第3章 鍵の少女と悪夢の光景

3−1 悪魔のお使い

僕は今,とある町を歩いていた。

いくつかの町を回って,この前の百合夜町ゆりやちょうで,百合ゆりさんが,この町で「助けてっ」っていう暗さんを見たって。

そもそもこの町に入った瞬間,黄花が消えてしまったんだ。

きっとここには何かある。

そこでまず,黄花を探しているんだけど…

全然見つからない。

諦めようかな…きっといつものように「ヒカリ!」って飛んできてくれるよね。

そう思ってUターン。

歩き出そうとした時だった。

「誰かっ!いますかっ」

あれ?森の奥から,誰かの声。

これは…女の子か…?

「はぁっ。はぁっ。すいませんっ」

僕にしがみついてきたのは,レモンの花の刺繍が入ったカチューシャをつけた女の子だ。

右目と左目の色が違う。

オッドアイか…初めて見た…

女の子は顔色を悪くして叫んだ。

「た,助けてくださいっ!悪い奴らに追われてて…っ!」

「ど,どういうことっ!?」

すると後ろから,バタバタバタバタと何人かの足音が聞こえてきた。

「もうっ⁉︎」

女の子はスッと立ち上がる。そしてそっと僕の後ろへ隠れた。

おってきたのは,数人の男だった。全員女の子よりも背が高い。男たちは僕らを取り囲む

その中でも1人の男が隠れていた女の子の腕を掴んだ。

「あっ」

「いやっ!」

女の子は男たちに掴まれて,身動きの取れない状況になった。

そこで1人の男の子が僕の前に出てくる。そして両手を広げた。

「初めましてっ!ボクは優!里組様にお仕えする闇の住人だよ!」

優と名乗った男の子は女の子をみてにっこり笑った。

ぐいっと女の子の顔と自分の顔を近づける。

女の子は顔を背けたけれど,優があごを掴んで自分と目を合わせた。

「もー。ダメだよー勝手に逃げちゃ。里組様怒ってるよー。帰らないと里組様のオヤツも無いし,チカラも上がらないし…早くキミを連れてかないとボクらも怒られるし…きっと次はもっともっと監視が厳しくなるよー」

まるでちっちゃな子を怒るように。

勝手に逃げちゃ…?それにさっき,助けてって…

この子…こいつらに捕まってるのか…

「もう…イヤ…やめて…」

女の子は苦しそうに呟いた。

「でもなー。君は全人類の中でただ1人,そして10兆分の1の確率で生まれてくる超低確率,ゲームのガチャで行ったら星100くらいいく,自然神しぜんしなのだから」

「なんでわたしだと確信しているの?」

「キミの目だよ。その濃い黄色と薄い赤。その目のものは自然神なのだよ」

女の子の目は,確かに赤が薄い。

黄色と赤の組み合わせがいても,こういう組み合わせはいないのかもしれない。

「だから城に着くまでゆっくりおやすみ。レモン…」

優がそういうと,女の子はカクッと気をうしなった。

その女の子を男の手から優が抱き上げる。

「さて,ヒカリ。黄花に合わせてあげるよ。里組様から『暗と風香を解放してやるから,おいで』って」

「本当か…?」

その言葉に,優は頷いた。よし。天空へ行ったら,きっと何か掴める。

行こう。僕は優に続いて,雲の階段を登った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る