ウォフ13歳②


ここはダンジョンのゴミ捨て場では無くゴミ場。

ゴミと呼んでいるが確かにゴミやガラクタには違いない。


厳密に言うと誰かが捨てたわけじゃない。

ゴミは折れた剣。折れた槍。

砕けた斧。真っ二つになった杖。破れた布切れ。


破損した革の鎧。貫かれた鉄の鎧。

穴のあいたポーチ。使い古されたローブ。


劣化したポーション。

干からびた薬草。お守りなどなど。


これらはダンジョンで死んだ探索者が身に着けていた装備や道具類だ。

それらが一階の奥に集まっている。


誰かが拾って持ってきたわけじゃない。

人知れず勝手に此処に集まっているらしい。


そして死体はない。

装備や道具類だけがゴミとして蓄積されている。


それはありがたい。

生ゴミも混ざっていたら最悪だ。


死体はどうなったのか。

魔物に喰われた。ダンジョンに吸収されたとあるが、僕はどっちも正しいと思う。


たまに骨が出てくるから前者が正解かもしれない。

あとお金も無い。


でもそれらは倒した魔物を剥ぎ取ると時折その腹から出てくる。

一部の魔物が食料と勘違いして食べているみたいだ。

必要ないのに食べるのは疑似人格の所為だろうか。


ダンジョンの魔物は普通の魔物と違う。

ダンジョンが生み出す生々しい素体に疑似人格のような感情が与えられている。

攻撃し食べたりするが排泄器官が無いので排泄はない。


疑似人格というとAIなのか。

生きているのか居ないのか。よく分からない。


他にも小さくキラキラした宝石とかも無い。

ただ装飾品でも指輪や腕輪やネックレスなどはある。


ゴミ場には既に何人か漁る子供の姿があった。

大人の姿はたまに見かけるが遺品探しが多い。

探すのを手伝うと大なり小なり報酬をくれるのでむしろラッキーだ。


昔からダンジョンのゴミ場は子供の仕事場。

特に探索者を目指す子供にとってはだ。


300オーロと決して安くない入場料を払っても来る価値はある。

それに払った以上に儲かるときもある。ゴミ場は宝の山だ。


だが子供の数は決して多くない。

何故ならそれ以上に命の危険がある場所だからだ。


「いって!」

「おい。気を付けろ」

「なんでこんなところに剣があんだよっ」


少し上のほうだ。数人の声がする。


「そんなの知るか。だから注意しろって言っただろ」

「銅の折れた剣か。良かったな毒類はなさそうだ」

「銅か。折れても売れるな」

「傷は?」

「掠り傷だ」

「それでも包帯巻いておけ」

「ああ……」


ちょうどいい例が出た。

ゴミの大半が死んだ探索者の武器と防具。

特に武器はゴミ山のどこに潜んでいるか分からない。


不用心に雑に探して剣や槍が刺さって死んだとかもよくある。

それと衛生観念が低いので破傷風で死ぬことも多い。


今月4人が亡くなった。先月より1人少ない。

その死体は裸にしてゴミ場から出す決まりだ。


ゴミ場の外なら翌朝には綺麗サッパリ無くなっている。

裸にする理由はその方が早く死体が無くなるからだ。

それと剥ぎ取るという意味もある。


死体に宝はいらない。

怪我人を出した少年たちは折れた銅の剣数本を手にしてゴミ場を後にした。


「……」


僕は慎重にレリック【危機判別】を使う。


視界が変わってゴミ場に『危険なポイント』が判別に映る。

『危険なポイント』は色別されている。


白色が安全なポイント。

赤色が危険なポイント。

黒が確実に死ぬポイントだ。


おかげで僕はこれまで怪我することなくゴミ山を散策できた。

なおこのゴミ場は長い年月によってゴミが蓄積されている。


その真下は真っ黒だ。


確実に死ぬなにかが埋まっているんだろうか。

それとも単にゴミが詰まっていて圧死するからか。

まあ気にしても仕方ない。


白色のポイントだけを意識してゴミ山に登る。

このゴミ山における仕事は簡単だ。


売れる物を探す。宝探し。それだけ。

さっきの少年たちが持っていった銅の剣もそうだ。

銅は売れる。屑鉄も売れる。


ダンジョン法でゴミ場のゴミは拾った者がその権利を持つ。


例えば黄金の剣を見つけたら、見つけたそいつの物だ。

だがまあ権利があるとして権利者を保護するモノはなにひとつとしてない。


それでも宝なのは事実で、そういう可能性も無いわけじゃない。

だから宝探し。


さて、僕もそろそろ宝を探そうか。

レリック【フォーチューンの輪】を使用。


すると【危険判別】で色別されたポイントに『輝き』が加わる。

ポイントの一部が緑と黄色に輝く。


緑の光はレア。黄色はスーパーレア。

そして青は滅多に無いウルトラスーパーレア。


白色のポイントに緑の光と黄色の光を探す。

周囲を見回し、あった。


緑の光はひとつ。ふたつ。みっつ。よっつ。

黄色の光はひとつ。ふたつ。


青は無い。滅多に無いからそんなもんだ。

一番近い黄色の光から探すか。


「売れる物であればいいけど」


レリック【フォーチューンの輪】はレアがある場所を示してくれる。

しかしそれが何なのかまでは分からない。


レアでも売れない物や売るのが難しい物もある。

僕は白い安全ポイントで黄色の光を放つところを慎重に探る。

ボロボロの盾を取って破損している籠手を外す。

最後に歪んだ鎧のプレートを……抜く。


黄色の光は段々小さくなる。

目当てはもう少しだ。


黄色の光が一点に集中した……小さな布の袋を見つける。

袋の中には指輪が五つも入っていた。


お宝だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る