3−3 地獄のような時間

案内人としてやってきたのは…

黒いつややかな髪。真っ黒のワンピース。パッチリとした真っ黒な目。

見たことのない人みたいだった。けれど,その顔は明らかに…

「黄花…?」

黄花だった…

黄花は,今まで僕に見せたような笑顔で微笑んだ。

「初めまして。わたし,蛍です。ここの案内人です。お見知り置きを…」

そう,1礼をするのは,どこから見たって黄花だ。

「何言ってるの?黄花。早く一緒に帰るんだろ?」

「黄花…?わたしは蛍です」

嘘だろ…でも完全に黄花なんだよ。見た目も,声も。

「さぁ。いきましょう。暗様と風香様とご対面です」

黄花–-蛍はそう言って黒い城の奥へと進んでいく。


「さぁ。つきましたよ。あなたの牢屋へ…」

「うわっ!?」

蛍に背中を押されて,僕は牢屋の中へ押し込まれる。

「ごめんなさいねー。これも里組様の命令なんです。それでは…」

僕は…騙されたんだ…

ここは…もう…

「ラッキーが…希望が…消えてる…」

僕はそう呟いて,膝に顔を埋めた。

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