番外編
好きだって、何度も思った
第22話
顔と中身が合っていない。
離れた場所で借りてきた猫のよう小さくなっている実花を見ているとつくづく思う。告白されることには慣れているくせに、その先に関しては全くの初心者だ。紡がれた想いには『ごめん』と返せばいいが、イエスと頷いてしまえばその先が待っている。
友人、或いはクラスメイトを越えた先にある関係。いつも申し訳なさそうに頭を下げる実花はその先をまだ知らない。知らないのだ。
それもそうか、と、すっかり氷が溶けて薄くなってしまったアイスティーへ口づけながらこっそり息を吐く。実花は女にチヤホヤされる俺を“女たらし”だと言うが、俺から言わせれば実花も一緒だ。
くっきりと丸みを帯びた二重瞼に空を向いた睫毛。通った鼻筋は高く、柔らかな膨らみを描く頬は無垢な陶器のように白い。それでいて制服からすらりと伸びた手足が大人びた印象を与えるのか、少しだけ色素の薄い瞳には扇情的な色が混じって見えた。
小さい頃から『お人形さんみたいだね』と褒められてきた容姿は崩れることな年相応の成長をみせ、中学に上がった辺りからは異性からの告白が格段に増えた。
付き合ってほしいという申し出は断ってたようだが、早い時期から自分の容姿が武器になると気づいてしまった俺とは違い、どんな告白も無下にしない実花の優しさは異性の興味を惹くばかりだった。
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