第24話

出勤?スーツ?一体何のことを言っているのだろう。


聞きたいのに口を挟める雰囲気ではなく、浮かべた疑問符に一早く気づいた兄がフッと微笑む。


まるで"心配するな"とでも言っているようなやり取りを傍目に、男性が「言ってないのか?」と兄に問うが、兄は静かに微笑むだけでやはり言葉にはしなかった。


男性もこれ以上追及する気はないのか、コーヒーを飲みながら「これからどうするんだ?」と続ける。




「部屋もまだなんだろ?」


「うん。とりあえずは部屋の契約かな。すぐ住めるところがあるといいんだけど、もうちょっとしたら不動産屋回ってみるつもり」


「店の寮とか使わせてもらえるんじゃないのか?」


「それも考えたんだけどね。でも、妹も一緒だし」


「妹?あぁ…」




男性はちらりとあたしを一瞥した。


突然の"妹"というワードに口を挟んでいいのか分からず、眼鏡の奥に潜んだ瞳に緊張を走らせる。


訳も分からず値踏みされているような感覚に陥ったが、男性の目は興味を無くしたようにあっ気なくあたしから逸れた。

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