これからも、生きる

@Noskey1128

第1話

三月十四日午前七時十分離れた地元の友人からとあるメッセージが届いた。

「アツシが亡くなった。今日の夕方家にきてくれ。」

それはすごく突然で、受け入れたくなくて何度も否定した。

「冗談はよせ、言っていい事と悪いことがあるだろう」

アツシは僕の小学1年生からの親友で、何度も一緒に遊んで、しょうもないことで喧嘩もして、部活も同じテニス部に入って、高校に行ってからは離れてしまったけどそれでも何かあった時には連絡を取り合うような、高校2年というまだ短い人生の中でも半分以上を共に過ごした奴だった。そんな親友を突然の悪い冗談で殺されてたまるかと、僕は何年か振りに心の底から怒りが込み上げてきた。その怒りの中にはおそらく信じたくない、冗談であってほしいという心の底にある思いも入っていたのかもしれない。そんなことを考えながらスマホの画面を見ていると、別の友人からも連絡が入った。

「なあ、アツシのこと聞いたか?」

テニス部の元部長で幼馴染からの連絡だった。僕の中でも信用できる友人の一人であった幼馴染からの連絡で、僕は冷静になり現実を受け止めることにした。その後二人には返信を入れておき、僕はベッドに倒れ込んだ。その瞬間今までに経験したことが無いくらいの悲しみが込み上げてきた。

「なんで...なんでアツシが......」

涙が溢れ出し、しばらく泣き止むことはできなかった。その日は翌日にある部活動でのボランティアに必要な資料の作成をしなければいけなかったが、午前中は全く動く気になれず午後から作業を始めたがそれでもなんとなく頭が動かなかった。そうしているうちに夕方になり、友人から17時頃に駅に着くと連絡がきた。僕も急いで準備を終え自転車に乗って駅へと向かった。駅に着くと、そこにはしばらく会っていなかった友人が何人か見えた。

「久しぶり。」

何人かの友人と挨拶を交わし、電車から降りてきた友人と合流しアツシの家へと向かった。再開した何人かの中には、卒業式で笑顔で写真を撮った同じクラスの人や、初恋をしたあの人までいて、約1年ぶりにあえて嬉しいはずなのにやはりそんな感情が湧いてくるはずもなく、声をかけることすらもできなかった。家に着き何人かに分かれて入ることになった。最後にこの家に来たのはいつだろうか。クラスが離れてからはお互い家で遊ぶ機会も減ってしまったためもう4年は来ていないだろう。アツシの親に案内され入った部屋にはどこか懐かしい匂いと煙の臭いが漂っていた。部屋の真ん中で静かに目を瞑っているアツシを見て僕は改めて親友が亡くなったことを突きつけられた。友達やアツシの家族がいて緊張していたからなのか、なぜか涙は出なかった。その日の夜、僕は寝る前にアツシのことを少し思い出した。「もっと話しておけばよかった」、「もっと遊びたかった」 出てくるのはどうにもならない後悔ばかりだった。次の日は部活でのボランティアがあったから朝早くから家を出た。その日はアツシのお通夜があったがそのボランティア活動でのリーダーを任されていたことや、他の部員に気を使わせたくなかったから部活を優先した。その一日は、友達の前では笑顔で接していたかもしれないが、内心少しつらいと感じていた。次の日以降の春休みもなんとなくパッとしない日が続いた。

 そうして春休みを終え学校が始まってからのある日、すごく鮮明な夢を見た。そこにはアツシの姿があった。

 「どうして、アツシは自殺なんかしたんだ。」

僕は質問した。

 「生きる理由を見失ってしまった、第一志望の高校に落ちて、目的を見失って、何をしても楽しくなくなって、楽になりたかったんだ。」

アツシは、気の抜けたような声で答えた。

  「そうか...アツシがそうしたいと思ったなら、僕はその判断を否定したりはしない。それと、最期に立ち会ってやれなかったこと、本当にごめん。アツシと出会えたおかげで、今の学校に行けたのに...アツシがいたから……勉強ももっと頑張れたのに......そんな恩人の最期に行ってやれなくて本当にごめん!」僕は号泣して謝った。

 するとアツシは優しく笑ってこう言った。

「来てくれなかったのは少し寂しかった。でも、自分がきっかけでそっちでの友達も増えて、部活でもリーダーを任されるくらいに成長したなら、すごく嬉しい。だから、これから何があっても絶対俺みたいな判断はしないで欲しい。いつでも見守っているから、絶対あきらめないで。最後の約束だ。」

そこで目が覚めた。僕は涙が止まらなかった。この日以降心が軽くなった気がした。 いつでもアツシが見守っている、そう考えてこれからも生きる。 









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