ep.9『猫とよふかし』
『東雲蘭、聞こえる?』
「おう、ばっちりだよ」
夜ご飯を済ませて、あとは寝るだけの状態となった俺はベッドに寝転がり、スマホを開いた。
準備は完璧……ゲームの予習もしたし、ドアの鍵も閉めた。
これで、家族の乱入という危険性は消えた。
『じゃあ、招待するね』
「サンキュー」
招待されたルームに行くと、明らかに強そうなキャラをしたNeko0205こと昼猫が待機していた。
筋肉マッチョのおじさんが、タンクトップ一枚に大きな銃を両手に構えている。
「うぉ……強そうだな」
『でしょ。数々の戦場を共にした相棒』
それに比べて俺のキャラは………貧相だ。
並んでいるから余計に感じてしまっているだけかもしれない。
しかし、ナイフと銃一丁だがやれるのか!?
なんか、昼猫のガチ度を見ているとついていけるのか不安になる。
『じゃあ、とりあえず一戦』
「あ、うん!」
【結果:勝利】
昼猫が無双状態だった。
オンラインで数人とマッチしてゾンビと争うのだが、ダントツで強かった。
気が付いたらマップ内を徘徊するゾンビが一掃されていた。
「つ、強いな。」
『東雲蘭も初心者としては中々の腕前』
褒められたのは嬉しいが、無双している昼猫を見てしまうと素直に喜べない。
どれだけやり込んだらこのレベルになれるのだろうか。
少しでもゲームが得意だと思っていた自分が恥ずかしい。
「もう一戦!」
『うん。いいよ』
【結果:勝利】
またしても、昼猫の無双。
今回は遠慮してか、武器のレベルを下げてくれたっぽいがそれでもだ。
強いことには変わらない。
「昼猫、強すぎないか?」
『結構、ハマってた』
表情は見えないが、キリッとした声が聞こえた。
やはり、このゲームでは腕に自信があるらしい。
しかし、過去形という事は今はあんまりやってないのかな。
「蘭ちゃん。一人で何話してるの?」
「うぁあ!?姉さん!?」
イヤホンを両耳にしていたからか、背後から近づいてくる姉の存在に気が付かなかった。
しかし、どうやって入ったんだ?しっかりと鍵はしたはず…………
「友達だよ!今、ゲームしてるから!」
「何のゲームかしら〜あら?
このゲームなら私もやってるわよ」
『お姉さん?』
姉さんがグイグイと近づいてくるから、イヤホンのマイクが音声を拾っていたらしい。
少し困惑した昼猫の声が聞こえた。
「すまん!姉さんが………」
「あら〜?Neko0205って、まさかぁ!?」
「え?姉さん知ってるの?」
「当たり前よ。昔に何度も戦場を駆けた仲間だもの。
しかし……最近はログインしてなかったはずだけど」
????と、俺は首を傾げた。
とりあえず、姉さんもこのゲームをやっているらしい。
そして、昔に二人はゲーム内で知り合っているっぽい。
それから、姉さんがどうしてもと言うので、昼猫に許可を取り、姉さんを招待した。
『お、お前は。Zero!』
「久しぶりねぇ〜まさか、Neko0205さんが蘭ちゃんの友達だったなんてねぇ」
『まさに、奇跡』
なんだが、二人で会話が進んでいる。
掃除の時に俺と先生が話している時に昼猫がふてくされていた理由が分かった気がする。確かに、仲間ハズレは嫌だな。次から気を付けよう。
そんな、反省をしていると、ゲームが始まった。
しかし、ここからは俺が何か出来るレベルではなかった。
【まさか、あのタッグが復活!】
【戻ってきた!】
【神二人の帰還!】
などゲームチャットが騒がれ初めている。
なんなんだ!この二人!
本当に姉さんと昼猫なのだろうか?
まるで、別人だ………
『良い試合だった』
「腕は鈍ってなかったのねぇ」
会話がもう強者のそれである。
なんだか、姉さんの顔つきと昼猫の声が凛々しい気がするのは気のせいだろうか。
『じゃあ、もう一戦』
「いいわよ〜」
昼猫と姉さんが白熱したせいか、夜遅くまで遊んでしまった。
ちなみに、俺は途中でダウン。
二人の戦いについていけなかった。
◇◆
「蘭ちゃ〜ん!そろそろ学校行かないと〜」
「…………ッ!?」
姉さんの一言でベッドから飛び起きる。
スマホを慌てて手に取り、見てると時間は8時を指していた。
あと、30分でHRが始まってしまう。
「やばい!!」
「あら〜朝ごはんはいらいなの?」
「ごめん、姉さん!」
すぐに着替えて、家を飛び出す。
そういえば、昼猫は大丈夫だろうか。
一応、連絡してみるか。
走りながら電話をかける。
すると寝ぼけた声の昼猫が「ふにゃふにゃ」と意味不明な言葉を呟きながら出た。
「昼猫!学校遅刻するぞ!」
「あ……もういいや」
「ダメだよ!」
学校に行くことを諦めかけている昼猫を説得しながら登校していると向こうから来た人と衝突してしまった。
「キャッ!」
「わ、ごめんなさい!」
「こちらもすみません………」
お互い謝罪をすると、俺は手を差し出した。
相手は女性だし、転んでしまっている。これは完璧に俺が悪い。
そして、俺の手を掴んだ人を見て、二人で驚いた。
彼女は、新谷さんの双子の妹……たしか、
「あなたは、確か東雲さんですよね」
「はい……カフェ以来ですね」
なんだか、気まずい空気が流れる。
あの時は昼猫がいたからなぁ……共通の友達がいなくなってしまった時みたいだ。
「あれ、今日は学校休みなんですか?」
「え………あ、そ、そうなん、ですよ……」
何だかキレの悪い返事が返ってきた。
まるで、何かを隠してるみたいな………いや、そんな事、俺が詮索することじゃないか。
「あれ、電話してるのって……お姉ちゃんですか?」
「あ、はい。もしかして,寝坊してるかもって電話したら学校に行かないって言ってて」
昼猫の話だと妹である夜猫さんはしっかりとしてるって話だったし、昼猫は少々と怖がっていた。
夜猫さんから言ってもらえれば遅刻してでも来るかもしれない。
そう思ったのだ。
「まぁ、お姉ちゃんは電話で起こしても無駄ですよ。
そうだ………一緒に起こしにいきませんか?」
「えぇ!?今からですか?」
「そうですけど?」
昼猫を起こしに行くのは別に構わないが、それだと俺が遅刻してしまう。
しかし…………
「分かりました。行きましょう!」
「では、コチラです」
なりゆきで、昼猫の家に行くことになってしまった。
女子の家に行くなんて、小学校以来である。
だが、それよりも重要な事がある。
ここから、夜猫さんと二人………大丈夫だろうか。
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