第38話

「でも、」



「もういいの。今私は生きてる、生きて君の目の前にいる。それだけでいいんだよ」



止めたはずの涙はまだ流れてきて視界を歪ませる。あぁ、多分今僕の顔ぐしゃぐしゃだ。それでもいい、彼女に腕を伸ばして抱き寄せる。



温かい、そこに君がいる。詩が居る。彼女は僕に身を任せながら腕を背中にまわした。泣き続ける僕を彼女は泣き止むまで待ってくれた。背中をずっと撫でてくれた。



落ち着いた頃、恥ずかしくなって彼女から離れる。僕の行動を見て彼女は笑った。



「ねぇ、いつになったら名前呼んでくれるの?あんなに一緒にいたのに最後の1回しか呼んでくれないんだもん」



「そういう君だって僕の名前呼ばなかったじゃんか」



「あ!また君って言った!」



「あぁもう!呼べばいいんでしょ!」



「うん!」

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