古家の足音
@manten-happiness
第1話
都会の喧騒を離れ、緑豊かな郊外に建てられた一軒家。新築されたばかりのその家に、若き夫婦の健太と美咲は引っ越してきた。広々とした庭と静かな環境に満足していたが、夜になると、一軒家の中に不穏な空気が漂い始めた。
それは、夜中に聞こえる足音だった。最初は、気のせいかと思っていた。しかし、足音は日に日に鮮明になり、まるで誰かが家の廊下の隅々を歩いているかのような音が、夫婦を悩ませ始めた。
「気のせいだよ、きっと。」
美咲は、健太をそう励まそうとしたが、自分自身も心のどこかで、その足音に恐怖を感じていた。
夜になると、健太は悪夢にうなされるようになった。夢の中では、古い屋敷の中を彷徨い、どこからともなく聞こえてくる足音に追いかけられる。そして、ふと顔を上げると、そこには、真っ白な顔をした女の幽霊が立っていた。
美咲もまた、奇妙な夢を見るようになった。夢の中で、彼女は、この家に住んでいた昔の家族の姿を見た。彼らは、楽しそうに庭で遊んだり、食事をしたりしていたが、その表情はどこか悲しげだった。
二人は、この家の歴史を調べてみることにした。古老の話によると、この家はかつて、ある家族が暮らしていたらしい。しかし、その家族は、何らかの理由で悲惨な最期を遂げたという。
「もしかして、あの足音は…」
美咲は、恐怖のあまり、健太の腕に抱きついた。
ある夜、二人は、勇気を振り絞って、家の地下室へと足を踏み入れた。地下室は薄暗く、湿気が漂っていた。そして、そこには、古いアルバムや手紙が散乱していた。
アルバムをめくっていくと、そこには、昔の家族の笑顔が写っていた。しかし、その笑顔は、どこかぎこちなく、虚ろに見えた。
「私たち、この家に住むべきじゃなかったのかも。」
健太は、そう呟いた。
美咲は、静かに健太の手を握りしめた。「でも、私たちは二人でいれば、きっと大丈夫。」
二人は、地下室から出て、庭に出てみた。満天の星が輝いていた。美咲は、健太の腕に寄りかかりながら、夜空を見上げた。
「もし、本当に幽霊がいたら、私たちを幸せにしてくれるようにお願いしよう。」
そう言うと、二人は、心からそう願った。
翌朝、二人はいつものように目を覚ました。そして、耳を澄ましてみると、昨夜まで聞こえていた足音は、どこにもなかった。
それからというもの、二人は、この家で幸せな日々を送るようになった。そして、彼らは、この家に住む過去の家族の魂が、自分たちのことを見守ってくれているような気がした。
時が経ち、二人は子供を授かり、この家で賑やかな日々を送るようになった。夜になると、子供たちは、庭で遊びながら満天の星を見上げ、幸せそうに笑っていた。
そして、二人は、この家が、決して恐ろしい場所ではなく、幸福と希望に満ちた場所であることを確信した。
古家の足音 @manten-happiness
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