第6話

もちろん気持ちだけの問題じゃない。


お墓のある場所なんて知る由もなく、数年振りに高校の同級生へ電話をかけまくった末に、なんとか一番仲が良かったという佐野君へ繋がることが出来たのだ。


佐野君は驚いたように息を殺したが、でも墓参りがしたいと伝えれば、快く夏海が眠る場所を教えてくれた。



結婚したことは言わなかった。


引け目を感じたからではなく、言う必要がないと思ったからだ。


夢か、幻か、あの夜が事実だったのかは未だに分からないけど、でも夏海ならあたしが結婚したことを知っている気がした。


なんとなく、そんな気がした。




「なに考えてるの?」




暖かな風に吹かれていると、そこへ水を汲みにいった圭吾がちょうどよく戻ってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る