1−9 消えかかる希望

「あっ!」

ボクは真っ黒な,まるで沼みたいに染まった床を見て声を出す…

先ほど,ボクの姉・美奈の登場によって,ヒカリは怒ってしまったようだ…

それも当たり前…だって…ボクが話さなかったから…

だから,ヒカリはこっちを見ていない…

そうしているうちに,ボクの足に腰,腕や顔まで,謎の沼から生えてきた手に掴まれる。出ようとするけど,そっちの方が力が強くてどんどん沼に埋もれていく。

どんどん沈んでいくけど,ボクは口でヒカリに助けを求めようとした…

「ヒカ…ムグッ!」

ついにボクの顔まで届いた手が,ボクの口に耳,目や鼻まで覆ってくる…

何も見えないし,聞こえない。喋ることも不可能なまま,ボクは沼のそこへと沈んでいく。

抵抗しようとするけど,その手は,ボクの体に何かを撒き始めた気がする。

足などの低い位置にあるものから,どんどん感覚が消えていく。

これは…なんだ…?

とりあえず必死でもがくけど,作業を分担したのか,いくつかの手は,ボクの体を,思いっきり抑えてくる。

「んんっ!んんんっ!」

ついに腕までも,動かせなくなった。

何もできないこの状態。

ブチッ!

何かがちぎれた音が,聞こえた気がした。

けど,それを考える前に,どんどん顔に何かが巻きつけられていく。

これはきっと,闇がボクにまとわりついてきてるんだ。

闇のロープだ。

そう考えたところで,ボクの意識がぷつんとキレた。

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