第20話

「家に電話がかかってきて清水さんが出たの。受話器を下ろしたあと急いで家を出た。私は何が何だか分からなかった。きっと清水さんも焦ってたんだと思う。私に説明はなかったから、ただ"大丈夫"って繰り返すだけ」



ただただ繰り返される"大丈夫"に子どもながら"あぁ、何かあったんだな"って思った。だって、焦った顔で辛そうな顔で言われたら子どもだって察する。



「病院について両親の死を聞かされた。そこから記憶が曖昧。清水さんが全部やってくれた。お葬式も家のことも私のことも全部」



「多分そこから亀裂が入ったの。入りすぎた亀裂はどんどん広がって、手に負えなくなって、崩れて崩れて壊れていった」



両親の死、そしてもっと複雑になる私の、私たちの問題。ここから先はできるなら律には知られたくない。聞いて欲しくない、こんな汚い話。汚い私を、汚れてしまって綺麗にならない私を見て欲しくない。



「ねぇ律。お願いがあるの…。一つだけ、私の心からのお願い。聞いてくれる?」



律は優しく微笑んでくれた。それだけで大丈夫って思えた。やっぱり律はすごい、私のヒーローみたい。

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