第46話 応仁の乱の余波: 畠山義就の台頭と山城国一揆


応仁の乱が終結した後、京都の戦闘は表面上は収束を見せたものの、地方ではさらなる混乱が続いていた。特に畠山義就(目黒蓮)の活動は、周囲に大きな影響を及ぼすこととなる。


**畠山義就の影響力**


 義就は、京都を退去した後も幕府の命令に従わず、河内国に足場を築いた。畠山政長(石井正則)方を駆逐したことで、彼の権力は再び強化され、さらには大和国にも侵攻した。畠山義就の行動は、周囲の国人や武士たちに強い影響を与え、多くの者が彼に従うようになった。


 文明14年(1482年)の末、義就はさらなる侵攻を開始し、山城国に目を向ける。政長が守護を務めるその地を攻撃し、南山城の宇治以南を占拠することに成功した。幕府からの命令が届かない状態が続く中、義就は地方における実質的な支配者となっていく。


**幕府の苦悩**


 将軍義尚と富子(高畑充希)は、政長の保身を危ぶみ、義就を赦免しようと試みたが、義政の反対でその計画は頓挫した。幕府の内部が混乱する中、文明16年(1484年)には政長の守護職を解き、幕府の直轄地とすることを決定した。


しかし、戦乱の雲は依然として晴れず、関係者の憤懣は消えなかった。義就と政長の対立は解消されることなく、地方の緊張は続いていた。


**決戦と撤退**


文明17年(1485年)7月、義就方の斎藤彦次郎(川原和久)が政長方に寝返ったことにより、両軍は壮絶な対峙を迎える。しかし、山城国の国人たちが「両軍に撤退しなければ攻撃する」と通達したことで、戦闘は避けられた。国人たちは、地元の意志を守るために団結し、義就と政長の両者に撤退を促したのだった。


この国人たちの動きは、意外にもその後の山城国における政治的抗争を変えることとなる。山城国一揆が結成され、自らの自治を求める動きが活発化した。


**義就の赦免**


戦闘が収束した後、義就は山城国から撤退したことが評価され、文明18年(1486年)3月に義政と義尚から正式に赦免される。これにより、義就は新たな道を歩むことが許された。


応仁の乱の影響を受けた日本の社会は、再び平穏を取り戻すかに見えたが、実際には地方の反発や新たな権力闘争が静かに続いていた。義就の赦免は一つの戦後処理ではあったが、彼の台頭は新たな時代を予感させるものであった。


 応仁の乱は、単なる戦闘の終結ではなく、日本の地方社会に深い影響を及ぼす出来事であった。畠山義就の動向は、中央政権と地方の関係性を再定義する契機となり、地域の自立した動きが次第に全国へと波及していく。日本の歴史において重要な転換点となったこの乱は、単に戦の記憶ではなく、後の時代における新たな統一のための前触れであった。


 応仁の乱後、足利義政の政権は徐々に不安定さを増していた。義政は自身の力を再強化しようと試みていたが、地方の動きに翻弄され、かつての繁栄を取り戻すことは難しい状況が続いていた。


**庭と宿命**


 ある日、義政は自らの庭で、そこで育てた果樹を眺めながら深い思索にふけっていた。庭は静かな場所であったが、内心では自らの宿命について考え続けていた。彼の心には、権力を持つ者の重責とその孤独感が映り込んでいた。庭の手入れをすることで、少しでも心の平安を得ようとするが、彼にかかる重圧は計り知れなかった。


 義政は、猿轡(さるぐつわ)に囚われた自らの心の中に、圧倒的な権力の象徴としての鰐(わに)を見つけていた。この鰐は、彼が失った権力や影響力の象徴であり、彼を縛る存在でもあった。


**遺伝の影響**


彼は時折、過去の栄光とともに自らの家系が持つ遺伝の影響を思い起こしていた。彼の兄、足利義勝の意思を受け継いだ自分は、何を成すべきか。義政は家族の中で重んじられてきた武士の血を思い、自らの行動がその血の重みを背負うことに気づいていた。


庭の一角には、鷲(わし)が偶然飛んできて、義政の頭上を舞った。その鷲の姿を見て、義政は自らの足元にいる人々の宿命を感じ取った。彼らもまた、群れの中で生きる宿命を背負っているのだと。


**新たな決意**


このように思索を重ねる中で、義政は一つの決意を固める。彼は、かつての力を取り戻すため、また自身の宿命を受け入れるための新たな動きを開始することを誓った。人々を導き、大名たちとの連携を強化し、群れの一員としての自らの役割を果たす必要があると感じたのだ。


 庭での静かな思索は、義政が自身の運命を受け入れ、次なる一歩を踏み出すための準備となった。彼の心の中の鰐はもはや、抑圧する存在ではなく、彼の力強さを引き出す存在へと変わっていった。義政は、この新たな決意をもって、自らの宿命を切り開くための行動を開始するのであった。


