第43話

そう放ってから無言が続いた。短い言葉で纏めたけど伝わっただろうか。伝わらないと言うなら伝わるまで言うつもりだ。早くなる心臓を落ち着かせて父さんの言葉を待つ。



「律」



「はい」



返事をしたら父さんは笑った。



「いいだろう。お前がこの場所に戻ってまで守りたいものがあるのなら協力しよう」



その言葉を聞いた瞬間現実か分からなくなった。こんな簡単に認めてしまっていいのか。



「本当はな、お前があそこで"好きだから"とか"愛してる"とか言い放ったら追い返してた。そんな誰でも言えるようなことは求めてないんだよ、私は。だがお前は真剣な眼で"隣にいて欲しい、隣にいたい人"と言った。お前の本気は伝わったよ」



そう言って笑ったんだ。父さんはちゃんと俺の事を見ててくれたんだって分かった。俺はただただこの場所が嫌いで逃げ出したのに父さんはちゃんと俺を見ててくれた。ここは監獄なのに父さんが俺を見ててくれたなら少しは監獄じゃなくなる気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る