9次元世界から来たおねえさん

ムーゴット

第1話 再会

「申し訳ございません。

こちらのカードはご利用いただけないようです。

何か他の方法でお支払いいただけますか。」


「は、はい、、、、」

ついにカードが止められたか。


私は、カバンの中、ポケットの中、あらゆる可能性を探る。

小銭が、結構出てきた。


「ありがとうございました。」


この場は、なんとか凌いだが、この後、どうする。


「あーーー。この体は、どうして腹が減るんだぁ!?」






地球人は、よくこんな不便な体で生活しているものだ。

エネルギーは、勝手に自然に供給されるもの、

9次元世界では当たり前なのに。


そもそも、私の体を、完璧に地球人を模して作ったのが間違いだ。

見た目だけ地球人にしておけば、バレっこないのに。

食欲など、私の任務には必要ない。

ましてや、睡眠欲や性欲、承認欲なんかいらない。


私は、この次元に一人取り残されてしまった。

寂しい。

辛い。

不安だ。

帰りたい。

そもそも、こんな感情、9次元世界では存在も定義もないのに。






他の人を頼りにする。

共助、公助、互助、私の頭に情報は入っているが、

意味がわからない。

「助けて」と意思表示すれば良いのか?

でも、誰に?どうやって?


考え事をしながら歩いていると、周囲が見えない。


ドン!人にぶつかり、転んでしまった。


「大丈夫ですか?」


偶然にも声を掛けてきたのは、知っている顔。

以前、業務で関わった顧客の、確か、、、、。


「サンピーの中川 健太郎!」


「あの時のおねえさん!

だから、恥ずかしいからピーって言わないで!」


この感情、何だ!?

知ってる顔に会っただけなのに、

この安心感は何だ!?


「助けてください。」


自分でも唐突に声が出た。

この再会が涙が出るほど嬉しい。

この感情は、何だ!?





つづく。





この作品には、関連したお話があります。



●「お城の舞踏会を無かったことに」(「パラレルワールドの不条理」シリーズ第6作)


https://kakuyomu.jp/works/16818093084740503379




●「由希は仲良し3人を理解できないが羨ましく思う」(「パラレルワールドの不条理」シリーズ第5作)


https://kakuyomu.jp/works/16818093084705841049



合わせてご覧いただけると幸いです。

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