ダウナー少女に兎の愛を
堕落しきっただいてんし(笑)クゥーウェル
第1話 ダウナーガールはラビットガール
ぽつぽつと5月の早い梅雨が僕の髪の毛を濡らす、だからだろうか…
いつもなら絶対通らない路地裏なのに僕は通ってしまった.。
奇跡的に、建物と建物が傘となって雨が落ちてこないのか、そんなことを考えながら僕は歩いていた。
そんな時だった大通りからは見えず、物理的に阻まれた視界の奥に二人の物陰が見えたのだ。
よくよく目を凝らせば、少し小太りなスーツを着た男の股間に女性の横顔が見えた。
それは、隣の席の
どうして彼女が?
頭の中で思考がグルグルとまわる…虐めだろうか、いやでも彼女はそんなに弱くない。ならなんで、家庭の事情だろうか…
そんな考えが頭の中でめぐるっていると事が済んだのか、興奮した様子の男が彼女にお札を持ち、何かお願いしていた。
頭を下げて懇願する男は、首を振る彼女の様子を見てだめだと悟ったのか、がくりと肩を下げて、てくてくとこちらに近づいてくる。
ど、どこか隠れられる場所は…‼
じっと男が通り過ぎるのを見守った僕は隠れていた室外機から顔をのぞかせた。
その瞬間だった。
「はぁ、何でここにいるの?兎塚君」
気だるげな、それでも芯のある声に振り向くと彼女が僕を睨んでいた。
特徴的なショートウルフと凛々しい瞳にまるで本当の狼のように見える。
顔をしかめ、口から異臭がするのか。しきりにはぁ、と息を嗅いでは水を飲む。
「い、いやあ…ぼ、ぼくは別に…」
「別にどこにいようが行こうが、私には関係ないけど、隠れて見るなんて意外とむっつりな変態だったんだね」
「い、いや…ちが」
「私急いでるからどいて」
いわれなき中傷に弁明しようとしたら、急ぐ彼女ぶつかられた。
「チクったら殺すから」
Side:桜木
「キモイ、キモイキモイキモイ…」
あの後、隣の席の兎塚君に見られてしまった私は、未だに口に残る臭いと不快感を消すため飲んでいた水がなくなってしまったので、休むついでに近くの公園の自動販売機まで来ていた。
買ったのは甘いミルクティー、いつもは無駄に甘いものは苦手だけど、仕方がないので飲む。ふと見つけた遊具に懐かしくなり…
「あーあ、あの辺りはクラスの人たちが少なくて絶好の場所だったのに…」
キコキコと鳴るブランコを漕ぎながら、私は雲に陰る満月を眺める
「っていうか、どうせあいつも、いつもの男と一緒でしょ。ヤラせばすぐに終わるし、最悪別の学校に…」
言いながら気づく。
指先が震え、どんどんと呼吸が荒く、浅くなっていく。
「だれか、助けて」
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