第2話



『ご乗車ありがとうございました。次は終点、中央区東京駅です』



 場内アナウンスが耳に入り、下山未来しもやまみらいは資料を片付け始める。つい隣の席が空席なのをいいことに、荷物や資料を広げてしまっていた。


『まもなく、中央区東京駅に到着いたします。お忘れ物のないようご注意ください』


「あぁ……もうっ!」


 終点なのだからそこまで急ぐ必要がないのは分かっているけれど、気が急いてしまい、資料をうまくしまえない。半分くらいはそのままカバンの中に突っ込んだ。


『──お待たせいたしました。ドアが開きます。ご注意ください』


 網棚に置いていた荷物を下ろし、隣席に立てていたキャリーバックをつかみ、未来は小走りで下車した。


 そのまま案内板に従って進み、改札前の申請受付ブースへと向かう。

 降車した人はそこまで多くないらしく、受付の順番はわりとすぐに回ってきた。


「申請書類と本人確認ができるものの提示をお願いします」


 定形型の受付嬢に、言われた通りの書類を差し出す。


「滞在期間は7日間。取材目的ですね……」

 書かれてある内容を読み上げる彼女に、未来は肯定の相づちをうつ。


「……ありがとうございました。問題ございません。滞在中はこちらの許可証の携帯をお願いします。お帰りの際に回収いたしますので、なくさないようご注意ください」

「ありがとう」


 受付嬢から返された書類と許可証を受け取り、そのまま改札を出る。


 改札を出ると、時間帯もあるのだろうか、サラリーマンや学生たちが駅構内を忙しなく通り過ぎていく。


「迷子になりそ……」


 初めての土地で、眼前を行き来する人の多さに圧倒される。

 未来は端末を取り出し、位置情報を同期してマップを表示させる。

 この7日間の宿は、新宿方面に取っているため、まずはそちらへ向かわなければならない。

 重い荷物を持ち直し、未来は端末に表示された道順に従って歩き始めた。

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