもの毎日仕事もせず2人は気ままに過ごしました。
20日くらい経った時です。
ナオキはお金が減った事に気づきました。
ついに底をつきはじめたのです。
ナオコの態度が変わってきてるのが感じられナオキは途方にくれていました。
玄関の方からコンコンと音がし玄関をあけるとまた見覚えのある男が立っていました。
男は久しぶりに会えたねと言うと
「お金は減ったかね」と
ナオキに聞いてきました。
ナオキは言いました。
「人の為に使うのは中々減らないのですが自分の事となるとあっという間に無くなるのです。不思議なものです。自分でもコントロールできないのです。薬みたいなもので中毒性があります。」
「ナオキ」
「ナオキ」
「ナオキ」
女性の声が重複して聞こえ
ナオキの隣にはナオミが座っており長く眠った様に意識を失っていたようだ。
ナオキにはナオミという本命の彼女がおり遊び相手にナオコという女がいる。
「お目覚めですかな。お兄さん」
ナオキは見覚えのある顔の男だと気付いた。
「あなたは。夢で出会った人。」
ナオキがそういうと
「夢ではありませんよ。テレビなどでもある催眠術というやつです。あなたが選ぶ道を間違えたら未来が変わる事を見せただけです。さすがの私もあなたの未来までは見れません。あなたの未来はどうでしたか。」
「僕の未来は今の僕からしたら受け入れたくない現実でした。あなたに出会えて良かったです。これからは真っ当に生きようと思います。」
ナオキ 伊藤深 @itoshin0505
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