第21話

こんなボロアパートに?


風を求めて顔を上げると、色褪せた壁には不似合いなエアコンが堂々と取り付けてある。


茶の間から吹いてくる風はシンプルな間取りも手伝ってか、日中の猛暑に熱せられた部屋をあっという間に冷やしていった。




「そんなめずらしい?」


「え?」


「エアコン」




ふと聞こえた声にハッと肩を上げれば、男は顔だけをこちらへ向けて「涼んでいけば?」と、あたしを見ていた。




「お礼にアイスコーヒーくらいは出すけど」


「…、麦茶がいい」


「麦茶?ないからアイスティーでいいね」




連日の猛暑にへばっていたあたしにとって、肌の体温を奪うような冷風は心地よく、エアコンの誘惑に負けるのも仕方ないと言えた。


小さく頷いたあたしは「…お邪魔します」恐る恐る部屋の中へ足を踏み入れる。途端、板張りの床がキシ…ッと鳴いたが、部屋の雰囲気は違っても造りだけは同じみたいだ。

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