 義勝は永享6年2月9日(1434年3月19日)、6代将軍・足利義教の長庶子として誕生した。母は側室・日野重子であるが、正室・正親町三条尹子の猶子となり、世子 として認められた。幼名は千也茶丸(せんやちゃまる)と名付けられた。


同年3月3日、畠山持国邸で一泊したのち、翌4日に政所執事・伊勢貞国の屋敷に入った。その後、伊勢邸で養育され、室町第に入るまでの8年間を過ごした。


嘉吉元年(1441年)6月24日、嘉吉の変が起こり、父・義教が赤松満祐に殺害されたため、26日に千也茶丸は室町第へ移された。そして、管領・細川持之ら大名に擁されて、後継者となることが確認された。


同年8月19日、千也茶丸は後花園天皇より、義勝の名を与えられた。また、装束・髪型は童形のままであったものの、これより後は「室町殿」と呼ばれるようになった。


 嘉吉2年(1442年)11月7日、義勝は関白・二条持基を烏帽子親として、9歳で元服した。また、併せて将軍宣下が行われ、義勝は将軍職を継ぎ、第7代将軍となった。


 嘉吉3年(1443年)6月19日、朝鮮王の使節である朝鮮通信使が入京し、義勝は使節と室町殿で会見している(『康富記』)。このとき、幕府は義勝が年少であることや、多額の護衛費用を理由に入京を断ろうとしたが、使節から義教への弔意を伝えるためとの説明を受けたため、入京を渋々認めた。朝鮮通信使は50騎に及び、楽隊も従えていたため、朝廷・幕府の要人は幼少の義勝をいかに威厳があるように見せるか苦悩したのではないか、と榎原雅治は推測している。


 同年7月21日、義勝は室町第で死去した。享年10(満9歳没)。在任わずか8ヶ月であった。死因は落馬、暗殺など諸説があるが、赤痢による病死が有力であるとされている。


 後任の将軍には、僧侶になることが予定されていた同母弟で8歳の三春(のち義成、義政)が選出された(将軍就任はその6年後の1449年)。だが、義勝、義政と幼少の将軍が2代続いたことから、朝廷や有力守護大名の幕政への関与が続き、将軍の権威が大きく揺らぎ始めることになった。


 義政が新たな決意を胸に抱く一方で、世の中には異なる運命を持つ者たちが存在していた。そしてその中でも特に異彩を放つ存在、それが「鵺(ぬえ)」であった。


**鵺の出没**


ある夜、異様な気配が京都を包み込んだ。人々は恐怖に押しつぶされ、何が起こるのか分からない不安を抱えていた。鵺は古くからの伝説や物語において、恐れられる魔物として知られていた。実際にその影を見た者たちの話は、まるで夢のようなものであった。人の顔に猿の手足、胸には虎、たけらには蛇を持つという容姿は、まさに不気味そのものであった。


義政は自らの思索の途中でこの異変を知り、ただちに警戒を強めた。彼はこの鵺が持つ力がただの脅威ではなく、権力者である自分を試すものであることを理解していた。自らの影響力を再確認するためにも、この鵺を討つ必要がある。


**源頼政の愛刀**


ところが義政には、ある秘められた能力があった。それは、平安時代に活躍した源頼政の愛刀「骨食(コツショク)」である。この刀は、数多の妖怪や化け物を斬り伏せたという伝説を持ち、その鋭さと力は計り知れなかった。義政は、この愛刀を手に取り、鵺との対峙に備えた。


**壮絶な対決**


夜が深まり、月明かりのもとで鵺が姿を現した。狂ったように鳴き声を上げ、その姿は恐怖を呼び起こす。義政が骨食をしっかりと構えると、鵺はその異形で彼に向かって襲いかかってきた。


「来い、鵺!」義政は叫び、その瞬間、鵺の身体が波のようにうねりながら彼に迫る。だが、義政は恐れずに応じた。鵺の一撃をかわし、その剣を骨食の凄まじい切れ味で振り下ろすと、鵺の身体は斬り裂かれた。


**運命の選択**


斬りつけられた鵺は、その衝撃に打ちひしがれ、やがて力尽きていく。その瞬間に義政は、自らの宿命を受け入れた。本来、この運命が自らの中にあったものであると感じながら、彼はこの勝利を「骨食」に捧げた。


鵺を斬り倒した義政の姿は、まるで新たな光を得たかのようであった。彼の内には、力強い意志が根ざし、京都の人々を真に導くべき人物へと変貌を遂げていた。義政は再び自らの運命を受け入れ、これからの道を歩むことを誓った。


**新たな時代の幕開け**


鵺を倒したことにより、義政は不安定な時代を乗り越える力を得た。そして、彼の名は再び人々の中に響き渡った。この勝利を機に、彼は新たな時代の象徴となり、民の信頼を取り戻す決意を新たにするのであった。


義政の手にした骨食は、その後も彼の傍にあり続け、彼の運命を共にしていくのだった。京都の夜は静かに明け、まるで新しい時代の幕開けを告げるかのように、美しい朝日が差し込んできた。

 

 

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