6

「おい」


その声に厭々ながらも振り返ると、先程女性らに囲まれていた巨悪の根源が腕を組みながら女の背後で仁王立ちしていた。


「……なんだよ」


女が顔を逸らして訊ねると、男は呆れた様に口を開いた。


「婚活パーティーはまだ終わってないぞ?」

「だからどうした」


興味無さげに呟く女に、男は溜息交じりに告げる。


「相手を探さなくて良いのか?その為に来たのだろう……」「誰のせいだと……!」


その言葉にカッとはしたものの、婚活自体に冷めきっていた女は、首を落として諦めの言葉を口にする。


「はぁ……興醒めしたからもういいわ」


女がそれだけ告げると、男は少し間を置き『そうか』と呟いた。それからドカッと女の隣に腰を下ろす。


「はっ?」


困惑しながら男を見つめる女。


「何してんだよ?婚活パーティーに戻れよ!?」


女の問い掛けに、男は涼し気な顔で足を組みながら静かに告げた。


「私もだ」

「あ?」

「別にどうでも良くなったと言っている」

「……」


互いに沈黙した後、女はそっけ無く『あっそう』と言葉を返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る