ラッキーストーンで幸せを

Veroki-Kika

1−1

タッタッタ。

僕・藤堂ヒカリは田舎道を走っていた。

もうすっかり暑くなった,7月26日。

僕の髪にも,じんわり汗が垂れてくる。

それでも止まらずに走った。

「おーい。ヒカリくーん。元気だねー」

畑仕事中のおじさんが僕に声をかけてくれる。

僕は手をあげて,その場を走る。

走る。走る。とにかく走る。

土手を走り抜けて,住宅街も走り抜けて。

「おーはなくるくる ほーしはまるまる ぼーくらのきもち みらくる くるくる」

校舎から,1年生が歌っている星小の校歌が聞こえる。1年生らしい,幼い甘い声。

懐かしいな。

もうここは卒業して1年か…

そう思って僕は星小の前を通り過ぎた。

ここは星野町。静かでのどかなまち。

山や自然が多くて,夜になったら星がよく見えるから星の町で星野町。

地元の人も少ないから,住民の顔と名前はだいたい覚えてる。

ブワッとひんやりした風が吹いた。

コンクリートの道路を僕は気持ちよく走っていく。

タンっと青いスニーカーが軽快な音をたてた。

「あと少しだ」

そう呟いた時,目の前に森が見えてくる。僕はその森の奥深くへ入っていく。

草木をかき分ける。

木々のトンネルを抜けて,開けた場所にでた。

一際空気の綺麗なこの場所。

サラサラサラ。

綺麗で透明な水が,川の下流へと流れていく。

ゴロゴロ転がっている岩を避けて歩いていく。

僕は近くの岩に登った。

自分の十字架のネックレスを握りしめる。

サァッ。

風が僕に吹きつけてくる。

けど,僕はギュッと十字架を握りしめた。

「………」

しばらく黙って祈りを告げる。

山に,川に,森に。この町の自然に。

ここにきてお祈りをするのが必ず毎日やること。

きっと一番空気が綺麗なここに,神様がいらっしゃるはずだから。

僕はそう信じている。

いつもは爽やかな風が吹いておしまいだけど。

今日は何かおかしい。

木々が騒いでいる。水が荒れている。

何かあったのか。

僕は周りを見渡した。

「あれは!」

その荒れる川の近くに落ちているモノをみて,僕は目を見開いた。

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