第2話

『うわ、またいるし。』




学校から帰ると見知った男が部屋の中で寛いでいた。


正確にはベッドに寝転んで漫画を読んでいた。


自室に入ったあたしはカバンを置くより先に、我が物顔でベッドへ寝転ぶ男を見下ろし眉を顰める。



もちろん自分が男の部屋を訪れたわけではなく、あたしはちゃんと自分の部屋へ帰ってきた。


決して帰る家を間違ったわけじゃない。


男はチラッと顔を上げると、ページを捲りながら「いるよ」と右手を上げた。


窓から入り込んできた風が、そよそよとレースのカーテンを緩やかに揺らす。




『"いるよ"じゃないでしょ。』



「じゃあおかえり。」



『おかえりでもない。』



「お邪魔してます。」



『60点。』



「じゃあ何?」



『なんで勝手に寛いでんの?』




机にカバンを置きながら、寝転んでいる男を見下ろして言う。


男はベッドにうつ伏せになったまま、きょとんとした顔で「今さらでしょ。」とあたしを見つめた。

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