第7話
そんな猫さんと出会ってもう一ヶ月になる。
バケツをひっくり返したような雨の日に、道端に倒れていた猫さんに傘を差し出したのがキッカケだった。
手首から血を流し、虚ろな目で水溜まりを眺めていた猫さん。何度声をかけても返事はない。
だからとっさに救急車を呼ぼうと携帯を掴んだのだが、でも猫さんはあたしの足首を掴むと、
『いらないから…』
わずかに顔を上げたのだ。
声は雨にかき消されそうなほど頼りなかった。
か細い声を聞いたあたしは、気づいたらノロノロと立ち上がる猫さんの背中を支えていた。
近くのアパートに住んでいるという猫さんを運び、ガーゼと包帯で簡単な手当てを済ませる。
その後、高熱を出した猫さんを看病するも、翌朝にはケロッとした顔で「誰?」と言われた。
透き通るような白い肌。
肩まである金糸。
見慣れない碧眼に圧倒されたのを覚えている。
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