第19話

夏、朝の訪れは早い。


日射しに邪魔され目を覚ますと、まっ先にベタつく身体に不快感を覚えた。


エアコンを止めた部屋はジメジメと蒸し暑く、カーテンごしに射し込んでくる朝日はまだ朝方だというのに、顔を背けたくなるほどの眩さと熱を持っている。


網戸にした窓から入り込んでくるのも熱風と蝉の鳴き声だけで、爽やかな目覚めには程遠い。



窓辺に吊るした風鈴も、まったく風情を感じさせてくれなかった。




あたしはタオルケットを剥いで、枕元に置いてあるケータイを手に取った。


本来、起きようとしていた時間まで一時間近くあり、ぼんやりとした思考のままアラームを切る。


そのまま手にした携帯を無造作に放り、制服と下着を持って階段を下りた。


ベタつく身体のまま学校へ行く気にはなれず、余った時間でシャワーを浴びようと思ったからだ。



暑さのせいで食欲はなく、麦茶を一杯飲んでから家を出た。


いつもより長めにとった登校時間のせいで、通学路を歩く生徒は殆どいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る