ウォフ13歳③
レリック。
たぶんスキルやギフトみたいな異能だ。
この世界には魔法やスキルやギフトの代わりにレリックが存在している。
レリックを持っている者は稀だ。
ひとつでもあれば少なくとも過酷な世界で生きる一筋の光にはなる。
更に複数持ちは滅多に無く、大変に貴重な存在だ。
僕は生まれつきレリックを四つ持っている。
それが転生したからなのかは分からない。
たぶん一生分からないだろう。
そもそも転生自体が分からないし、これが神様の仕業なのかも不明だ。
この世界に祭られている神は多くて、どの神なのかも不明だ。
ただしレリックが四つあるおかげで僕はどうにか生きている。
そしてそれを誰かに伝えたり教えたりすることはないだろう。
誰かが言っていた。
希少性は自由を奪う。
僕の四つのレリックは僕自身さえも異質で異常だと思う。
特に四つ目のレリックがそうだ。
僕は成り上がりも栄達も英雄も望んでいない。
この世界で普通に幸せになりたい。
それがイッツマイライフだから。
指輪の次は折れていない鉄の剣だった。
もちろん鉄は売れる。しかもこれは剣として売れる。
緑の光は、一つ目が古い年代のベルト。二つ目が凝った細工が刻まれた方位磁石。
三つ目が新品同然の赤銅の短剣。四つ目が豊穣の角コヌルコピアのお守り。
「よし。今日はこんなもんだ」
後の時間は発掘作業に使おう。
今から4ヵ月前。ハイドランジアのある辺境地方に地震が起きた。
かなり強い揺れでダンジョンにも影響があった。
調査隊が送られて異変が無いと判断されるまで1ヵ月近くも閉鎖された。
閉鎖が解除されたゴミ場に入ると地震でゴミ山がいくつか崩れる。
赤の危険ポイントが増えていた。
その中で僕は息を飲んだ。
白い安全ポイントに青い光があった。
そうスーパーウルトラレアだ。
それは右端奥のゴミ山の中心。
手に入れるにはそのゴミ山の中を掘るしかない。
少しずつ少しずつ僕は中に入って掘り続けた。
入り口はうまく隠して自分だけが入れるようにする。
レリック【危機判別】が無ければ大怪我か死ぬような狭い通路にした。
死ぬようなのは運が悪ければだ。
こっちだって命掛けなんだ。
このゴミ場に来る子供は全員がライバルなんてもんじゃない。
敵だ。
そう敵。
だから誰一人も名前も知らず親しくない。
ゴミ場は争い厳禁だがそこから離れたら治外法権だ。
目立たないようにしているからまだ襲われたことはない。
ただ狙われる危険は常にあると思ったほうがいい。
それぐらい用心深く臆病じゃないと生き残れない。
慣れた様に隠し入り口からゴミ山の中に入る。
内部はそんなに広くはない。青い光を確認する。
青い光は僕の斜め下から輝いていた。
光は小さい。
それはスーパーウルトラレアが近い証拠だ。
僕は青い光を覆うように手を当てる。
少し離して、3つ目のレリック【バニッシュ】を使用。
掌に透明な球体が現れる。
それでガラクタ同然の鎧や盾や折れて錆びた刃などを消していく。
レリック【バニッシュ】は触れたモノを消失させることができる。
この透明な球体は利き手の掌にだけ出現する。
手から離れず伸縮自在で最小はビー玉。
最大はバスケットボールほどにもなる。
【バニッシュ】は消すモノを区別できる。
まず僕には何の効果もない。
思い描くだけで何を消すか消さないかを決めることができる。
例えば肌を傷付けず服だけを消したり。
中身を消さず宝箱だけを消すことも可能だ。
だから削ってもスーパーウルトラレアが消えることは無い。
だからといって一気に削るのはゴミ山が崩れたりする危険があるから難しい。
焦らず慎重にコツコツと発掘する。
「……今日はこれくらいにするか。ううぅーん」
疲れたのでやめる。
青い光はだいぶ強く鮮明に輝くようになった。
もう少しだ。
焦る気持ちを抑えて明日以降の楽しみにしておく。
ゴミ場を出て門番のガウロさんに挨拶し、家に戻る前に寄るところがある。
ハイドランジアの南にあるスラム街の裏通り―――に向かう途中の大通り。
「おい。見ろよ」
「あれか。すっげぇーなぁ」
「うほっ……綺麗どころじゃねえか」
「しかもあれで全員が第Ⅲ級探索者なんだろ」
第Ⅲ級!? 思わず話をしていたひとたちの視線を追う。
そこには颯爽と歩く3人の探索者がいた。
急にそこだけまるで色が着いたような……そんな初めての鮮烈さを覚えた。
ひとりめは薄緑色の髪に白いメッシュが入った猫獣人の美少女。
黒ローブ姿で片目を髪で隠している。木製の杖を持つ。
長短の二つの白い尻尾がゆらゆら揺れている。
ふたりめは腰元までの長い金髪。
白い独特な軽鎧に身を包んだエルフの美女。
丸い大きな盾を背負っている。
そしてさんにんめ。短めの桃白い髪の美少女。
赤い瞳で眠そうな眼差しだ。
赤い線の入った黒いジャケットに……なんだ……あれ。
随分とスペース的でメカニカルな白いボディスーツみたいなのを着用している。
それにボロボロのジーンズっぽいズボンという格好だ。
気になるのは腰に提げている一体形成された黒いブレード。
造りがファンタジーじゃない。SFだ。
間違いなくこの世界の人じゃないだろう。
どこからきたんだ。星の海か。
彼女たちは老若男女誰もが一度は振り向く。
そんな華やかさがあった。
「……?」
「っ!」
一瞬だけ僕と猫獣人の美少女と目が合った。
だがそれは偶然だ。
そのまま彼女たちは行ってしまった。
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