第32話

「…それを知ってどうするの?」



「僕は彼女に会いたいんです。会って伝えたいことが沢山あるんです。そして、あの日々のようにもう一度彼女と歌いたいんです。あの時は雨の日だけだったけどこれからは晴れの日でも雨の日でも彼女と、詩と歌いたいんです。だからどうか僕に教えて頂けませんか?」



看護師さんは少し悩んだ後口を開いた。



「患者さんの居場所は教えられない。これは病院のルールだから、」



やっぱり無理か。患者さんの情報は絶対に守らなければいけない。それは分かってた。看護師さんにお礼を言って去ろうとした瞬間、



「だけど、もしどこか悪いのなら隣県の××病院に行ってみるといいわ。あそこはここより設備が整ってるから安心よ」



「え、それって…」



「気をつけてね」



「あ、ありがとうございます…!」



看護師さんにお礼を言って病院から出る。"隣県の××病院"忘れないようにスマホにメモをする。今すぐ行きたいけど時間が無いから明日にしよう。しっかり準備して彼女に会いに行く。

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