たらればゾンビ
あるむ
1.はじめまして
なんにも変わらない日常。
ゾンビが街を歩いていたって、人が気にするのは、彼女から連絡がないことや、今日のランチは何食べようかなとか、仕事や学校行くのはだるいなぁなんて、そんなことばっかり考えて、スマホを覗き込んでいる。
ゾンビウイルスに感染した最初のゾンビが発見された時、僕は何かが変わることを期待して、とてもワクワクしたんだ。これで世界の歪みや、変わらない日常から脱出して、キレイでクリーンな現実に生まれ変わるんじゃないかって。
だけど、どうかな。この世界の普通さは、どうもかなり強いみたいだ。映画の中の出来事が目の前に広がっていたって、なんの興味も示さない人ばかりだった。
まぁそりゃそうか。例えば電車に人が飛び込んだとしよう。誰かが悲鳴の一つくらいは上げるかもしれない。でも、それだけだ。スマホを片手に写真を撮る奴がたくさんいるし、撮った写真をどこかにUPして承認欲求を満たすための道具になる。会社や学校に遅れることにイラ立ち、「死ぬなら一人で勝手に死ね」と、「迷惑をかけるな」と、そう悪態をつく人がいる。
人一人の命が目の前で消えてしまうんだぜ。それなのに、関心なんて持たない。触れる距離の人間がいたことさえ認識せずに、通り過ぎてしまう。その人間がどんな思いを抱え、何を考え飛び込むに至ったか、どんな生活をしていたのかなんて、想像すらしない群衆になるんだ。
そんなだからゾンビが目の前に現れたって、よくできたコスプレだなぁくらいの感想なんだろう。
ゾンビだぞ、ゾンビ。腐って、甘酸っぱい臭いを辺りにまき散らして、生身の人間を手当たり次第に噛もうと蠢いているのに、自分を守る行動すらしない。
今ではゾンビは街に溶け込んでいる。噛まれるとさすがにヤバイから、
だって、遅いんだ、ゾンビ。
古き良きゾンビ像、とでも言えばいいのかな。「あ゛ー」とか「ゔー」とかそんな低いうめき声を上げて、ノロノロと迫ってくる。動作の一つ一つが緩慢で、かなり遅い。
だから余程のことがないと噛まれたりしない。Zガンを撃つまでもない。時々撃ちたがりの奴がやたらめったら発砲してるけど、ゾンビにしか効かない特殊な弾だからあんまり撃った気がしない。
そんな僕の日常を少しずつここに書き記していけたらと思う。
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