機動兵器に乗りたいって言ったのに、なぜか俺が機動兵器に!?
星野 願
第1話 機動兵器「俺」起動
――トラックの運転席。夜道は静かで、スマートフォンから流れる音楽だけが響いていた。
「ふぅ、ようやく一段落か……」
鳴海隼人はハンドルを握りながら、長い仕事の終わりが見えてきたことに少し安心感を覚えていた。
疲れがたまっていたが、それでも彼の性格上、無理に重く考えずにいつものように軽くやり過ごしていた。
「さっさと終わらせて、帰ったらビールでも飲むか……」
そう思いながら、前方に広がる暗い道を見つめていたが、そんな日常が突如として崩れ去る瞬間が訪れる。
――何かが、目の前に飛び出してきた。
「……うわっ!」
急ブレーキを踏むが、間に合わない。
トラックの前方に飛び出してきた「それ」との衝突が隼人の体に激しい衝撃を走らせ、その瞬間、彼の意識は闇に包まれた。
次に目を開けた時、隼人はまるで夢の中にいるかのような白い空間に立っていた。
「……なんだここは?」
目の前に広がるのは、どこまでも白く続く不思議な空間。
まるで現実感がなく、どこか浮遊感すら感じるが不安は驚くほど少なかった。
隼人は混乱しながらも、どこかで「これは夢かもしれない」と心の中で自分を納得させていた。
「おー、ヤットオキタネ!グッモーニン!」
突然響いた片言の声に隼人は反射的に顔を上げた。
そこに立っていたのはアロハシャツを着た奇妙な男で、白い髭にサングラス、どこか浮かれたような笑顔が彼を迎えていた。
「……ここはどこだ?」
隼人は困惑しつつも、その場の雰囲気に気楽な口調で問いかけた。
「ココ?ヘブン……じゃなくて、テンカイ!オレ、ゴッドサマ!」
男は片言の日本語とカタカナ英語を混ぜながらふざけた調子で言葉を続けた。
隼人は一瞬絶句したが、すぐに肩の力を抜いて笑みを浮かべた。
「……なんだよ、この神様ってのも随分と気楽な奴だな。俺が死んだにしても、まぁ……こんな感じなら悪くないかもな」
彼は常に物事を深刻に考えすぎないタイプだった。
何が起こっても、まずはその場の状況を受け入れる――それが彼の性格だった。
「キミ、トラック、クラッシュシタノ、オボエテル?」
「うん、まぁ覚えてるけど……ってことは、やっぱり俺、死んだってこと?」
「ノー!デモネ、キミモテンセイスルコトニナッタノ、チョットミステイク……ウップス!モトモトテンセイヨテイノヒト、サキニバイバイシチャッタケド、ツイデニキミモ!ナニカ、キボウアル?」
神は軽いノリで説明を続けた。
「転生か……」
隼人はしばらく考えたが、すぐに笑みを浮かべた。
「まぁ、ついでにって言葉が気になるし、神と名乗るにはあまりにも胡散臭いおっさんだが、新しい世界でやり直せるってんならそれも悪くないな。これも1つのチャンスってやつだな」
実際にはまだ少し混乱していたが、隼人は自分に言い聞かせるようにして、その状況を前向きに捉えることにした。「どうせなら楽しんでやるさ」と心の中で決めた。
「じゃあ、どうせ転生するならさ、俺、機動兵器とかに乗りたいんだけど……」
隼人は冗談交じりに言った。
「オー!『キドウヘイキニナリタイ』ネ!アメージング!キミ、カッコイイロボットニナレル!」
「……ん?ちょっと待て、乗りたいって言ったんだが……」
隼人は神の言葉に違和感を覚えたが、神は全く気にせず、
「ヨッシャ!テンセイジュンビ、オールレディー!」と宣言した。
その瞬間、隼人の体がふわりと浮き上がり、視界が急激に回転し始めた。
隼人は体が宙に浮く感覚に驚きながらも、心の中で一瞬の迷いがよぎった。
「え、待て待て!これって本当に大丈夫なのか?!」
だが、その疑問が頭を過ぎるのと同時に、意識は遠のいていき――
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起動シークエンスを開始します
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[システムチェック]
全システム自己診断中...
モジュールステータス確認中...
エラーチェック: 一部エラー検出
[エネルギー供給]
メインエネルギー起動中... 成功
エラー: バックアップエネルギー起動失敗
[センサーと通信]
センサーキャリブレーション中...
エラー: センサーキャリブレーション失敗
通信システムオンライン
GPS/レーダー起動中... 成功
エラー: GPS接続失敗
[武装システム]
武装システム安全確認中...
弾薬ステータス: 安定
ライフル:使用可能
エラー: ミサイルステータス故障
[モビリティシステム]
エンジン起動中...
エラー: 移動システム一部故障
[コントロールシステム]
操縦システムチェック中...
手動モード: 準備完了
エラー: 自動モード不安定
[最終確認]
全システム最終確認中...
エラー: 複数システムに問題あり
限定的起動: 可能
システム起動します。
………
……
…
次に目を開けた時、隼人は異世界の森の中に倒れ込んでいた。
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