深淵に潜む商人
ごろんただ
第1話 開店準備
日本第3ダンジョン深淵29層 湿地地帯
少年から青年に移り変わる年頃の男が死にかけていた。男の瞳は諦観と憎しみが共存し、自らが潜む木の洞から外の惨状を眺めていた。
男は驕っていたのだ。
自分の実力を過信し幾度なく国家が失敗していた深淵の探索を無断で行った。
そこに潜む怪物は今まで戯れに虐殺してきたモンスターとは格が違い、男が率いたチーム全員が目の前の怪物に一瞬にして肉塊に変えられた。
男は自分がもう助からない事は確信していた。
男は想う、願わくば目の前の醜悪な糞野郎を誰か殺してくれと。
男の願いは叶った
その怪物は背後に浮遊し佇む不定形の「それ」に気付く暇も無く巨大な針を体から生やし死んだ。
ただ、1つ問題を上げるとするのならば男の命は怪物よりも早く底をつき、男の白濁した瞳には何も映らなかったことだろう。
そんな男を一瞥もせず「それ」は怪物や散乱した死体を取り込む。
不定形の「それ」の脳内には「天の声」が鳴り響いた。
レベルが1708から1709に上がりました。
ステータスが向上しました。
特性「自我」を手に入れました。
自我の形成の為に取り込んだ 矢田部真尋 の記憶を使用します。
「それ」は体を震わせた。当然だ、今まで本能しか存在しなかった自分に突如自我と記憶が生えてきたのだ。ただ、「それ」はそれ以上の驚愕と感情に震えたのだ。
そして「それ」は生まれて初めて言葉を紡ぐ。
「武器商人超かっけえ‼︎‼︎」
斯して闇商人というポジに憧れを抱いた、章ボスクラスの怪物が生まれた訳である。
1989年、世界各国でダンジョンと呼ばれる物が発生した。発生当時、世界はダンジョンから出てくる敵性生命体、通称モンスターの同時多発的な侵攻に混乱していた人類はなす術がなく大きな被害を受け、世界人口の約⒎3%もの死者が出るという事態が巻き起こった。
しかし、ダンジョンが齎した物は殺戮だけでは無く、超科学的な力であるステータスや魔力などを人類に齎し、ダンジョンから産出されるエネルギー資源による恩恵も存在した。
本来ダンジョンのモンスターは野生動物並みの知能であり、また96%のモンスターは完全に人間に敵対していた。
そんな中、ダンジョンを人の手で管理する為にダンジョンを踏破し、謎を解明しようとする者達が現れた。
その者達は冒険者と呼ばれるようになった。
冒険者達の働きによって、数々のダンジョンが踏破され、モンスター達が溢れかえる前にモンスターを駆除する事が当たり前となった。
ただ、踏破されていないダンジョンが幾つも残っていた。
その内の一つが日本第三ダンジョン通称「東京ダンジョン」
通常のダンジョンとは比べ物にならない程の深度、階層、1層ごとの広さ。下層より下に位置する深淵の存在、これが東京ダンジョンの難易度を破格の物としていた。
そんな東京ダンジョンの深淵における食物連鎖の上位に存在している「それ」こそが
この不定形の怪物である。
ステータス Lv.1709 個体名 ^%#-#0¥@
種族 ;/%〜*
HP 12657
MP 20991
スキル 枠8
屍山血河Lv.99 隠密Lv.99 索敵Lv.99 収納Lv.99 結晶魔法Lv.84
魔力操作Lv.91 外なる力Lv.42 黄衣の王Lv.26
称号 枠3
旧支配者の眷属Lv.7 原罪の探究者Lv.4 風の従者Lv.2
SP23690
それは自分をイタカと呼ぶ事にした。何故かそうすべきだと思ったのだ。イタカは自分の姿を不定形の姿から憧れの姿に変える。
黒いローブに口元をマスクで隠し、顔を険のある渋い老人のものにした。
そして今まで使い方の分からなかった、SPを活用してスキルスロットを拡張し、スキルを大量に獲得する。直後脳内に「天の声」が響く。
SPを使用しました、残りSPは146です。
スキルスロットが拡張されました。
枠8から枠18になりました。
スキル アイテム生成 武器生成 アイテム強化 武器強化 アイテム進化 武器進化 魔法付与 スキル付与 アイテム合成 武器合成 を獲得しました。
直後、イタカは自らの計画の致命的な欠陥に気付き叫ぶ。
「客、深淵にはいねーじゃねーかーーー。」
理想の武器商人になるまでの道のりは遠い。
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初めまして、ごろんただです。
今回の作品は自分がまともに投稿したものでは初めてなので色々欠陥があったり、1話事のボリュームがかなり少なかったり、更新が遅れたりするかもしれません。
もし、気になる点があったりする場合は指摘して頂けるとありがたいです。
基本的に7日に1回更新する形になると思われるのでよろしくお願いします。
こんな小説ですが、応援して頂けると嬉しいです。
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