3

なんでだろう。

何を話しても、何も変わらないのに。

なんで、目の前の裕太を呼び止めてしまったのだろう。


「なんか、なつかしいな。」

「え?」

俯く私に裕太が懐かしそうに声かけた。

「いや、大学の頃さ、二人でこうしてファミレスとかで好きな漫画とかアニメとかについてだらだら話してたやん?もうそれがすごい前なんやなと思うとな。」

「そうだね。あの頃は何も考えないで、好きなものにまっしぐらで。楽しかったな・・・・。」

懐かしそうに呟く私に裕太はまた笑みを浮かべた。

「舞ちゃんさ、好きなものの話する時本当にキラキラした顔で話してたもんな。あの顔は見てるこっちもなんか嬉しかったわ。」

「そ、そうだったけ。なんか、恥ずかしい。」

「・・・・・大丈夫か?」

ふと話のトーンが低くなった裕太の顔を見ると、少しいつもと違う裕太の顔があった。

「懐かしいなと思って声かけたのはそうなんやけど、なんかあのままだと舞ちゃんが消えていきそうで、なんか怖かったんや。」

「裕太・・・・」

裕太はそう言うとまた、優しい笑みを浮かべて私を見つめる。

「でも、俺がそんな事言う資格ないわな。」

「裕太、私、分からないんだ。自分が今何のために生きているのか。」

「舞ちゃん・・・・・」

「幸せなはずなのにね。ないものを欲しがって。

今の幸せを大事にしたいと思えば思うほど、今私って何のために生きているのかって。なんか、疲れちゃった。」

そう言って、私は冷たくなったカフェオレを飲んだ。


こんな事、裕太に相談しても困らせてしまうだけ。

そう思った私は取り繕うように笑った。

「ごめんね、こんな取り留めのない事話しちゃって。こんなのただのワガママなのにね。裕太も頑張っているんだから、私も頑張らなくちゃね」

「ダメやで。」

「え?」

早口で話していた私の言葉を制し、裕太は真面目な顔で見つめていた。


「自分で自分の価値を低くしちゃダメや。舞ちゃんは充分頑張って生きているんやから。」


そう言って裕太は昔のように笑って見せた。

そういうところは昔の裕太と変わらないな。


だから私は、そんな裕太の事が好きだった。


「じゃ、俺こっちやから。」

裕太は駅の反対を指差して私に手を降った。

「ねえ、裕太。」

「ん?」

「・・・・また、会ってもいい?」

少し躊躇いながら訊いた私に、裕太は笑みを浮かべて言った。

「今度はサークル何人か読んで、家で飲もうや。」

「・・・・そう、だね。」


少し悲しそうに呟いた私の頭をポンと撫でて、裕太は去っていった。











































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