第3話
死へ誘うことは難しいことではなかった。幸いにも父は無職だ。朝から晩まで酒に溺れているような父を気にかけてくれる人間なんておらず、蓄積されたアルコールは人としての判断力を鈍らせる。
あたしは父の夕飯に睡眠薬を混ぜた。
家事の一切を引き受けていたあたしにとって、父の夕飯に睡眠薬を混ぜることは薬を手に入れるより容易い。
その日も父はテーブルにうな垂れ、浴びるように酒を飲んでいた。
テーブルにはいくつもの酒瓶が散乱しており、足元には空になったビール缶が無造作に転がっている。そんな慢性的な酒気が漂うリビングを、キッチンに立ったあたしは冷めた眼差しで見つめた。
「お父さん、出来たよ」
焼き上がった卵焼きをテーブルへ持っていく。ふっくらと巻かれた卵焼きに箸が付けられないことは分かっていたが、睡眠薬の効果を認めるまでは普段通りを装った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます